樵史通俗演義第五回 衆児、攻撃の効を著し、一手に枚卜の権を握る (眾兒著攻擊之效 一手握枚卜之權)
傅櫆の弾劾と汪文言の獄
- 傅櫆は阮大鋮との謀議どおり、汪文言を通じて左光斗・魏大中を「比匪」(不正な結託)として弾劾し、汪文言を「亡命の奸」として誅すべきと上奏する。天啓帝は汪文言を錦衣衛に拿問させるが、左光斗・魏大中への処分は保留のまま様子を見る。
左光斗・魏大中の弁明
- 左光斗は、傅櫆がすでに比匪の前例(鄒維璉・程国祥・魏大中の件)を作っており、自分は汪文言と無関係だと上奏。魏大中も同様に潔白を主張。給事中の甄淑・袁化中もこの二人を弁護するが、いずれも留中(握りつぶし)とされる。
- 閣老葉向高も辞職を願い出て、傅櫆・許顕純による強引な拿問を暗に批判する上奏を行う。天啓帝は葉向高を慰留するが、これは葉向高がかつて汪文言を中書に取り立てたことが仇となった経緯であった。
孫承宗の辺防策と魏忠賢の警戒
- 前年、辺境を巡視した閣老孫承宗が寧遠・前屯衛など関外諸城の屯田・兵備の充実ぶりを詳細に報告する優れた上奏を行い、葉向高も「昭代第一の辺本」と激賞する。
- しかし魏忠賢はこれを快く思わず、崔呈秀・阮大鋮・楊維垣らと共に、孫承宗が塞外で功名を立てれば自分たちの権勢の陰りになると警戒し、上奏を握りつぶして孫承宗を辺境に留め置く策を取る。
魏大中の任官問題と傅櫆の追撃
- 魏大中は吏科都給事中として一旦任官を命じられるが、謝恩の直後に「参劾未決のまま任官するのはおかしい」と内旨で覆される。傅櫆はさらに上奏し、汪文言の一件を口実に葉向高をも暗に牽制する。
- 葉向高は事態を憂い、再度辞職を願い出るが握りつぶされる。この間、田爾耕は錦衣衛での功により昇進し、許顕純は北鎮撫司の実権を握り、魏忠賢の威勢はますます強大になる。傅櫆・倪文煥・張訥らはそれぞれ趙南星・左光斗・魏大中・鄒維璉を攻撃する上奏を次々と提出し、朝廷は紛糾を極める。
阮大鋮と魏広微の密約
- 江南桐城出身の才子で陰険な性格の阮大鋮は、魏忠賢に近づき昇進の内約を得て喜び、自邸で妻妾と共に自作の戯曲『春灯謎』の一節を楽しんでいた最中、閣臣入りを望む魏広微の訪問を受ける。
- 魏広微は、同郷の崔呈秀・楊維垣らへの忌避を避けるため阮大鋮を頼り、魏忠賢の弟分として取り立てられ入閣したい旨を依頼し、黄金二十両を贈る。
- 阮大鋮は翌日魏忠賢に取り次ぎ、魏忠賢は魏広微を弟分として認め、入閣人事を朱国禎・朱延禧・顧秉謙らと合わせて自らの意のままに差配することを明言する。
入閣人事の決定
- 数日後、顧秉謙が武英殿大学士、魏広微・朱国禎・朱延禧が東閣大学士として入閣する内旨が下る。京師の人々は、顧・魏の二人が魏忠賢の腹心であることを誰もが知っていた。
評語
- 末尾の詩は、閣臣人事さえも私門の思惑で決まる朝廷の腐敗を、星の光が失われることに喩えて嘆いている。