前漢演義第二十五回 木罌で渡河し謀って魏豹を捕らえ、背水の陣で陳余を誘い斬る (木罌渡軍計擒魏豹 背水列陣誘斬陳餘)
魏豹の離反
- 帰省を願い出た魏王豹が平陽に戻ると河口を封鎖して漢から離反する。漢王は酈食其を派遣して説得を試みるが、魏豹は漢王の無礼な扱いを理由に応じない。漢王は韓信を左丞相として曹参・灌嬰とともに魏討伐に向かわせ、魏側の諸将(柏直・馮敬・項它)の器量を見切って余裕を見せる。
韓信の木罌渡河策
- 韓信は臨晉津で対岸の魏兵を牽制しつつ、上流の夏陽が手薄なことを突き止める。木材と大量の瓦罌(かめ)を集めさせ、木で組んだ筏状の「木罌」を作って夜間に密かに渡河、東張で魏軍を奇襲する。曹参が孫遬を破り、王襄を生け捕りにして安邑を落とす。
魏豹の捕縛と薄姫
- 魏王豹は曲陽・東垣で追い詰められ降伏、平陽も陥落する。魏豹は漢王の前で命乞いをして許される。魏豹の妾・薄姫(魏の宗女の血を引く)は没収されて織室に送られ、後に漢王の目に留まり後宮に入る。相人・許負の「貴子を産む」という予言の逸話が語られ、薄姫は後に文帝となる恒を生む。
代・趙侵攻と夏説の敗死
- 韓信は張耳と合流し代郡へ進撃。曹参が趙の代相・夏説を撃破して斬り、代を平定する。曹参は敖倉守備に呼び戻され、韓信は新たに兵を募って趙へ向かう。
背水の陣と井陘の戦い
- 趙は井陘口に二十万の兵で守りを固める。李左車は間道で漢軍の兵糧を断つ策を陳余に進言するが、義兵を標榜する陳余はこれを退ける。韓信はこれを見越し、汦水を背にした「背水の陣」で退路を断って兵を死戦させ、別動隊(傅寛・張蒼)に趙軍本営を急襲させて赤い漢の旗を立てさせる。動揺した趙軍は総崩れとなり、陳余は張耳に討ち取られ、趙王歇も捕らえられて斬られる。
評語
- 韓信の用兵は木罌渡河や背水の陣など奇策に満ち、正史の直筆に対し小説ならではの趣向として評価される。史実から大きく外れずに脚色されている点が評価され、薄姫の逸話も戦記の中に彩りを添えるものとして位置づけられる。