- 要旨: 先に戦場に着いて敵を待つ者が有利であり、敵を思い通りに動かして自らは動かされないことが要諦だとし、敵の実(充実した所)を避け虚(手薄な所)を撃つ、水のように定形のない用兵を説く。
先んじて敵を制する
- 先に戦場に着いて敵を待つ者は余裕があり、後から急いで戦場に向かう者は疲れるとし、巧みな戦い手は敵を思い通りに動かし、自らは動かされないとする。
- 敵を誘い出すには利で誘い、敵を近づけさせないためには害を示すべきだとし、敵が休んでいれば疲れさせ、満腹していれば飢えさせ、安定していれば動揺させるべきだとする。
敵の不在を突く
- 千里を行軍しても疲れないのは、敵のいない土地を進むからであり、攻めて必ず取れるのは敵の守っていない所を攻めるからであり、守って必ず固いのは敵の攻めない所を守るからだとする。
- 巧みな攻め手には敵は守るべき場所が分からず、巧みな守り手には敵は攻めるべき場所が分からないとし、その微妙さは形なきに至り、その神妙さは声なきに至るため、敵の運命を握ることができるとする。
我専敵分の原理
- 進んで防げないのは敵の虚を突くからであり、退いて追えないのは速さゆえに追いつけないからだとする。
- 敵の形を明らかにしながら自軍の形を隠せば、自軍は集中でき敵は分散するとし、自軍が一つに集まり敵が十に分散すれば、十で一を攻めることになり、多数で少数を撃つ形になるとする。
- 戦う場所と時を敵に知られなければ、敵は備えを広く分散させざるを得ず、その結果あらゆる場所で手薄になるとし、「備える者は寡となり、人に備えさせる者は衆となる」と結ぶ。
戦の時と場所を知ることの重要性
- 戦う場所と日を知っていれば千里離れていても会戦でき、知らなければ左右前後が互いに救援できないとし、越(呉越の隣国)の兵が多くても勝敗には無益だとする。敵が多くても戦わせないようにすることができるとする。
敵情を探る四つの方法
- 敵を策謀にかけて得失の計算を知り、敵を動かして動静の理を知り、敵の形を明らかにして死地・生地を知り、敵と小競り合いをして有余・不足の所を知るべきだとする。
- 兵の形の極致は「無形」に至ることであり、無形であれば深く潜む間者も窺えず、智者も謀を立てられないとし、人はこちらが勝った理由となる形は知っても、勝利を制した本当の形は知らないとする。ゆえに一度の勝利の形は二度と繰り返さず、無限に敵の形に応じて変化するとする。
水のような用兵
- 兵の形は水に似ており、水が高きを避け低きに流れるように、兵も敵の実を避け虚を撃つべきだとする。水が地形によって流れを変えるように、兵も敵に応じて勝利を制するとし、兵には固定した勢いも一定の形もなく、敵の変化に応じて勝ちを取れる者を「神」と呼ぶとする。五行に常勝はなく、四季にも定位はなく、日には長短があり、月には満ち欠けがあることにたとえて締める。