民國演義第一一二回 領事官、凶を袒い艦隊を調し、特別区、帰附して呈文を進む (領事官袒凶調艦隊 特別區歸附進呈文)

福州事件

各省で続く日貨排斥運動の中、福州でも学生が商店の日貨を調査していた。日本商人らはこれに憤り、通行中の学生らに発砲、警官一人を射殺し通行人にも死傷者が出る。警察は加害者三名(福田原蔵・興津良郎・山本小四郎)を拘束するが、駐福州日本領事は加害者を庇い、逆に本国へ軍艦派遣を要請。日本政府はただちに軍艦を派遣する一方で、現地調査団も送る。中国側は撤艦・懲凶・賠償・道歉の四項目を要求するが、日本側は言を左右にする。

学生運動の広がりと当局の対応

福州事件を機に北京はじめ各地の学生が同盟休校・街頭演説を展開し排日を訴える。山東でも学生連合会が抗議を強め当局と衝突するが、教育会の仲介でようやく沈静化する。福州側は発行していた愛国刊行物を当局に発禁とされ、学生は一斉に休校する。

日本の弁明と撤艦声明

日本は福州事件について、自国民保護のためにやむなく艦隊を派遣したとする一方的な声明を東京・北京・福州で発表し、情勢が落ち着いたことを理由に撤艦するとした。中国側の抗議に対し日本公使は「排日を取り締まらぬ地方官吏こそ処分すべき」と逆に要求する始末で、両者は平行線のまま年を越す。

山東権益継承の通告

年明け、対独講和条約の発効に伴い、日本公使は山東でのドイツ権益を日本が完全に継承したと通告し、直接交渉を求める文書を送ってくる。中国側は「交還」を装いつつ実質は領有継続にすぎないと見て応じず、外交総長陸徴祥が帰国するまで回答を保留する。広東軍政府も北京政府に対し、直接交渉に応じぬよう電報で強く求める。

中東鉄路と辺境防衛

ロシア内乱の波及を警戒し、政府は中東鉄路の主権が中国にあることを協約各国に正式表明。あわせて呼倫貝爾(フルンボイル)の総管・協領らが特別区域制度の廃止と中央帰属を願い出て、徐世昌はこれを認める命令を発し、副都統・鎮守使らを任命、呼倫・臚濱・室韋の三県を新設する。

シベリア出兵をめぐる日米の対応

ロシアでは新政権(勞農政府)が優勢となり旧政権は瓦解、モスクワを本拠とする。米国はシベリア駐兵を撤収するが、日本は逆に増兵する。中国は日中軍事協定により行動を制約されており、日本が「満州・朝鮮の危険」を理由に撤兵を渋ることに対し、中国外交部は満州を朝鮮と同列に扱う表現に強く抗議するが、日本側は誤解・誤訳によるものと開き直る。 (詩:列強の野心と強弁ぶりを批判する趣旨)

評語

日本人が中国人学生を殺傷しながら軍艦派遣で威圧するという理不尽がまかり通ったのは、弱国外交の実情をよく示している。だがロシアが内乱で外蒙古・呼倫貝爾への支配力を失ったように、強大に見える国も永遠には続かない。日中は本来同文同種、同じ東アジアにありながら、なぜ隣誼を思わず難題を仕掛けるのかという慨嘆で結ばれる。