鐵冠圖全傳第三十七回 尤固才義のため下書し、於希祖欺かれ矢に中る (尤固才亡義下書 於希祖被愚中箭)
王進忠の焦り
- 王進忠は闖王が再び八達嶺下関を攻めると聞き焦る。かねて三月十三日に関を献じる約束をしていたが、すでに十二日になっていた。物見の内丁を上関へ探らせるが、逆に守将(于希祖・馬岱)方の官兵に罵倒されて帰る。
- 激怒した王進忠は即座に上関を攻めようとするが、幕客の張邦賢が「一両日で落とせる城ではなく、その間に北京の援軍が来ればどうするのか」と諫める。
張邦賢の計略
- 張邦賢は、力攻めせずとも関を開かせる策があると説く。城中の通判・尤固才が于希祖の同郷の友であることに目をつけ、賄賂で尤固才を抱き込み、「王進忠の内通が露見して自分が捕らえ北京へ護送した、まもなく北京の援軍が到着する」という偽の書状を于希祖に送らせる計画である。于希祖がこれを信じれば、援軍を装って上関に接近し、開門させて奪う。上関を得れば下関も攻め、居庸関全体を落として闖王の大軍を北京へ進ませられるという算段。
- 王進忠はこの策に大いに賛同し、尤固才を呼び出して書状を書かせる。
偽情報に踊らされる于希祖
- 八達嶺を守る于希祖・馬岱のもとに、尤固才が王進忠の内通を暴き捕縛して北京へ送った、援軍がまもなく到着するとの報せと書状が届く。書状の内容は、王進忠の裏切りが露見し民心を得て捕縛に成功した、援軍派遣を要請したので国家のために動揺しないようにという趣旨。
- 馬岱は旧友からの書状ゆえ疑う必要はないと判断し、于希祖に返書を書かせる。返書は「援軍到着の際は尤固才自らが関に来て呼びかけよ、その時にのみ開門する」という条件付きの内容であった。
開門をめぐる駆け引きと于希祖の死
- 返書を受け取った尤固才は居庸関へ戻り王進忠に報告。王進忠は「聖旨により闖王の動きが居庸関に及べば北京から援軍が出る手はずになっているが、どう取り繕うか」と問う。尤固才は「闖王はまだ宣府におり、まもなく陝西へ引き上げる」との虚偽の上奏で時間を稼ぐよう提案し、王進忠はこれに従って上奏する一方、三軍に八達嶺への進発を命じる。
- 尤固才は城壕近くまで進み「北京の援軍が到着した、開門せよ」と呼びかける。于希祖が指揮官の名を尋ねると、尤固才はとっさに「司礼太監・杜大人」と答えるが、于希祖は本物の杜秩亨が凡庸な人物であることを知っており不審を抱く。日も暮れていたため、于希祖は尤固才らを城外で一夜野営させ、翌朝改めて開門する方針を伝える。
- このとき王進忠方の伏兵はすでに城壕際まで迫っており、于希祖が疑いを見せたのを察して弓を放ち、鎧を着けていなかった于希祖の胸を射抜く。于希祖は城壁から落ちて絶命し、守兵は混乱。王進忠の兵は城壕を越え雲梯をかけて次々に城内へなだれ込む。後の展開は次回に持ち越される。