五代史演義第四十三回 叛巣を覆すは符氏の女の智、火窟に投じ漢軍を拒みし悔い (覆叛巢智全符氏女 投火窟悔拒漢家軍)

河中落城

  • 包囲一年余りで兵糧が尽きた李守貞は決死隊を送って包囲網の突破を試みるが、郭威配下の吳虔裕らに撃退される。以後も突囲に失敗した将兵が次々投降し、郭威は投降者を厚遇して城内の切り崩しを進めた。

趙思綰の末路

  • 長安の趙思綰は郭従義・王峻の包囲下で兵糧が尽き、人肉を食らうまでに追い詰められる。かつて恩を受けた李肅とその妻・張氏の説得を受け入れて朝廷に降伏を上表し、赦免と任地の内示を得るが、出立を渋って引き延ばしたため、郭従義・王峻は謀って思綰を捕らえ、一族もろとも処刑した。城内の人口は十余万から一万ほどに激減していたという。

李守貞の最期と符氏の逸話

  • 河中の外郭が落ちると、守貞は内城に籠り、自邸に火を放って一家で焼死を図った。守貞と妻子の多くは焼死したが、子・崇訓の妻である符氏は難を逃れ、堂上に毅然と座して郭威に立ち向かう気迫を見せた。郭威は彼女が旧知の魏国公・符彦卿の娘と知り、丁重に扱って崇訓の亡骸を弔わせ、実家へ送り届けた。
  • 守貞がかつて術者に「符氏は将来天下の母となる」と告げられたことに慢心し、反乱を決意した経緯が語られる。符氏はのちに再嫁して国母となるとの伏線が示される。

戦後処理と論功行賞

  • 郭威は守貞の書簡を検分するが、王溥の進言で内通者を暴くための証拠として使わず焼却し、混乱の再燃を防いだ。守貞一味は都で処刑され、漢主承祐は諸将に恩賞を与える。郭威は謙譲して自らへの過分な賞を辞退し続け、朝廷の評価を高めた。

鳳翔陥落

  • 趙暉が包囲を続ける鳳翔では、王景崇が幕客・周璨の降伏の勧めを退け、決死の奇襲策を試みようとするが、実行直前に自邸から火が出て一家が焼死してしまい、その混乱の中で部下たちが降伏、鳳翔も陥落した。これにより三叛はすべて平定される。

李崧の冤罪

  • 三叛平定の混乱に乗じて、宰相・蘇逢吉が私怨から太子太傅・李崧を陥れる。かつて自邸を逢吉に奪われた李崧は、弟・嶼の従僕の讒言を利用され、謀反の疑いをかけられて一族もろとも処刑された。都の人々は李崧の冤罪を悼んだ。

評語

  • 長安籠城の李肅妻・張氏と、河中の崇訓妻・符氏という二人の女性の胆識を称え、特に張氏は夫を説いて長安の投降を導いた功が大きいと評す。符氏は夫の死後も再嫁を望み、貞節の礼にはやや外れるが、のちに国母となる運命を予感させると述べる。
  • 三叛の滅亡は自業自得だが、李崧の族滅は冤罪であり、蘇逢吉が処断した点には問題があるとしつつも、晋を滅ぼし遼に降った者たちと比べれば李崧の罪はやはり免れがたく、世間の同情は一時の偏見にすぎないとも評する。