樵史通俗演義第三回 権奸、朝士の心を籠絡し、島帥に忠言の罪を着す (權奸收拾朝士心 島帥羅織忠言罪)

客氏と張皇后の確執

  • 魏忠賢と客氏は宮中の情報を共有し密着を深める。客氏は天啓帝が張皇后と親しくするのを妬み、魏忠賢と謀って皇后を陥れようとする。
  • 魏忠賢は奸人に命じ、張皇后の出自を貶める妖言を流させるが、天啓帝は取り合わなかった。刑科給事中の毛士龍が首謀者を捕らえ処断したため、魏忠賢と客氏はひとまず手出しできず、後日改めて毛士龍を陥れようと画策する。

忠賢による人心収攬と正人への圧迫

  • 御史周宗建は大臣の節義と内臣(魏忠賢)の専横を批判する上奏を行うが握りつぶされる。状元の文震孟、庶吉士の鄭鄤も上奏の握りつぶし(留中)の弊害を訴えるが、天啓帝を促されて逆に降格・左遷される。
  • 魏忠賢は自分に従う者かどうかで正人君子も登用する。趙南星を吏部尚書、趙彦を兵部尚書に、その他多くの正人が官職に就く一方、葉向高・孫承宗らが要職を占め、この時点では魏忠賢もまだ露骨な粛清には至らない。

崔呈秀の贈賄と閣臣の追従

  • 御史崔呈秀は塩政の巡視で不正蓄財が発覚し弾劾されかけるが、魏忠賢へ二万両を贈って揉み消させる。都御史高攀龍の弾劾も握りつぶされる。
  • 閣臣魏広微は魏忠賢を「祖爺」と呼び子や孫を差し出すほど媚び、以後この呼称が広まる。傅櫆・阮大鋮・倪文煥・楊維垣らも次々と魏忠賢の養子となり、客氏を養母とする者まで現れ、京師の笑い草となる。

特務機関の強化

  • 崔呈秀・傅櫆・阮大鋮の献策により、鎮撫司に夾・搠・棍・杠・敲の五種の過酷な刑罰を設け、校尉による密告(打単児)と過酷な枷刑を制度化する。寛大に取り扱った掌司劉僑は罷免される。
  • 崔呈秀・阮大鋮の推薦で許顕純が刑官、田爾耕が指揮官となり、いずれも魏忠賢の腹心。魏忠賢は宮中に内営を設け私兵を養い、辺将にも影響力を及ぼす。

毛文龍の専横と王一寧の死

  • 毛文龍は巨額の賄賂を魏忠賢に贈り続け、上奏はすべて通り、功績は誇張されて認められる。尚書董漢儒の批判も握りつぶされる。
  • 毛文龍は自ら文官の巡方官のように部下や朝鮮の君臣、経略・巡撫までを評価する上奏を行い、朝臣は驚愕。御史江日采の弾劾も同様に握りつぶされる。
  • 毛文龍の下で贊画を務めた王一寧は、毛文龍の不正な戦功報告や密貿易を諫めるが逆恨みされ、謀反の疑いをかけられて京師に送られ、許顕純の手で死罪とされ処刑される。
  • 毛文龍の実弟の毛雲龍は兄の虚偽の報告を諫めるが、逆に軍法違反として処刑される。

評語

  • 詩は、遼東防衛の功労者であった王一寧・陳良策らの忠義が、毛文龍の私欲と魏忠賢の専権によって踏みにじられた無念を悼み、毛雲龍の死を「忠でも孝でもない兄の犠牲」と嘆いている。