魏鄭公諫錄中男を選んで従軍させることを諫める(諫簡點中男入軍)

  • 徴兵の使者が各地に出され、右僕射封徳彛らは「中男」(成年に達しない男子)のうち体格の大きい者も徴兵すべきだと主張した。勅は三、四度出されたが、魏徴はそのたびに署名を拒んだ。封徳彛が重ねて「中男の中にも壮健な者が多い」と奏上すると太宗は怒り、体格の大きい中男は取ってよいとする勅を出したが、魏徴は依然として署名しなかった。
  • 太宗が魏徴を呼び、怒りの色を見せて「体格が大きいのに徴兵しないのはおかしい」と詰問すると、魏徴は「沢を干して魚を捕れば来年は魚がなく、林を焼いて獣を狩れば来年は獣がいなくなる」と譬え、中男まで徴兵し尽くせば租賦や雑徭の担い手がいなくなると説いた。さらに、近年国家の衛士が戦に堪えないのは数が少ないためではなく、待遇が悪く士気が上がらないためであり、無理に人数を集めても役に立たないと述べた。
  • 続けて魏徴は、太宗が常々「誠信をもって民に接する」と言いながら、即位以来の主要な事柄が既に三、四度も食い違っており、信を失っていると指摘した。太宗が「不信とは何のことか」と問うと、魏徴は即位の詔で租税や官物の未納を免除すると言いながら、後に総納を命じた例や、関中・関外の免除を約束しながら実際には既納分の追徴を命じた例を挙げ、これでは民の信頼を得られないと諫めた。
  • 太宗は初め魏徴が意固地になっていると思っていたが、指摘を受けて自らの不明を認め、中男の徴兵を取りやめて金の甕一口を魏徴に下賜した。