西漢演義第三十回 覇王は諫めを拒み韓生を烹る (霸王拒諫烹韓生)
童謡による遷都工作
- 項伯の下を去った張良は道士に扮して城中に潜み、子供に「今有一人、隔壁搖鈴……富貴不還鄉、如錦衣夜行」という謡を教え込み、誰が教えたか問われても師にそう言われたとだけ答えるよう命じて姿を消す。
- 項羽の密偵がこの童謡を聞きつけて奏上、項羽自ら市中でこれを確かめ、天意が東方への帰郷(遷都)を示すものと解釈する。
韓生の諫言と処刑
- 項羽は翌朝、童謡を天意として彭城遷都を宣言する。諫議大夫の韓生は童謡が人為の作り話であることと、関中の地勢の要害と沃野を説いて翻意を求めるが、項羽は聞き入れない。
- 韓生が退出しながら「楚人沐猴而冠」(項羽を、冠を被った猿に例える侮辱)と嘆くのを項羽が聞きとがめ、陳平にその意味を問い質す。陳平がやむなく説明すると、項羽は激怒し、韓生を油鍋で煮殺すよう命じる。監斬役は韓信。
刑場でのやりとり
- 韓生は刑場で百姓に、遷都の愚と劉邦による三秦奪還を予言し、なお「沐猴而冠」と言い放つ。韓信はこれをたしなめつつ、韓生に対し「これまでの悪政(宋義殺害、秦の降卒生き埋め、子嬰殺害、阿房宮焼却、諸侯の左遷)には諫めず、今頃遷都だけを諫めるのは遅すぎる」と皮肉る。さらに群衆に紛れる張良をそれと知らぬまま脅すように「桟道を焼いた張本人がこの中にいる」と口にし、張良はひそかに肝を冷やす。
- 韓生は処刑され、市中の人々は皆嘆く。
その後
- 翌日、韓信は復命し、項羽は季布を彭城へ遣って宮殿造営を督させる。以後、諫める者はいなくなる。
- 張良は韓信の住まいを突き止め、翌晩、秦宮で得た宝剣を背負って韓信の門前を訪れたところで終わる。