兩晉演義第五十六回 刑戮を逞しくし苻生が虐を恣にし、淫威を盗み張祚が身を殺す (逞刑戮苻生縱虐 盜淫威張祚殺身)

王猛の正体と桓温の撤退

  • 灞上に現れた狂士は北海の王猛。若い頃に山中で白髪の父老から報酬を受けた奇談、華陰山で異人に師事した経歴が明かされる。
  • 桓温は王猛を軍謀祭酒に任じるが、王猛は師に「桓温とは長く並び立てない」と諭され従軍を断り、山に留まる。
  • 桓温は糧秣不足から撤退を余儀なくされ、秦軍の追撃で損害を受ける。老婢が桓温を劉琨と比べ「似て非なり」と評した逸話も描かれる。

苻健の死と苻生の即位

  • 丞相苻雄の急死に苻健は号泣。次子苻堅の出生譚(神光・背中の文字「草付臣又土王咸陽」)と、龍驤将軍任命の逸話が語られる。
  • 太子萇の死後、讖文により苻生が太子に立てられる。苻健は重臣に後事を託し崩御(諡は明皇帝)。
  • 苻生が即位し「壽光」と改元。即日改元に異を唱えた段純を処刑する。

苻生の暴虐の始まり

  • 封典を求めた寡婦を射殺、妻の嫉妬から尚書僕射賈玄石を殺害、太史令や太傅・大臣ら(強平、梁皇后、毛貴、梁楞、梁安ら)を次々粛清。
  • 丞相雷弱児とその一族、司空王墮らも讒言により処刑される。
  • 尚書辛牢を宴席で射殺、飲酒に付き合わない群臣を脅すなど酒席の暴虐も続く。

涼州の混乱と張祚の簒奪

  • 涼州牧張重華は謝艾を遠ざけ、政務を怠るようになる。晩年、庶兄張祚と生母馬氏の姦通が露見し、憂憤のうちに病死。
  • 幼い子耀靈が跡を継ぐが、実権は張祚が握り、馬氏と結んで耀靈を廃し自立。張祚は重華の妃や妾、未婚の妹、幼い姪までも凌辱する淫虐ぶりを見せる。

張祚の即位と滅亡

  • 張祚は王位を僭称し「和平」と改元。功臣謝艾を誅殺し、諫言した馬岌・丁琪らを処罰。
  • 桓温の北伐を恐れ秦州刺史王擢と対立、王擢は秦に降る。宗室張瓘との対立が武力衝突に発展し、張瓘軍が姑臧に迫る。
  • 追い詰められた張祚は耀靈を殺害するが、宋混らが挙兵して城内に突入。張祚は逃亡中に厨子徐黒に討たれ絶命する。

評語

苻生と張祚は同時代に悪行を極めた人物である。苻生の殺戮は張祚の淫乱に勝り、張祚の淫乱は苻生の殺戮に劣らない。妻を無故に殺し人倫を絶ち、母を犯し親族を汚す振る舞いは桀紂にも勝るとも評される。両者とも早くに滅びたのは当然の帰結である。