- 要旨: 多数の兵を寡兵のように統率する術(分数・形名・奇正・虚実)を説き、正攻法と奇策を組み合わせた無限の変化、そして勢い(險)と節度(短)によって圧倒的な戦力を生み出す原理を論じる。
大軍を寡兵のように治める術
- 大軍を少数のように統率できるのは分数(部隊編成)の術によるものであり、大軍を少数のように戦わせられるのは形名(旗や合図)の術によるものであり、三軍が敵に当たっても敗れないのは奇正(正攻法と奇策)の使い分けによるものであり、砕くように敵を撃てるのは虚実(敵の弱点と実力の見極め)によるものだとする。
奇正の無限の変化
- 戦いは正攻法で敵と対峙し、奇策で勝利を得るとし、奇策を巧みに用いる者は天地のように尽きることがなく、江海のように涸れることがないとする。
- 五声・五色・五味の組み合わせが無限の変化を生むように、奇正の組み合わせも尽きることがなく、奇と正は循環して互いに生じ合うため、誰も窮めることができないとする。
勢いと節度
- 激流が石を漂わせるほどの勢いや、猛禽が獲物を打ち砕くほどの節度をたとえに、巧みな戦い手は勢いが険しく、節度が短いとする。勢いは張り詰めた弩、節度は引き金を引く瞬間にたとえられる。
乱の中の秩序、弱の中の強
- 混乱しているように見えても実は統制が取れており、渾沌としているように見えても陣形は崩れないとし、乱は治から、怯は勇から、弱は強から生じうるとする。治乱は編成の問題であり、勇怯は勢いの問題であり、強弱は形の問題であるとする。
敵を動かし、勢いに任せる
- 巧みに敵を動かす者は、偽りの形を見せて敵を誘い、利で釣って敵に取らせ、こうして利で動かした敵を待ち構えて撃つとする。
- 巧みな戦い手は人に頼らず勢いに求め、人材を適切に配置して勢いに任せるとし、勢いに乗れば、木や石を転がすように兵を動かせるとする。木石は安定していれば静止し、傾けば動き、方形なら止まり、円形なら転がるように、巧みな戦いの勢いとは、千仞の山から丸い石を転がすようなものだとする。