民國演義第一回 大綱を掲げて全書始まり、巨変に乗じ故老再び来たる (揭大綱全書開始 乘巨變故老重來)

民国と帝国のちがい

  • 「民国」は「帝国」と対をなす語であると説明する。歴代皇帝支配の由来と、国の治乱が皇帝一人の資質に左右される構造を述べる。
  • 清末に至り「民主に改めるべきだ」という議論が広がったが、総統・政府が民選・民組織であるべき理念は実際には机上の空論に終わっていると評す。

辛亥革命当時の熱狂

  • 語り手(筆者)自身が上海に滞在し、各界が革命軍勝利に沸き立った様子、女性たちまで従軍・募金運動に加わった熱狂を回想する。
  • 熱狂の裏で募金の着服なども疑われたと皮肉りつつ、孫中山・黎元洪(黎黄陂)・袁世凱(袁項城)の三人が清朝滅亡の局面で立ち上がったと述べる。

民国初期の混乱

  • 民国元・二年、政党乱立と議会の混乱(議員の乱闘騒ぎ)を批判する。
  • 袁世凱が議会を見限り兵力で議員を追放・国会を解散、実権を握って帝政(洪憲)を企てるが、西南の独立や側近の離反など世論の反発で失敗し憤死したと総括する。
  • 副総統黎元洪が後を継ぐが統率力に欠け、張勲による復辟事件が起こるも段祺瑞が鎮圧する。
  • 馮国璋・段祺瑞の対立(主戦・主和)、徐世昌の総統就任、しかし安福系(段祺瑞派)に実権を握られる構図、南方も滇系・桂系・粤系に分裂し内戦状態が続いていることを嘆く。
  • 民国建国から十年、混乱の実情を書き残す動機を語り、以上を全体の序章(楔子)とする。

武昌蜂起と各省の独立

  • 清宣統三年八月十九日、武昌で軍が蜂起し、総督瑞澂・統制張彪が逃亡する。
  • 革命軍が黎元洪を都督に推戴して独立を宣言、漢陽を占領する。清廷は蔭昌・薩鎮冰・程允和らを派遣する一方、袁世凱を湖広総督に起用し全軍の指揮権を与える。
  • 袁世凱は摂政王載灃への遺恨から病を理由に出兵を固辞する。蔭昌は信陽に留まり進軍を渋る。
  • 湖南・陝西・山西・江西・雲南・貴州が相次いで独立を宣言し、清廷は動揺する。

袁世凱の起用と出兵

  • 慶親王奕劻・徐世昌が改めて袁世凱を欽差大臣に推挙し、馮国璋・段祺瑞の両軍も彼の指揮下に置かれる。
  • 袁世凱はなおも固辞するが、蔭昌自ら信陽に赴いて説得し、ついに出兵を承諾する。
  • 清軍将兵は袁の督戦を喜び士気を上げ、馮国璋の軍が漢口に突入、薩鎮冰の艦砲支援も得て民軍を撃退し、漢口市街を占領・略奪する。
  • 袁世凱到着の報を受け、馮国璋は略奪をやめさせ駅に出迎える(詩:南下して漢口に至った袁大臣の威容を詠む一首)。

評語

  • 前半は全書の序章であり、著者自身の憂憤を託した部分と位置づける。
  • 後半から袁世凱を物語の主軸に据える理由として、革命を始めたのは孫文・黎元洪だが、それを成就させたのは実質的に袁世凱であり、民国の成立・その後の混乱いずれも彼の作用によるところが大きいと説明する。
  • 「成るも蕭何、敗るるも蕭何」と評し、以後袁世凱への呼称が場面により異なるのは著者の抑揚・皮肉が込められているためだと断る。