明史卷三十七 志第十三 厯七
囬回厯法の由来
- 囬回厯法一。回回厯は西域の黙狄納國の王・馬哈麻の作である。その地は北極の高さ二十四度半、経度は西に一百○七度偏し、およそ雲南の西八千余里にあたる。その厯元は隋の開皇己未(599年)を用いる。すなわち建国の年である。
- 洪武の初め、元の都でその書を得た。洪武十五年(1382年)の秋、太祖は「西域の天象の推測は最も精しく、その五星の緯度はまた中国にないものだ」と言い、翰林の李翀・吳伯宗に命じ、回回大師の馬沙亦黒らとともにその書を訳させた。
- その法は閏月を用いず、三百六十五日を一歳とする。一歳は十二宫、宫に閏日があり、およそ百二十八年で宫の閏が三十一日になる。三百五十四日を一周とし、一周は十二月、月に閏日があり、およそ三十年で月の閏が十一日になる。千九百四十一年を経て宫・月・日辰がふたたび会する。これがその立法のあらましである。
- 史書に見える西域の厯術は、唐には九執厯があり、元には札馬魯丁の萬年厯があった。九執厯は最も粗く、萬年厯は行われた期間が長くなかった。ただ回回厯だけは科を設けて欽天監に属させ、大統厯と併せ用いること二百七十余年に及んだ。交食の有無・深浅について時に食い違いはあったものの、九執・萬年よりははるかに勝っていた。
- ただしその書には脱誤が多い。台官に籍を置く回回の人々は、おおむね土盤で計算し、なお本国の書を用いていた。また明でその術を習った唐順之・陳壤・袁黄らの論著は、それぞれ一家の言をなしていた。そのため翻訳された本は世に行われず、残欠が生じたのも当然である。今、専門の家系の者を広く訪ね、その原書を考究して脱落を補い訛舛を正し、回回厯法として本篇に著す。
積年
- 西域の阿喇必年(隋の開皇己未、599年)から起こし、下って洪武甲子(洪武十七年、1384年)まで七百八十六年である。
用數
- 天周度は三百六十(毎度は六十分、毎分は六十秒。微・纖以下もすべてこれに準ずる)。
- 宫は十二(毎宫三十度)。
- 日周分は一千四百四十。
- 時は二十四(毎時六十分)。
- 刻は九十六(毎刻十五分)。
- 宫度は白羊から起こし、節氣は春分を首とし、時は午正から起こす(午初四刻は前日に属する)。
七曜數
- 日が一、月が二、火が三、水が四、木が五、金が六、土が七(七曜で日を数え、甲子を用いない)。
宫數
- 白羊が初、金牛が一、隂陽が二、巨蟹が三、獅子が四、雙女が五、天秤が六、天蝎が七、人馬が八、磨羯が九、寳瓶が十、雙魚が十一。
宫日
- 白羊は戍宫で三十一日、金牛は酉宫で三十一日、隂陽は申宫で三十一日、巨蟹は未宫で三十二日、獅子は午宫で三十一日、雙女は巳宫で三十一日、天秤は辰宫で三十日、天蝎は卯宫で三十日、人馬は寅宫で二十九日、磨羯は丒宫で二十九日、寳瓶は子宫で三十日、雙魚は亥宫で三十日。
- 以上の十二宫がいわゆる「不動の月」である。あわせて三百六十五日、これが歳周の日数である。宫分に閏のある年に当たれば雙魚宫に一日を加え、あわせて三百六十六日となる。
月分の大小
- 単月は大、双月は小である。十二の月がいわゆる「動の月」である。月大は三十日、月小は二十九日、あわせて三百五十四日、これが十二月の日数である。月分に閏のある年に当たれば第十二月に一日を増し、あわせて三百五十五日となる。
太陽・五星の最髙行度(隋の己未に測定)
- 太陽は二宫二十九度二十一分。
- 土星は八宫十四度四十八分。
- 木星は六宫初度八分。
- 火星は四宫十五度四分。
- 金星は二宫十七度六分。
- 水星は七宫六度十七分。
閏日と加次の求め方
- 宫分の閏日(炁の餘日)を求める。西域の歳前積年から一を減じ、一百五十九を乗じる(百二十八年のうちに閏三十一日があるので総数を乗じるのである)。これに一十五(閏應)を加え、一百二十八で繰り返し減じる。満たない余りが九十七以上(閏限)であれば、その年の宫分に閏日があり、以下であれば閏日はない。割って得た数に五を加え(宫分の立成は火三から起こすので五を加える必要がある)、七に満ちれば引き去り、余りが求める年の白羊宫一日の七曜である(閏があれば一日を加える。以下同じ)。
