直言を戒める妻の諫め
- 晉の大夫伯宗の妻である。伯宗は賢明であったが、率直な弁舌で人を圧倒することを好んだ。朝廷に出るたびに、妻は常に「盗人は家の主人を憎み、民はその上に立つ者を愛するもの。人に好かれる者がいれば、必ず憎み妬む者もいます。あなたは直言を好むので、曲がった者はそれを憎み、いずれ禍があなたの身に及びます」と戒めていた。
- 伯宗は聞き入れず、ある日朝廷から喜色満面で帰ってきた。妻が理由を尋ねると、伯宗は「私が朝廷で述べたことに、大夫たちはみな私を陽子に似ていると評した」と答えた。
- 妻は「実った穀物は花を咲かせず、至言は飾らないものです。今の陽子は華やかで実がなく、口先だけで謀がなかったために禍がその身に及んだのです。あなたはなぜそれを喜ぶのですか」と諫めた。
- 伯宗は「大夫たちを招いて酒宴を開き、語り合いたい。お前も聞いてみよ」と言い、大宴会を催した。宴のあと妻に感想を尋ねると、妻は「どの大夫もあなたに及びません。しかし民が上に立つ者を敬わなくなって久しく、いずれ難があなたに及ぶでしょう。あなたの性分は変えられないものですし、国内も分裂が多く、危機はもう間近です。賢い大夫とあらかじめ縁を結び、州犁を託しておいてはどうですか」と勧めた。
- 伯宗はこれに従い、畢羊と交わりを結んだ。のちに欒不忌の難で、三郤が伯宗を害しようと讒言して殺した。畢羊は州犁を荊(楚)へ送り届け、難を逃れさせた。君子は「伯宗の妻は天の道理を知る者であった」と評した。
史論
- 『詩経』に「事を大げさに構えすぎれば、もはや救いようがない」とあるが、伯宗のことを言っているのである。
- 頌に曰く、伯宗は人を圧するのを好み、妻はその滅びを予見して、幾度も伯宗を諫め、畢羊に厚く託し、州犁の世話を頼んで禍を免れさせた。伯宗自身は禍に遭ったが、州犁は荊へ逃れることができた、という。