明史演義第七十六回 鎮城に拠り哱氏乱を倡う/説客を用い叛党駢誅さる (據鎮城哱氏倡亂 用說客叛黨駢誅)
順義王家と三娘子
- 韃靼の俺答は順義王として朝貢を続けたが万暦九年に病没し、子の黄台吉が跡を継ぎ、仏教を信じ略奪を禁じて塞外は平穏だった。
- 総督呉兌は三娘子(俺答未亡人)と親密な関係を保ち、辺境の安定に努める。
- 黄台吉は多くの妾を持ちながら三娘子を欲しがり、総督鄭洛の説得もあって三娘子は黄台吉と再婚するが、四年後に黄台吉も病没。
- 黄台吉の子・扯力克が継ぎ、把漢那吉の遺妻を巡る争いから三娘子と不和になるが、鄭洛の仲介で三娘子は扯力克と再々婚し、忠順夫人に封じられる。三娘子は三代にわたり辺境の安定に貢献した。
哱拝父子の台頭と乱の勃発
- 韃靼出身の哱拝は明に降り都指揮まで昇進、子の承恩が跡を継ぐ。承恩は勇猛だが巡撫党馨と折り合いが悪く、私婚を理由に杖罰を受け恨みを抱く。
- 部下の劉東暘・許朝らも待遇に不満を募らせ、哱拝の煽りを受けて挙兵し、巡撫党馨・副使石継芳を殺害、総兵張維忠は自害に追い込まれる。
- 東暘は自ら総兵を称し、哱拝を謀主、承恩・許朝を副将として反乱軍を組織、寧夏各地を攻略する。
官軍の反攻
- 平鹵城では総兵蕭如薫と妻楊氏が籠城し、娘子軍まで組織して防戦、落城を防ぐ。
- 総督魏学曾は各将を派遣して漢西の諸堡を回復するが、寧夏鎮城は反乱軍の手に残る。
- 河套部の首長・著力兔が援軍を送るが、蕭如薫の伏兵計略により哱雲が戦死、著力兔は退却する。
- 朝廷は蕭如薫を総兵に昇進させ、麻貴を副総兵に、魏学曾に尚方剣を与えて討伐を督励する。
攻城戦
- 御史梅国楨の推挙で李如松が総兵となり監軍に梅国楨がつく。
- 巡撫朱正色・葉夢熊も合流し、黄河の堤を決壊させて城を水攻めにする。
- 許朝は偽って降伏を申し出るが実は緩兵策で、河套の残党が再侵攻するも各所で撃退される。
- 葉夢熊が督師を引き継ぎ、先登の将に賞金をかけ、城壁が崩れると李如松・蕭如薫・老将牛秉忠らが激戦の末に南関を陥落させる。
説客李登の内応工作
- 監軍梅国楨は街で歌を歌う油売りの李登という人物を見出し、密書を託して城内に潜入させる。
- 李登は承恩に哱氏一族の殺害と投降を勧め、劉東暘・許朝にも同様に説き、両者とも心を動かされる。
反乱の終結
- 承恩は東暘の変心を知り、部下の周国柱と謀って許朝・東暘を殺害し、その首級を城壁に掲げて投降する。
- 李如松・蕭如薫らが入城し安民を布告、寧夏巡撫の関防や征西将軍印を接収する。
- 哱拝は自宅で自ら首を吊り、火を放って一族もろとも焼死。承寵・哱洪大ら残党は捕らえられる。
- 慶王世子朱帥鋅(哱拝の乱で母妃と共に窖に隠れ危うく難を逃れていた)の襲封が認められる。
- 神宗は哱承恩・承寵・哱洪大らを磔刑に処し、葉夢熊・朱正色・梅国楨らに恩賞、蕭如薫・楊氏夫妻にも旌表を与えた。魏学曾は致仕。寧夏の乱は平定される。
朝鮮への戦禍の予兆
- 寧夏平定と入れ替わりに、朝鮮が倭寇に蹂躙され、国王李昖が急遽明に援軍を求めてきた。
(詩:西の辺境がようやく平定された矢先に、東の朝鮮でまた戦乱が起きた、との趣旨。)