兩晉演義第十五回 逆賊の蛮を討ち荊土を平定し、君命に背き陸機を冤罪で殺す (討逆蠻力平荊土 拒君命冤殺陸機)
李蕩の戦死と羅氏の奮戦
- 李流は赤祖に退いて残兵を収め、李蕩とともに陣を張り直す。
- 羅尚配下の何沖らが北営を攻め、内応した苻成・隗伯の裏切りで営内が乱れるが、李特の妻羅氏が隻眼を負いながら奮戦して持ちこたえる。
- 李流・李蕩が駆けつけて何沖を撃退するが、追撃した李蕩は苻成・隗伯に討たれて落命する。
李雄の台頭
- 孫阜軍の圧迫を受けた李流は降伏を模索し、子の世と甥の胡を人質に出そうとするが、李驤・李雄兄弟は反対。
- 兄李離の勧めもあり、李雄は独断で孫阜軍を奇襲して撃破。以後、軍事の実権は李雄が握るようになる。
- 李雄の出自(羅氏が大蛇の夢を見て身ごもり十四月を経て生まれたという伝承、術士劉化の予言)が語られる。
張昌の乱
- 荊州で兵役忌避者や飢民を集めた義陽の蛮族張昌が挙兵し、李辰と改名して神仙・符瑞を装う偽の権威づけで勢力を拡大。
- 江夏太守弓欽を破り江夏を占拠、邱沈を「劉尼」と偽って傀儡皇帝に立てる。
- 新野王司馬歆は討伐に失敗を重ね、自ら出陣するも部下の離反で包囲され戦死する。
劉弘の荊州平定
- 朝廷は劉弘を鎮南将軍・荊州都督に任じ、陶侃・皮初らを起用して張昌討伐にあたらせる。
- 陶侃は竟陵で張昌軍を撃破し、投降者を許す方針で賊軍を瓦解させ、最後は張昌を討ち取る。
- 荊州入城時、範陽王司馬虓配下と称する張奕が城を占拠していたが、劉弘はこれを誅殺し秩序を回復する。
- 陶侃の経歴(貧家の出身、母湛氏が髪を売って客をもてなした逸話、範逵の推挙で出仕)が語られる。
石冰・封雲の乱と陳敏
- 張昌配下の石冰が揚州に侵攻、封雲が徐州で呼応し荊・江・揚・豫・徐の五州が乱れる。
- 周玘・顧秘・賀循らが義兵を挙げ、度支の陳敏も参戦して石冰を連破。石冰・封雲はともに部下に討たれ乱は平定される。
- 陳敏は功により広陵相となるが、以後驕り高ぶって野心を見せ始める。
陸機の悲劇
- 河間王顒の長史李含が皇甫商・皇甫重兄弟を陥れようと画策するが露見し、長沙王乂に李含・馮蓀・卞粹らが誅殺される。
- 激怒した河間王顒と成都王穎が結んで長沙王乂の弾劾を上表、朝廷は逆に乂を太尉に任じて両王討伐を命じる。
- 成都王穎は陸機を前将軍・都督として二十万の兵を統率させ洛陽に迫るが、文人である陸機は諸将の信望を得られず軍紀が乱れる。
- 皇甫商の別動隊も敗れ、長沙王乂自ら出陣した戦いで陸機軍は大敗(七里澗での多数溺死)。
- 陸機と対立していた孟超(成都王の寵臣孟玖の弟)が戦死したことから、孟玖が陸機に謀反の讒言を仕掛け、成都王穎は牽秀に命じて陸機を処刑させる。
- 陸機の弟の雲・耽、司馬の孫拯も連座して処刑される。獄吏に拷問されても孫拯は最後まで陸機の無実を訴え続けた。
- (詩:陸機兄弟の才能を惜しみ、早く隠棲していればという嘆きを詠む)
評語
- 新野王司馬歆は姦計を弄した人物であったが、賊に討たれた死は逆賊として滅んだ河間王顒・成都王穎らよりまだましだったとする。
- 劉弘が陶侃を抜擢して乱を平定した手腕を高く評価。
- 河間王顒は元来跋扈の徒として論評するに値しないが、名望のあった成都王穎までもが寵臣の讒言で陸機を無実の罪に落としたことを厳しく批判する。
- 陸機は逆賊に与して非命に斃れたこと自体は自ら招いたものだが、朝廷の正しい裁きではなく讒言によって死んだ点は同情に値するとしつつも、主を選ぶ見識の欠如を指摘し、読者の判断に委ねている。