- 要旨: 太公望は諸侯の地で四方を包囲され糧道も断たれた窮地から必ず脱出する方法として、敵の手薄な場所を突く夜間の隊列編成と、水塹に阻まれた場合の渡河・欺瞞・追撃阻止の術を説く。
包囲脱出の基本
- 武王が深く諸侯の地に入り四方を包囲され帰路も糧食も絶たれた窮地からの脱出法を問う。
- 太公望は、脱出の道は器械を宝とし勇闘を第一とすると答え、敵の手薄な空虚の地を見極めて夜、黒旗を持たせ器械を操り銜枚(音を立てぬ工夫)をして出るべきだとする。
- 勇力・俊足・冒険心のある士を前に置いて塁を平らにし道を開かせ、材士・強弩を伏兵として後に、弱卒・車騎を中に置き、陣を整えて静かに進み、驚かせないようにする。
- 武衝扶胥で前後を守り、武翼大櫓で左右に備え、敵が驚けば勇力の士が疾く撃って前進し、弱卒・車騎がこれに続き、材士・強弩は伏せたままとする。
- 敵が追撃してくれば伏兵が疾くその後方を撃ち、火や太鼓を多く用いて、地から湧いたか天から降ったかのように見せ、三軍が勇んで戦えば誰もこれを防げないとする。
大水・広塹に阻まれた場合
- 武王がさらに、前に大水・広塹・深坑があり渡る舟楫の備えがなく、敵が塁を構えて前を塞ぎ帰路も絶ち、険阻を守り前後から挟まれる場合の対処を問う。
- 太公望は、大水や深塹は敵も守りにくく、守っていてもその兵は少ないとし、飛江・転関・天潢(渡河器具)を用いて軍を渡らせるべきだとする。
- 勇力・材士に指示に従わせ敵陣を衝いて絶ち死力を尽くさせ、まず輜重や糧食を焼き払って、吏士に「勇んで戦えば生き、勇まなければ死ぬ」と明告する。
- 脱出した者には殿軍を設けさせ、雲火(遠くを見張る狼煙)で遠くを候わせ、草木・丘墓・険阻に依らせれば、敵の車騎は遠く長く追ってこられない。
- 火を目印として、先に出た者は火のある所まで至れば止まり、四方に武衝の陣を組ませる。こうすれば三軍は皆精鋭となって勇み戦い、誰もこれを止められないとする。武王はこれに「善哉」と応じる。