民國演義第二回 黎都督、返書して使者を拒み、呉軍統、刺されて落命す (黎都督復函拒使 吳軍統被刺喪元)
袁世凱、漢口に入る
- 袁世凱は漢口の本営で負傷兵を慰問し、各国領事の来訪を受ける。焼き討ち・略奪を批判されたことを機に馮国璋を呼び、革命軍を侮らず和平交渉に転じるよう指示する。
- 馮国璋は反発しつつも従う。折しも清廷から、慶親王・徐世昌らが辞職し袁世凱を内閣総理大臣に任命する上諭が届く。袁は特権が集中する現状に不満を漏らしつつ拝命の姿勢を見せる。
黎元洪への和平打診と拒絶
- 袁世凱は総理辞退・国会開設・憲法改正・大赦などを上奏する一方、上海・江蘇・浙江の独立の報も届く。
- 部下の劉承恩を通じて黎元洪に和平の書簡を送るが返事がない。清廷は罪己詔・憲法信条十九条を発布し袁の入京・組閣を促す。
- 袁は北上の途中、劉承恩に書簡を持たせ再度黎元洪へ送るが(内容:朝廷の譲歩を説き、和平の労を漢族全体の利益と位置づける)、なおも返答がない。
- 広西・安徽・広東・福建も次々独立し、清朝の統治は崩壊寸前となる。多くの督撫が逃亡・投降・独立側に転じる中、袁は蔡廷乾を加えた使者を再度武昌に派遣するが、黎元洪から届いた返書は厳しい拒絶の内容だった(清朝への忠誠を装う袁世凱を痛烈に批判し、漢族の大義に立って挙兵するよう促す長文)。
段祺瑞の来訪と呉禄貞暗殺の報
- 和議が不成立と知った袁世凱が北上準備をしていると、段祺瑞が挨拶に訪れる。両者は前線での殺戮に対する非難、資政院の処分要求などについて話し合う。
- 話題は革命派の実力者・呉禄貞に及ぶ。呉禄貞は石家荘で清軍の軍需輸送を阻止するなど活発に動いていたが、何者かに暗殺され首級も行方不明になったとの報告がなされる。
- 袁は素っ気なく受け流し、段祺瑞に協力を求めて北上する。
呉禄貞の経歴と最期(補足)
- 呉禄貞(字・綬卿、湖北雲夢出身)の経歴(日本留学、革命運動への関与、延吉辺務での功績、第六鎮統制への昇進)を紹介する。
- 石家荘・山西で挙兵し北京進撃を図るが、清廷の察知や部下・周符麟の裏切りにより暗殺される。暗殺の黒幕については「清の良弼が金で周を買収した」「袁世凱が先を越されるのを恐れて指示した」などの説があり、『民国春秋』は袁世凱による暗殺と断定しているが、著者は断定を避けるとする(詩:呉軍統を弔う一首)。
- 呉禄貞の死により袁世凱は北上を再開し、北京の官吏たちは安堵する。
評語
- 馮国璋・段祺瑞を早い段階で登場させたのは、両者が袁世凱の腹心であり、彼らなしには袁の権勢が成立しなかったためと説明する。
- 黎元洪との和議は袁にとって本気ではなく一時のはぐらかしに過ぎなかったが、黎の返書は袁の本心を見抜いていたと評す。
- 呉禄貞暗殺の黒幕については確証はないが『民国春秋』の記述を紹介するにとどめ、もし呉の計画が成功していれば清帝退位も北京陥落ももっと早く、民国の展開も違っていたはずだと示唆し、前著『清史演義』で描き切れなかった呉禄貞の顛末を補うのがこの回の狙いだと結ぶ。