鐵冠圖全傳第一回 殺星の魔王現れ、李闖父を生き埋めにす (遣殺星魔王降世 埋活父李闖滅倫)

鉄冠道人の予言

  • (歌:張・李がやがて敗れ去り、その後に太平の世が訪れるという趣旨)
  • この歌は明初の鉄冠道人(本名・張沖、字は子華)の作。道術に通じ、太祖に招かれて国運の長短を問われ、「陛下の代は万暦帝まで続く」と答え、未来を描いた三枚の絵を献上した。太祖はこれを金櫃に納め、「子孫みだりに開くべからず」と自ら封をした。後にその予言どおり、万暦帝の代で明は滅びることになる。

万暦帝から崇禎帝への衰亡

  • 万暦帝は明の十三代皇帝。聡明だが逸楽を好み政務を怠り、無辜の民を多く殺したため天の怒りを招き、殺気を帯びた星が世に降された。在位三十四年の元日には天変地異が相次いだ。
  • 万暦帝の崩御後、子の泰昌帝は即位一月で崩御。天啓帝が跡を継ぐが、宦官魏忠賢と乳母客氏を寵愛して売官・党争が横行し、民心は離れた。天啓帝も跡継ぎなく崩御し、弟の信王(万暦帝の孫)が即位、崇禎と改元する。
  • 崇禎帝は歴代随一の勤勉・英明な君主で、即位後ただちに魏忠賢一派を排除したが、その後は大臣を信じきれず新参者ばかりを用いた。すでに祖父・父の代に国政・財政が傷んでおり、加えて長年の凶兆・飢饉が重なって、賢君をもってしても国運の衰えを覆すことはできなかった。即位の日には空中に泣き声が聞こえ、亡国の兆しとされた。

宋炯と李自成の出会い

  • 河南出身の小柄な道士・宋炯(字は献策、綽名「地丁娃」)は、明朝の滅亡を見越し、開国の軍師とならんと真の主を探し歩いていた。陝西延安府米脂県で、駅館前に立つ人相非凡な大男(李自成)に声をかけられ、人相・八字を占う。
  • 生年月日を聞くと、実は最初の「殺気の星」が降った日にあたるが、宋炯はあえて虎嘯竜吟の貴相、来年殺運到来と持ち上げ、李自成を信じ込ませる。さらに祖先の墓を確かめたいと申し出て城外の乱葬墓を見せられるが「生気なし」と一蹴し、代わりに披雲山中の吉地を示し、祖父母・父母の埋葬場所まで指南する。
  • ここで互いに名乗り合い、宋炯は自らの経歴(河南帰徳府出身、異人から天文地理・相法兵機を学び、明朝の滅亡を予知して真主を探索)を語る。李自成は米脂県広義郷の出、父は十戈、母は石氏で、生誕時に黒気に包まれた大男が部屋に飛び込む夢を見たことから「闖」と名付けられたと明かす。学問は好まず豪傑と交わることを好み、駅丞の書記として県内の顔役をよく知ると語り、宋炯を軍師にすると約す。

李自成の弑親

  • 宋炯と別れた李自成は、予言が的中すれば自分は帝王になれると考え、病身の父母を早く葬って自らの即位を早めようと企み、毒薬を買って父母に飲ませる。父の十戈夫婦は毒により七竅から血を流して絶命する。
  • 李自成は表向き嘆き悲しんで見せ、棺に納めて披雲山へ運び、祖先の柩とともに宋炯の指示どおりに合葬する。父母の死後は誰にも咎められることなく、悪党と結んで法を犯し民を害する行いをますますひどくしていく。

呼び出し

  • ある日、李自成が友人と娼楼で酒を飲んでいると、県の役人二人が訪ねてきて「新任の役所があなたを探していた、太爺が堂で待っている」と告げる。一同が事情を尋ねると、話は次回に持ち越される。