- 月分の閏日(朔の餘日)を求める。西域の歳前積年から一を減じ、一百三十一を乗じる(総数を乗じる)。これに一百九十四(閏應)を加え、三十を法として繰り返し減じる。余りが十九以上(閏限)であれば、その年の月分に閏日があり、以下であればない。割って得た数を七に満ちれば引き去り、余りが求める年の第一月一日の七曜である。
- 加次の法。積日(全積に宫閏で得た数を併せたもの)から月閏を減じ、三百三十一日(己未の春正以前の日数)を加え、三百五十四(一年の日数)で割る。余りの数から先に加えた三百三十一を減じ、さらに二十三を減じ(一年の日数を満たすため)、さらに二十四を減じ(洪武甲子の加次)、さらに一を減じたもの(應を改めた際に損じた一日)を、実際の距年(己未から今に至るまで)の得数とする。
- 別法。氣積(宫閏と通閏とを併せたものが氣積である)から月閏を減じ(十一を置き距年を乗じ、外に十四を加え、三十で割って月閏の数を得る)、三百五十四で割り、余りから洪武の加次二十四を減じ、さらに補日二十三を減じ、さらに應を改めた損日一を減じて、前と同じ得数を得る(通閏を求めるには十一日を置いて距年を乗じる。宫閏を求める法は前に見える)。
太陽の行度
- 最髙總度を求める。西域の歳前積年について、総年・零年・月分・日期の立成表からそれぞれ前年・前月・前日の最高行度を取り、併せる(十年を求めるなら九年の分を取る類である。立成表の行度はいずれも本年・本月・本日までの足りた数なので、十年を求めるのに十年の分を取れば数を超えてしまう。月・日も同じ意味であり、以下これに倣う)。
- 最高行度を求める。求めた最髙總度に、測定した太陽の最髙行度(二宫二十九度二十一分)を加えれば、求める年の白羊宫の最髙行度である。次の宫を求めるには五秒六微ずつ順に加え、次の月を求めるには四秒五十六微を加える。
- 中心行度(日平行度)を求める。積年について総年・零年・月・日の立成表からそれぞれ日の中心行度を取り、併せ(取り方は前と同じ)、一分四秒を減じれば、求める白羊宫第一日の中心行度である。各宫・各月・各日を求めるには毎日の行度(五十九分八秒)を順に加える(一分四秒を減じるのは、西域と中国との里差によるという説があるが誤りである。これは己未年の宫分の末日の度に応じたものである)。
- 自行度を求める。その日の中心行度からその宫の最髙行度を減じれば得られる(すなわち入盈縮厯度である)。
- 加減差(すなわち盈縮差)を求める。自行の宫度を引数として太陽加減立成表に入り、引数の宫度に照らして加減差を取る(これを未定差という)。その度の下の小餘は比例法を用いる。すなわち本度の加減差と次の度の加減差とを引き合わせ、余りを秒に通じ(一分を加えて六十秒に通じる)、引数の小餘(これも秒に通じる)と乗じ、得た数を纖とする(秒に秒を乗じれば纖になる)。六十で収めて微とし、秒とし、分とする(数が多ければまず六十で収めて微とし、また六十で収めて秒とし、また六十で収めて分とする)。先に得た未定加減差の数が後の数(次の度の加減差)より少なければ加え、多ければ減じる。これが加減定差の分である(小餘がなければそのまま未定差を定差として用いる。以下これに準ずる)。
- 經度(黄道度)を求める。その日の中心行度に加減定差の分を加減して得る(定差の引数である自行の宫度を見て、初宫から五宫までは減差、六宫から十一宫までは加差とする)。
- 七曜を求める。積年について立成表に入り、総年・零年・月・日の下の七曜数を取って併せ、七を繰り返し引き去った余りが、求める白羊宫一日の七曜である。次の宫を求めるにはそれぞれの宫の七曜数を加える。日ごとに求めるには一ずつ順に加え、七に満ちれば引き去る(太隂・五星・羅・計の七曜もみなこれに準ずる)。
太隂の行度
- 中心行度を求める。積年について立成表に入り、総年・零年・月・日の下の中心行度を取って併せ、得た数から一十四分を減じ(己未の應に転ずる分)、求める年の白羊宫一日の中心行度とする。日ごとに求めるには日行度(十三度一○三五)を順に加える。
