南北史演義第九十三回 端門街で戯を陳べ番夷に示し、観瀾亭で詩を献じ鬼魅に逢う (端門街陳戲示番夷 觀瀾亭獻詩逢鬼魅)

高昌王朝貢と帰途の艱難

  • 高昌王曲伯雅らが朝貢し、盛大な宴が催される。帰路、大鬥拔谷の険路で暴風雪に遭い、驢馬や兵卒が多数死に、後宮の妃嬪も軍士と雑居するほどの惨状となる。

矮民王義の宦官化

  • 道州から献上された矮身の男・王義は口が達者で煬帝に気に入られ側近となるが、「宮中に入れないのが惜しい」との一言を真に受け、自ら去勢して宮中に上がる。

斉王暕の失脚と盗賊の蜂起

  • 大業六年、都で盗賊が「弥勒仏」を称して蜂起するが煬帝の次子・斉王暕がこれを鎮圧。しかし暕は素行が悪く(妃の姉との密通、厭勝の術による立太子工作が発覚)、韋氏は死を賜り、暕は寵愛を失い儲位につけなくなる。

端門街の百戯と外国人歓待

  • 諸国の使者が集まった機に、煬帝は端門街に大掛かりな仮設劇場・宴席を設け、外国人には飲食を無料で提供させるなど、富強を誇示するための空前の饗応を行う。外国人からは「国内に貧民もいるのになぜ配らないのか」と皮肉られる。

寵臣たちと薛道衡の誅殺

  • 裴矩・宇文述・虞世基・裴蘊・郭衍らの佞臣が寵を得る一方、薛道衡は「高祖頌」を献じて煬帝の忌避に触れ、裴蘊の弾劾により絞殺される。天下はこれを冤罪と見なした。
  • 張衡も讒言により官を追われ、牛弘は温厚な人柄のまま天寿を全うする(弟の粗暴を咎めない逸話が挿入される)。

後宮の乱倫と「望江南」八闋

  • 顕仁宮と芳華苑(西苑)を往来し、煬帝は十六院の夫人や美女たちと連日宴楽にふける。僧尼道士まで宴席に混じるなど秩序を失った様が描かれる。
  • 湖上の八景を詠んだ「望江南」八闋(月・柳・雪・草・花・女・酒・水)が作られ、宮女に歌わせて興じる。

観瀾亭での陳後主の幽霊

  • 北海に舟遊びした夜、煬帝は観瀾亭で陳後主(陳叔寶)の亡霊に遭遇する。陳後主は運河開削による民の苦しみを詠んだ詩を献じ、皮肉を交えて「呉公台下で再会しよう」と言い残して消える。舟には張麗華とおぼしき美女の姿もあったが、いずれも幻と分かり、煬帝は冷や汗をかく。朱貴児の慰めでようやく安堵する。

玉李と楊梅の兆し

  • 妃の李慶兒が「李の花畑が火に包まれる」悪夢を見た直後、酸棗県献上の玉李が異常繁茂し、続いて楊梅も茂るが、味では玉李に劣ると評される。作者はこれを不吉な予兆と示唆する。

評語

  • 端門街の大盤振る舞いは、外夷を懐柔しようとする空虚な虚勢に過ぎず、国力を消耗させるだけであった。外国人にすら国内の貧困を見透かされている。観瀾亭の陳後主譚は正史にはないが、韓偓『海山記』に基づく逸話であり、煬帝の運の傾きを暗示するものである。