魏鄭公諫錄或る者が公の親戚偏愛を奏する(或奏公阿黨親戚)
- ある者が魏徴が親戚をひいきしていると訴えたため、太宗は御史大夫温彦博に調査させたところ、訴えは根拠のない誤りだと判明した。
- 温彦博は、魏徴は人臣たる者、形跡(人に疑われる振る舞い)を避けねばならず、たとえ私心がなくとも疑われる行動を取ったこと自体は責められるべきだと奏上し、太宗はこの趣旨を彦博を通じて魏徴に伝えさせ、これまでの数百に及ぶ諫言の功績を損なわぬよう、今後は形跡を避けるようにと諭した。
- 数日後、太宗が外で何か問題を耳にしたかと尋ねると、魏徴は正色して、先日彦博を通じて「形跡を避けよ」と勅を伝えられたことは大いに不当であると答え、君臣は道義において一体であるべきで、公道を守らず形跡のみにこだわるようなことがまかり通れば、国の興亡すら危ういと諫めた。
- 太宗は驚いて表情を改め、先日の発言はすでに後悔していると述べ、魏徴に隠し立てせず直言し続けるよう求めた。魏徴は再拝して、身を国に捧げ正道を貫く覚悟であり、陛下には自分を「忠臣」ではなく「良臣」にしてほしいと願った。
- 太宗が忠臣と良臣の違いを問うと、魏徴は、良臣とは稷・契・皋陶のような、君に美名をもたらし子孫まで福禄が続く臣であり、忠臣とは龍逢・比干のような、自身は誅殺され君は悪名を残し国も家も共に滅びる臣であると答え、両者は大きく異なると論じた。
- 太宗はこの言葉を違えぬよう求め、社稷のための計を忘れないと述べて、魏徴に絹百匹を賜った。