東周列國志第一回 宣王、童謡を信じ杜伯を誅殺する (周宣王聞謠輕殺 杜大夫化厲鳴寃)

宣王の中興

  • 周は武王から代を重ね、厲王の暴政で国人に殺されるという未曾有の民変を招いたが、周公・召公が力を合わせて太子靖を立て、宣王として即位させた。宣王は方叔・召虎・尹吉甫・申伯・仲山甫ら賢臣を用いて文武成康の政を復興し、周室は一時中興した。
  • (詩:夷王・厲王の代の乱れた政を宣王が立て直したことを讃える)

千畝の敗戦と料民

  • 宣王三十九年、姜戎討伐に親征するも千畝で敗れ、軍を立て直すため太原で戸口を調べる「料民」を行った。太宰仲山甫は諫めたが聞き入れられなかった。
  • (詩:軍事にこだわり無理を重ねた宣王を批判する)

童謡「檿弧箕箙」

  • 太原からの帰途、鎬京の市中で子供たちが「月將升、日將沒、檿弧箕箙、幾亡周國」という謡を歌っているのを聞き、宣王は不安を覚える。歌を広めた赤衣の童子は行方知れずとなり、宣王は同様の歌を禁じるよう命じた。
  • 翌朝、群臣にこの謡の意味を問うと、召虎は弓矢の禍と説き、仲山甫は戎討伐が続けば亡国の恐れがあると諫め、太史伯陽父は熒惑星が化けた童子による天の戒めであり、後世に女主が国を乱す兆しだと占った。宣王は武庫の弓矢を焼き捨て、造売も禁じるよう命じた。

老宮人の異産と桑弓の女

  • 宮中で先王の代からの老宮人が四十年越しの懐妊の末に女児を産み、姜后はこれを不祥として清水河に捨てさせたと宣王に報告した。老宮人は、夏の桀王の代に現れた二龍の涎(龍漦)が周の宝庫に秘蔵され続け、先王の代に誤って零れた涎が黿となって宮中に消え、それを踏んだ自分が身籠ったのだと語った。
  • 太史伯陽父は占いにより、妖気はまだ消えていないと告げる。宣王は城内外に女嬰の捜索を命じ、あわせて桑弓・箕草の箭袋の売買も禁じた。下大夫左儒配下の司市官は、桑弓を売る夫婦のうち婦人だけを捕らえ、男は取り逃がしたが、婦人を「違禁」として処刑してしまう。
  • (詩:謡言を鵜呑みにして罪のない婦人を殺したことを非難する)

桑弓売りの男と清水河の女嬰

  • 逃げのびた男は妻の死を知り悲嘆するが、清水河のほとりで鳥に運ばれてきた包みの中から生きた女嬰を見つけ、貴い運命の子と考えて引き取り、褒城へ向かう。
  • (詩:捨てられた女嬰が生き延びた不思議を詠む)

宣王の夢と杜伯・左儒の死

  • 宣王四十三年、大祭の夜、宣王は妖女が太廟の七廟神主を東へ持ち去る夢を見て動揺する。太史伯陽父は、三年前の童謡と符合し、女禍の兆しがなお消えていないと告げる。
  • 宣王は、かつて妖女捜索を命じた上大夫杜伯が捜索を怠っていたことを咎め、激怒して斬罪に処そうとする。下大夫左儒は友の杜伯を必死に諫めて助命を乞うが、宣王は聞き入れず杜伯を処刑する。左儒は君に逆らえず友も救えなかったことを恥じ、自ら命を絶つ。
  • (詩:左儒の忠義を讃える)
  • 杜伯の子隰叔は晋に逃れ、後に晋の士師となり、子孫は士氏・范氏となった。

東郊の狩りと宣王の死

  • 宣王四十六年、東郊での狩りの帰路、宣王は杜伯・左儒の亡霊が弓矢を構えて現れる幻を見て気を失う。以後心痛が癒えず、まもなく崩御する。
  • (詩:無実の者を殺した報いが必ず及ぶことを詠む)