- 加倍相離度(月体が小輪を行く度で、合朔の後□日[底本欠字]の相離である)を求める。積年について立成表に入り、総年・零年・月・日の下の加倍相離度を取って併せ、二十六分を減じれば、求める白羊宫一日の度である。日ごとに求めるには倍離の日行度(二十四度二二五三二二。これを半分にしたものが小輪の心が太陽を離れる数である)を順に加える。
- 本輪行度(すなわち月転度)を求める。積年について立成表に入り、総年・零年・月・日の下の本輪行度を取って併せ、一十四分を減じれば、求める白羊宫一日の度である。各日を求めるには本輪の日行度(十三度三分五四)を順に加える。
- 第一加減差(倍離差ともいう)を求める。加倍相離の宫度を引数として太隂第一加減立成表に入り、加減差(未定差)を取る。さらに下の差と引き合わせ、余りに引数の小餘を乗じて得た数を秒とし(分に分を乗じるゆえである)、六十で収めて分とし、未定差に加減して(後の差が多ければ加え少なければ減じるのは太陽と同じ)第一差分を得る。
- 本輪行定數を求める。その日の本輪行度に第一差分を加減する(倍離度を見て、前の六宫なら加え、後の六宫なら減じる)。
- 第二加減差を求める。本輪行定度を引数として太隂第二加減立成表に入り、未定差を取り、比例法により(前と同じ)零数を求めて加減し、第二加減差の分とする(引数を見て六宫より前は減差、後は加差とする)。
- 比敷分を求める。倍離の宫度によって第一加減立成表に入り、比敷分を取る。倍離の零分が三十分以上であれば下の度の比敷分を取る。
- 逺近度を求める。本輪行定の宫度を引数として太隂第二加減立成表に入り、逺近の度分を取る。引数の零分もまた比例法によって取る。
- 汎差・定差を求める。比敷分に逺近度を分に通じて乗じ、六十で約して分としたものが汎差である。汎差を第二加減差に加えたものが定差である。
- 經度を求める。その日の太隂中心行度に定差を加減すれば太隂の經度である(本輪行定度を見て六宫より前は減じ、後は加える)。
太隂の緯度
- 計都と月との相離度(入交定度)を求める。その日の太隂經度からその日の計都行度(すなわち羅・計の中心度)を減じれば、計都と月との相離の度分である。
- 緯を求める。計都と月との相離の宫度を引数として太隂緯度立成表に入り(上の宫は右行の順度を用い、下の宫は左行の逆度を用いる)、その度分を取り、この例に依って零分を求めて加減し(上の六宫は加え、下の六宫は減じる)、緯の度分を得る(引数が六宫より前なら黄道の北、六宫より後なら黄道の南である)。
- 計都・羅㬋の行度を求める。積年について総年・零年・月・日の立成表に入り、羅計中心行度を取って併せ、その年の白羊宫一日の行度とする。各宫の一日を求めるには各宫の日行度を加え、十二宮と引き合わせた余りが求める宫の一日の計都行度である。計都の日ごとの細行を求めるには、前後二段の行度を引き合わせ、余りを相距日数で割って日差とし、前段の計都行度から日差を順次減じていく。羅㬋の行度を求めるには、その日の計都行度に六宫を加える。
五星の經度
- 最髙總度を求める。数は太陽と同じで、前の太陽の術によって求める。
- 最高行度を求める。求めるその星の最髙總度に、測定したその星の最高行度(前に見える)を加えたものが、その年の白羊宫の最髙行度である。各宫・各日を求めるには各宫の日行度を加える。
- 日の中心行度を求める。太陽の術によって求める。
- 自行度を求める。積年について立成表の総年・零年・月・日の下からそれぞれ自行度を取って併せ、その年の白羊宫一日の自行度を得る。土・木・金の三星は一分を減じ、水星は三分を減じ、火星は減じない。各宫・各日を求めるにはその星の自行度に照らして順次加える。水星は、自行度が三宫の初度に至れば五日を一段として計算し、九宫の初度に至れば十日を一段として計算する。緯度も同様である。
