說岳全傳第22回 義兄弟の契りを結び王佐は名を偽り、精忠を刺し岳母は子を諭す (結義盟王佐假名 刺精忠岳母訓子)

(詩:司馬相如の故事を借り、賢母の教えと将軍の忠誠心を称える)

王佐、義弟を装って来訪

  • 一緒に暮らしていた義兄弟たちは貧しさに耐えかね、次々と岳飛のもとを去っていった。悲しみに沈む岳飛のもとへ、ある男が訪ねてくる。
  • 男は武芸を学びたいと言い、岳飛と義兄弟の契りを結ぶ。名を于工、湖広の生まれで22歳と名乗り、岳飛より年下として弟分となった。
  • 于工は銀二百両を差し出すが、岳飛はいったん固辞するも、義兄弟だからと押し切られて受け取る。

正体は洞庭湖・楊么の使者

  • 于工は盤に馬蹄金・大粒の真珠・緋色の戦袍・玉帯を並べ、さらに書状を捧げて「兄上、聖旨をお受けください」と言い出す。
  • 岳飛が問い詰めると、男は実は洞庭湖の反乱勢力・楊么配下の東勝侯、王佐であると明かす。徽宗・欽宗の二帝が金に拉致され朝廷が乱れる中、楊么が岳飛の文武の才を見込み、洞庭湖へ招聘するために遣わされたのだという。
  • 岳飛は「先に義兄弟の契りを結んでくれたおかげで命拾いをしたようなものだ」としつつ、宋の臣として賊に投じることは断じてできないと毅然と拒絶する。王佐は「天下は徳ある者のもの」と説くが、岳飛の固い志を崩せず、贈り物を包み直す。
  • 岳飛は先に受け取った銀二百両をそのまま王佐に返し、旅費として持たせる。王佐はやむなく受け取り、静かに立ち去った。

岳母、背に「精忠報国」を刺す

  • 母(岳安人)は事の次第を聞き、香案を設けさせ、天地祖宗に誓いを立てたうえで、嫁に墨を磨らせ、岳飛にひざまずかせる。
  • 母は「自分の亡き後、心得違いの者に誘われて不忠の道に迷い込まぬように」と、岳飛の背に「精忠報国」の四字を刺そうとする。岳飛は一度「身体髪膚は父母より受く」と遠慮するが、母に諭され承知する。
  • 母は自ら筆で四字を書き、繍花針で刺し、酢墨を塗って消えないようにした。岳飛は痛みを見せず、母の教えに深く感謝する。

湯陰県令、新帝の聖旨を伝える

  • 湯陰県の県主・徐仁が礼物を携えて岳飛を訪ね、香案を設けて聖旨を受けるよう告げる。岳飛は先の王佐の一件を警戒するが、実は康王(後の高宗)が金営から脱出し金陵で即位したという知らせだった。
  • 高宗の詔には、国難に際し岳飛の文武の才を頼み、黄金や礼物を賜って上京・任官させ、賊を討ち二帝を迎え救うようにとある。岳飛は喜んで拝命する。
  • 岳飛は亡き師・周先生と祖先の位牌に別れを告げ、母と妻に酒を捧げて出立の挨拶をする。母は「忠義を尽くし名を残せ」と諭し、妻・李氏には老母と子の世話を託す。徐仁はこの一家の忠孝ぶりに感嘆する。

出立と岳雲との別れ

  • 岳飛は母と妻に別れを告げ馬に乗る。徐仁は自ら手綱を取り、天子の代わりに礼を尽くすと言って恐縮する岳飛を諭す。
  • 出立の際、幼い息子・岳雲が駆けつけ見送る。岳飛は留守中の孝行と学問を言い聞かせるが、岳雲は無邪気に「韃子(金兵)を全部殺さず、少し自分にも残してほしい」と言い、叱られて笑いながら帰っていく。

上京・任官と青龍山への布陣準備

  • 金陵に着いた岳飛は高宗に拝謁し、金帛を賜り一旦湯陰へ戻される。高宗は岳飛の風格に喜び、宗澤の進言で旧職の承信郎に代え総制の位を与え、後の功に応じて昇進させると約す。
  • 高宗は金国の粘罕兄弟五人の肖像を見せ、見分けて逃さぬよう命じ、岳飛を大元帥張所の麾下につかせる。
  • 帥府で張所に謁見した岳飛は、教場で兵を選抜するも精鋭は800名しか集まらず、それで先鋒隊とする。二番手の先鋒には山東節度使・劉豫が渋々任命される。
  • 出陣の朝、賊軍が儀鳳門を襲うとの報が入り、岳飛は800の兵を率いて出陣する。相手はにわか仕立ての賊徒だが、その中に凶悪な形相の一人の男が現れる。