繹史考工記(考工記)

六職と百工の位置づけ

  • (周礼「考工記」より)国に六職(王公・士大夫・百工・商旅・農夫・婦功)があり、百工はそのうち材質を見極めて民の器物を作る職とする。粤(越)に鎛が無く、燕に函が無いなど、地域ごとの得意技術の違いを述べ、「天の時・地の気・材の美・工の巧」の四条件が揃って良い器物ができるとする(橘が淮を越えると枳になる等の地気の例)。
  • 攻木・攻金・攻皮・設色・刮摩・摶埴の六種、計三十の工種(輪人・輿人・弓人・鳧氏・築氏・冶氏・函人・鮑人・玉人・陶人など)を列挙し、車を作る職が特に多くの技術を集約するとする。

車の規格(輪人・輿人・輈人)

  • 車の各部位の寸法基準(軫・戈柲・殳・車戟・酋矛の高さによる六等級)、輪の製法(轂・輻・牙の材の選び方、陰陽の木理を見分ける法)、蓋(車の傘)の寸法規定を詳述する。
  • 輿(車体)の寸法比(車の広さ・高さ・轅の長さの均衡)、輈(ながえ)の材の選定と曲げ方、輈の形状が天・地・日月・星・軍旗の象徴と対応するという解釈を記す。

金属加工(攻金の工)

  • 鍾鼎・斧斤・戈戟・大刃・削・鑑燧など用途ごとの銅と錫の配合比率(六斉)を示す。
  • 剣(桃氏)の身の長さと重さによる上制・中制・下制の別(上士・中士・下士が佩用)、鍾(鳧氏)の各部位の名称と寸法比、量器(鬴・豆・升)の規格とその銘文、甲(函人)・革(鮑人)の製法基準を記す。

染色・織物・玉器の規定

  • 画繢(彩色)の五色の方位配当(東青・南赤・西白・北黒・中央黄)と文様の組み合わせ(黼・黻・繡)、鍾氏の羽の染色法(三入で纁、五入で緅、七入で緇)、練絲・練帛の水練の工程を記す。
  • 玉人の職として、鎮圭・命圭(桓圭・信圭・躬圭)・大圭・土圭・裸圭・琬圭・琰圭・璧・琮・璋など、身分・用途ごとの玉器の寸法と用途(天子の即位・諸侯の朝見・聘女・軍事・祭祀など)を詳細に規定する。

楽器・磬・矢・陶器

  • 磬氏の磬の寸法比例、矢人の矢の各部位の重心配分(前後の重さ配分による用途別の矢:鍭矢・茀矢・兵矢・田矢・殺矢)、陶人・旊人の甗・盆・甑・鬲・簋・豆など陶器の寸法規定を記す。

筍虡・飲器・侯(的)・戈殳(廬人)

  • 梓人が鐘・磬を懸ける台(筍虡)を、獣の性質(臝属・羽属・鱗属)に応じて彫刻すべきとする理論、飲器(勺・爵・觚)の容量規定、射的(侯)の寸法と祭侯の祝辞を記す。
  • 廬人(柄物の武器)の職として、戈・殳・車戟・酋矛・夷矛の長さの規定と、攻める国・守る国それぞれに適した武器の長短の理論を述べる。

匠人:都市計画と溝洫

  • 匠人が水準器・日影で方位を定める測量法、王城の規模(方九里・旁三門・九経九緯)、明堂・世室・重屋など夏殷周三代の宮室制度の違い、宮門・城隅の寸法規定を記す。
  • 井田の溝洫(遂・溝・洫・澮)の規格、堤防・道路・屋根の傾斜の施工基準を詳述する。

車人・弓人

  • 車人の耒(すき)・車(柯・轂・輻・輮)の寸法規定、地形(沢地・山地)に応じた轂の長短の使い分けを記す。
  • 弓人の職として、弓材(幹・角・筋・膠・絲・漆の六材)の選定基準、季節ごとの製作工程(冬に幹を裁ち、春に角を漬け、夏に筋を治め、秋に三材を合わせる)、天子・諸侯・大夫・士それぞれの弓の規格(合わせて円を成す数の違い)、射用途に応じた弓の反り方の分類(夾臾・王弓・唐弓の属)を詳述する。

瑞玉図(編者による考証と図版)

編者按

  • 六瑞(圭・璋・璧・琮・琥・璜)の図について、旧図は尺度や形状の考証が不十分であったとし、鄭玄注・賈公彦疏や現存する三代の遺器を参照して新たに図を作成したと述べる。
  • 大圭・鎮圭・桓圭・信圭・躬圭・穀璧・蒲璧・璧琮・四圭有邸・両圭有邸・圭璧・裸圭・璋邸射・土圭・珍圭・璧羨・牙璋・大琮・駔琮・琬圭・琰圭・穀圭・大璋・中璋・辺璋など、周礼「典瑞」「考工記」に見える各種玉器について、鄭玄注・賈公彦疏の説を引きつつ、編者独自の考証(例えば「信圭」を「身」ではなく「申」の意とする説、瑞玉の形状に関する旧図の誤りの指摘など)を加える。
  • 末尾に、爾雅の「肉倍好謂之璧」等の璧・瑗・環の定義を引いて締めくくる。