東周列國志第二十九回 晋恵公が群臣を大いに誅し、管仲が病床で後継の相を論じる (晉惠公大誅羣臣  管夷吾病榻論相)

惠公、里克を誅す

  • 里克は本来重耳を推していたが、夷吾の重賂に押されて即位に協力した。しかし惠公は約束の田を与えず旧臣を遠ざけたため、里克は不満を募らせる。丕鄭父の秦行きに同行しようとした行動も、郤芮に怪しまれる。
  • 郤芮は「里克は重耳と親しく、丕鄭父の秦行きにも異心があるはず」と惠公に讒言し、誅殺を勧める。惠公は里克の擁立の功を挙げてためらうが、郤芮は「二君と一大夫を弑した罪は公議として問うべき」と説き、惠公はこれを容れる。
  • 郤芮が惠公の言葉を伝えると、里克は「廃す者あって立つ者あり、罪を着せようとすれば言いがかりはいくらでもつく」と悟り、自刎して果てる。 (詩:里克が申生の代わりに死ぬべきであったと悔い、日和見策の失敗と荀息の忠死との対比を詠む内容)

惠公と賈君、申生の改葬

  • 里克誅殺後、群臣の不満は収まらない。惠公は郤芮の勧めで追及を控える。
  • 惠公は先君の妃賈君と情を通じ、その求めに応じて申生の名誉回復のため改葬と諡号(共世子)を行うことを約束する。郤乞が曲沃で改葬を行うと、申生の遺骸は生前のまま香を放ち、人々は涙を流す。狐突が祭祀に赴く。

狐突の異夢

  • 祭祀を終えた狐突は、道中で申生の亡霊(と思われる一行)に出会う。申生は「上帝の憐れみで喬山の主となった。夷吾の不徳を怒り、一時は晋を秦に譲ろうと考えたが思いとどまった」と語り、狐突は同姓の民を思い翻意を促す。
  • 申生は「再度上奏する」と告げて姿を消し、狐突は夢から覚める。数日後、巫者を通じて「その身を辱め、その血筋を絶つことで罰する」という申生の言伝えが届く。狐突はこれを丕鄭父の子丕豹にだけ密かに語る。

丕鄭父、秦との内応を企てる

  • 丕鄭父は秦からの帰途、里克誅殺の報に接し進退に迷うが、大夫共華の勧めで帰国する。惠公に復命し、秦の使者冷至を伴い書簡を届ける。
  • 秦の書簡は、割譲を強く求めず呂飴甥・郤芮との面談を求める穏便な内容で、地券も返還されており、惠公は喜んで両名を秦に送ろうとする。
  • 郤芮・呂飴甥はこれを丕鄭父と秦の謀略と見抜き、使者派遣を先延ばしにして丕鄭父の動静を探らせる。丕鄭父が祁舉・共華・賈華・騅遄らと夜に会合していることをつかむ。

屠岸夷の裏切りと粛清

  • 郤芮は捕らえた(と偽って)屠岸夷を脅し、丕鄭父の陰謀に加担させて内情を探らせ、成功すれば恩賞を与えると約束する。屠岸夷は郤芮の指示通りの筋書きを暗記し、丕鄭父を訪ねて助けを求める芝居を打つ。
  • 丕鄭父は屠岸夷を信じ、重耳擁立の計画を語り、祁舉・共華・賈華・騅遄に加え叔堅・累虎・特宮・山祈の合計十名で血判を交わす。 (詩:救いを求めてきたはずの屠岸夷が実は呂郤の間者であったという、謀略の入れ子構造を詠む内容)
  • 屠岸夷は丕鄭父の署名入りの密書を得て郤芮に渡す。郤芮・呂飴甥・虢射はこれを証拠に惠公へ密告する。
  • 翌朝の朝廷で惠公は丕鄭父を詰問し、密書を突きつけて一味八名(共華は不在で後日捕縛)を捕らえ処刑する。賈華は過去の恩を訴えるが聞き入れられない。
  • 共華は自ら出頭して丕鄭父を推薦した責を負い、処刑される。丕豹は父の死を知り秦へ亡命する。惠公は郤芮の勧めで一族連座は行わず、屠岸夷を中大夫に取り立てて恩賞を与える。

丕豹、秦に晋討伐を説くが容れられず

  • 秦に亡命した丕豹は穆公に父の死の経緯を訴え、晋討伐を進言するが、蹇叔は「臣が君を討つ理を助けるのは義に反する」とし、百里奚も「機が熟すのを待つべき」と諫め、穆公も同意見であった。丕豹はそのまま秦に仕える。

王子帶の乱と秦晋の共闘

  • 周の王子帶が戎と結んで京師を攻めさせる事件が起こる。秦穆公・晋惠公は共に周を救援し、戎軍は退く。
  • 両君の対面はぎこちなく、惠公は秦の穆姬から届いた「賈君や公子たちへの不実」を咎める密書に疑心を強め、急ぎ帰国する。丕豹は穆公に夜襲を勧めるが、穆公は「勤王で来た以上、私怨で動くべきではない」と退ける。

王子帶の追放と管仲の病

  • 斉桓公も管仲を派遣して周を救援させ、戎主を叱責して退かせる。周襄王は王子帶を斉へ追放する。
  • 襄王は管仲の功に報いて上卿の礼で遇そうとするが、管仲は高・国二氏に配慮して下卿の礼にとどめる。
  • その冬、管仲が病に倒れ、桓公が見舞う。管仲は既に甯戚・賓須無を失ったことを惜しみつつ、後継について問われる。
  • 鮑叔牙は君子だが善悪に厳しすぎて政には向かないとし、隰朋を推すが、「自分が死ねば隰朋も長くは持たない」と案じる。
  • 桓公が易牙・豎刁・開方の登用を問うと、管仲は「我が子を殺して媚びた易牙、自ら去勢して仕えた豎刁、父母の喪にも帰らなかった開方は、いずれも人情に反してまで君に取り入っており、その裏には千乗の封にも勝る野心が隠れている」として、三人を遠ざけるよう強く戒める。桓公は返答できず、黙して退く(続きは次回、管仲の安否)。