樵史通俗演義第四回 白蓮賊平定の功を己に帰し、中書官の敗が正士に累す (白蓮賊平歸己功 中書官敗累眾正)

山東の飢饉と邪教の広がり

  • 毛文龍の悪行に加え山東は連年の干魃で飢饉となり、人が人を食うほどの惨状となる。袞州府一帯は貧しく、鄆城・陽谷などかつて梁山泊の盗賊が跋扈した土地で、邪教が根付きやすい風土だった。

丁寡婦と白蓮教(無礙教)

  • 鄆城県に住む丁寡婦という素性不明の女が、教門の仲間を集め始める。牛肉・豚肉を口にしないなど戒律めいた作法を持つ。
  • 隣人の雷老児と親しくなり、教団の実態を語る。李卓吾なる人物が湖広麻城で始めたと称する「白蓮教」(無礙教)は、財も衣も男女関係も共有するという触れ込みで、巨野県の秀才・徐鴻儒が教主として勢力を広げていた。
  • ある夜、雷老児は丁寡婦が紙人形や柳の人形に呪文をかけて生身の人間のように動かす妖術を目撃し、その怪しさに驚きつつも教団に加わっていく。信徒は瞬く間に増える。

泰山進香を名目とした結集

  • 丁寡婦は香頭十人を選び、賄賂で鄆城知県から進香の許可証(旗に押印)を得て、二千人規模の進香団を組織し勢力を拡大。徐鴻儒配下の兵力は十二万に達する。

蜂起と各地への進撃

  • 徐鴻儒は五月五日を期して挙兵。知県余子翼の抵抗で鄆城城攻略に失敗し梁家楼に拠るが、ここも余子翼に破られる。
  • 丁寡婦の献策で各州県の頭目を袞州府に集結させ、劉子孝隊(鄒県・滕県から徐州へ)、斉本恭隊(袞州攻撃)、徐鴻儒・丁寡婦本隊(東阿・汶上から嶧県・曲阜・郯城方面)の三方面に分けて進撃する。

各方面の戦況

  • 劉子孝隊は鄒県・滕県を荒らして徐州に迫るが、知州汪心淵が兵備道の楊某に代わって指揮を執り堅守。反乱軍は黄河に追い落とされ、劉子孝も戦死。
  • 斉本恭隊は袞州総兵楊肇基の反撃と洪水により壊滅。
  • 嶧県では丁寡婦の妖術が官軍を苦しめたが、動物の血を用いた破法により妖術が破れ、丁寡婦は敗走し行方をくらます。徐鴻儒は鄒県に籠城するが糧が尽き、十月に投降。山東はようやく平定される。

論功行賞と朝廷の腐敗

  • 巡撫趙彦・総兵楊肇基が昇進する一方、実際の功労以上に魏忠賢に功が帰され、その甥が錦衣衛指揮に任じられる。左光斗・魏大中らは不満を訴えようとするが、崔呈秀・阮大鋮の取り計らいで趙彦が兵部尚書に昇進する形で収まる。

東林派への謀略の始動

  • 魏忠賢は自分に従わない左光斗・魏大中を恨み、崔呈秀・傅櫆・阮大鋮・楊維垣・倪文煥らと私邸で謀議する。
  • 阮大鋮は、葉向高が中書に取り立てた汪文言(もと徽州の門子で、左光斗・魏大中と交友がある)を狙い撃ちにする策を提案。「汪文言と結んだ」という名目で左光斗・魏大中、さらには葉向高までも一挙に陥れられると献策し、傅櫆が上奏を担当することで合意する。