正月 新帝への諫言と路巖誅殺
- 正月丁亥、翰林学士盧攜は、新たに即位した僖宗に対し、民こそ国家の根本であるとして長文の上奏を行った。
- 関東では前年の旱害で虢州から海辺に至るまで麦は半作、秋の収穫はほぼなく、冬菜も尽き、貧民は蓬の実を挽いて粉とし、槐の葉を蓄えて食べるほどであった。租税は実際には徴収不能なのに、州県は上供や三司銭の督促を急ぎ、百姓は家屋を壊し木を売り、妻子を売っても役人の酒食代に消えるだけだと訴えた。
- 盧攜は残税徴収停止と義倉開放を求め、勅はこれを採用したが、実際には有司が実施せず、空文に終わった。
- 路巖は江陵へ着くと、さらに官爵を削られて儋州への長流となり、ほどなく自尽を命じられた。囚われて二晩で髪も鬚も真っ白になったという。
- 路巖は宰相時代、三品以上への賜死では使者に喉元を切り取って死を確認させていたが、自らもまたその報いを受けた。しかも死んだ場所は、かつて楊収が賜死を受けた榻と同じであった。辺咸・郭籌も捕らえられて誅殺された。
- 胡三省は、路巖が若いころ崔鉉に「いつか必ず宰相になる」と見抜かれていたこと、実際その予言どおり出世したが老後を保てなかったことも伝えている。
二月〜五月 懿宗の葬儀と劉瞻復帰
- 二月甲午、懿宗は簡陵に葬られ、廟号を懿宗とした。
- 趙隠は鎮海節度使として外任し、華州刺史裴坦が宰相となった。
- 虢州刺史にされていた劉瞻は刑部尚書に任じられて帰京した。彼が遠流にされたときには賢愚を問わず皆が痛惜していたため、帰還にあたって長安の東西両市の人々は金を出し合い、百戯を雇って迎えようとした。劉瞻はこれを聞き、日を改めて別路から入京した。
- 夏五月乙未、裴坦が死去し、劉瞻が中書侍郎・同平章事となった。
八月 劉瞻急死
- 劉鄴はかつて韋保衡・路巖に同調して劉瞻を悪く言っていたため、劉瞻が宰相に復帰すると内心では恐れていた。
- 秋八月丁巳朔、劉鄴は劉瞻を塩鉄院に招いて酒宴を開いた。
- 劉瞻は帰宅後に発病し、辛未に死去した。当時の人々は、劉鄴が毒を盛ったのだと疑った。
崔彦昭入相と旧怨
- 崔彦昭が同平章事となった。崔群の従子である。
- 王凝はその母が崔彦昭の従母で、二人は同年の進士だった。昔、王凝が気軽な服装で崔彦昭をからかい、「君は明経でも受けた方がよい」と言ったことから、崔彦昭は深く恨んでいた。
- しかし崔彦昭の母が、王侍郎母子が追放されるなら自分も妹とともに行く、と婢に履物を多く作らせたため、崔彦昭はひれ伏して二度とそんなことはしないと誓い、王凝は難を逃れた。
十月〜年末 新宰相・南詔再侵・王仙芝起つ
- 十月、劉鄴は淮南節度使として外任し、鄭畋・盧攜がともに宰相となった。
- 十一月庚寅の冬至、群臣は僖宗に新たな尊号を奉り、改元して乾符とした。
- 魏博節度使韓允中が死去し、その子の韓簡が留後となった。
- 南詔は再び西川を侵し、大度河に浮橋を架けて渡ろうとした。防河都知兵馬使で黎州刺史の黄景復は、敵が半ば渡ったところを襲って撃退し、浮橋を断った。
- 南詔は旗を多く立てて正面の虚勢を張りつつ、夜陰に上下流それぞれ二十里の地点で別の浮橋を作り、翌朝一斉に渡河して城柵を破った。黄景復は三日戦ってわざと敗走し、伏兵三手で敵の追撃軍を大破した。
- だがその後、西川の援軍は来ず、南詔の増援ばかりが到着したため、黄景復は支えきれず敗れた。
- 十二月、党項と回鶻が天徳軍を侵した。
- 感化軍からは群盗が掠奪して州県が抑えられないとの奏上があり、朝廷は兗・鄆などに討伐を命じた。
- 南詔は勝ちに乗じて黎州を陥れ、邛崍関を越えて雅州を攻めた。大度河の敗兵は邛州へ逃げ込み、成都では民が争って入城したり北へ逃げたりして騒然となった。
- 南詔王の坦綽は節度使牛叢に書を送り、讒人に離間された数十年の怨みを天子に直訴したいだけで、蜀王庁を数日借りて長安へ上りたいのだと称した。
- 牛叢は弱気でこれを許しそうになったが、楊慶復は反対し、使者のうち一人を斬って二人を帰し、罪を数えあげて激しく叱責する書を送った。
- 南詔軍は新津まで来て引き揚げたが、牛叢はあらかじめ城外の民家を焼き払ってしまい、蜀人はこれを恨んだ。
- 朝廷は河東・山南西道・東川から援軍を出し、なお高駢に西川へ赴いて南詔対策を処理させた。
- 商州では刺史王樞が折糴銭を減額したため、民衆が白梃を持って追い立て、官吏二人を殺した。後任の李誥が三十余人を捕えて斬った。
- かねて回鶻に冊命を与えるため郗宗莒を送っていたが、そのころ回鶻は吐谷渾・嗢末に破られて逃散しており、宗莒は玉冊を持ったまま帰国した。
- この年、僖宗はまだ若く、政権は臣下にあった。南牙と北司は対立し、懿宗以来の奢侈と戦費、重税、水旱、虚報が重なり、民は流亡して盗賊化した。
- その中で、濮州の王仙芝が長垣で数千を集めて挙兵した。これが大乱の発端となる。