民國演義第一二一回 月色昏黄にして秀山命を戕われ、牌声歴碌として撫萬運籌す (月色昏黃秀山戕命 牌聲歷碌撫萬運籌)
李純の鬱屈
李純は南北和議が実らぬことに加え、財政庁長人事への江蘇人の猛反発(果ては納税拒否の声まで)に深く傷つき、周囲に厭世的な愚痴をこぼすようになっていた。李純は元は漁師の出で、清廉を旨とし江南の民に尽くしてきた自負があっただけに、「善政を尽くしたのに恨まれるとは」という悔しさから、投げやりな発言を漏らしていた。側近や姨太たちも大帥の不興を恐れ、屋敷は重苦しい空気に包まれていた。
真相は別にあった
語り手は、世に伝わる「自刃」の噂はいずれも憶測に過ぎず、真の死因は前回末尾で示唆した「妻妾の不義、幇辦(副官格)斉燮元も無関係ではない」という一線にあると明かす。
麻雀で気を晴らす
李純の厭世的な様子を案じた側近たちが、腹心の斉燮元に取り成しを頼む。斉燮元は快諾し、軍餉の話などで座を和ませつつ、李純・参謀長何恩溥・鎮守使朱熙とともに麻雀の卓を囲ませた。皆が李純に花を持たせるように打ち、李純は上機嫌になって勝ちを重ねた。食後も打ち続け、途中で李純の輸が込むと、秘書の張某を呼んで代打ちさせ、自分は席を外した。
現場に踏み込む
用足しに向かった李純は、第三夫人・秋月の部屋の前を通りかかった際、中から男女の笑い声を聞き不審を抱く。裏口から忍び込んだところ、見張り役の女中「李媽」につまずいて転倒。物音に驚いた秋月と密会相手の韓副官(李純が重用していた腹心の一人)が逃げようとする。李純は秋月を平手打ちし、逃げる韓副官を追い詰めたところで一発の銃声が響き、李純は絶命した。韓副官と秋月は、事の露見を恐れて口封じのため李媽をも射殺し、逃走の算段を始める。
斉燮元の隠蔽工作
物音を聞きつけた斉燮元配下の馬弁が異変を報告。斉燮元は自ら現場に踏み込み、韓副官と秋月を見つけて一喝するが、すぐに態度を変え「見逃してやるから、これからは自分の指示通りに動け」と二人に口裏合わせを命じる。凶器の拳銃を回収し、馬弁にも指示を与え、何食わぬ顔で麻雀の席へ戻る。やがて「大帥が自殺した」との騒ぎが屋敷中に広がると、斉燮元は真っ先に駆けつけて悲嘆の様子を見せ、正室夫人から渡された乱雑な走り書きを「これが遺言だ」として読み上げる体で、国事への憂いと自らへの督軍代理委任、遺産の分配方針(半分を南開大学基金と直隷の被災者救済に充てる、との内容)を勝手に発表した。折しも斉燮元配下の武装兵が屋敷の内外を固め、他の鎮守使・師団長たちも駆けつけた。
第三夫人の作り話
集まった人々は斉燮元と軍幹部の言葉を信じ、疑う者は少なかった。第三夫人・秋月が涙ながらに、李純が突然涙を流し、字を書いてほしいと自分に頼んだ(自分は文字が読めないため誰にも見せられぬまま)という作り話を語り、周囲は納得した様子でその場は収まった。
評語
李純は他の軍閥に比べれば頭も清廉さも優っていたはずだが、非業の死を遂げたうえ死後まで誣いられた。これは心ある者には長嘆息のもととなる。ただ、佳兵は不祥、争いを続ける限り良い結末は望めず、民国以来の軍閥に善終した者はいない。国を害し民を殃うより、風流の果てに死んだ方がまだましだったとも言えよう。