- 中心行度と小輪心度(すなわち入厯度、五星の本輪)を求める。土・木・火の三星は、太陽の中心行度からその星の自行度を減じて三星の中心行度とし、そこからさらに最髙行度を減じて三星の小輪心度とする。金・水の二星は、その中心行度がそのまま太陽の中心行度であり、そこからその星の最髙行度を減じた余りがその星の小輪心度である(引けない場合は十二宫を加えてから減じる)。
- 第一加減差(盈縮差)を求める。その小輪心の宫度を引数としてその星の第一加減立成表に入り、比例法によって求める(法は太陽・太隂と同じ)。
- 自行定度および小輪心定度を求める。第一加減差の引数が初宫から五宫にあるものは、加減差を自行度に加え、小輪心度から減じて、それぞれ定度とする。六宫から十一宫にあるものは、加減差を自行度から減じ、小輪心度に加えて、それぞれ定度とする。
- 第二加減差を求める。その星の自行定度によって、その星の第二加減立成表に入り、その度分を取って比例法によって加減する(前と同じ)。
- 比敷分を求める。土・木・金・水の星は、その星の小輪心定の宫度によって第一加減立成表に入り、比敷分を取る。引数の小餘が三十分以上であれば後行の比敷分を取る。火星は必ず比例法で求める。
- 逺近度を求める。自行定の宫度によって第二加減立成表に入り、逺近度を取り、比例法によって求める。
- 汎差・定差を求める。法は太隂と同じ。
- 經度を求める。小輪心定度に定差を加減し(引数である自行定度が六宫より前なら加え、後なら減じる)、その星の最髙行度を加える。
- 留段を求める。その留段の小輪心定の宫度を引数とし(すなわち立成表の各星の入厯定限である)、五星順退留立成表に入り、同じ宫の近い度でその星の度分を取り、前後の行と引き合わせる(取ったものが初宫から六宫にあれば本行と後行とを引き合わせ、六宫から初宫であれば本行と前行とを引き合わせる)。また引数の宫度を立成表の同宫の近い度から減じ、二つの引き算の余りを分に通じて乗じ、六度で割り(立成表は六度おきである)、六十分で収める。順なら加え逆なら減じて、先に取った度分に及ぼす。得た数がその日の自行定度と同じであれば、その日が留である。自行定度のほうが多ければすでに留の日を過ぎており、少なければまだ留の日に至っていない。細率を得たければ、得た数とその日の自行定度とを引き合わせ、余りを各星の一日の自行度で割る(土星の留は一日の自行が五十七分あまりである、という類)。これで留の日が本日の前後いくつにあたるかが得られる。(土星は留が七日で、その留日の前三日・後三日はみな留日の数と同じである。木星は留が五日で、その留日の前二日・後二日は留日の数と同じである。火・金・水の三星は留せずに退き、また徐々に退く。ただ行分の極めて少ないところをもって留とするだけである。)
- 細行分を求める。土・木・金・火の四星は、前後二段の經度を引き合わせ、相距日で割って日行分とする。水星は、白羊宫初日の經度を前一日の經度と引き合わせ、余りを初日行分とする。また前後二段の經度を引き合わせた余りを相距日で割って平行分とし、初日行分と加減して倍し、前段の前一日と後段との相距日数で割って日差とし、初日行分に加減して(初日の行分が平行分より少なければ加え、多ければ減じる)日行分とする。五星それぞれ、前段の經度に日ごとの行分を、順なら加え退なら減じて、各星の日ごとの經度とする。
- 伏見を求める。各星の自行定度が伏見立成表の限度以上であれば、それが五星の晨・夕の伏見である。
五星の緯度
- 最髙總行度・中心行度・自行度・小輪心度は、いずれも五星經度の術によって求める。
- 自行定度を求める。自行の宫・度・分を置き、宫は十を乗じて度とし(一宫に十を乗じて十度を得る。これは約法を用いた折算で、緯度立成表を作るためのものである)、度は二十を乗じて分とし、六十に満ちれば約して度とし、分もまた二十を乗じて秒とし、六十に満ちれば約して分とする。これらを併せれば得られる。
- 小輪心定度を求める。小輪心の宫・度・分を置き、宫は五を乗じて度とし(一宫に五を乗じて五度を得るごとし)、度は十を乗じて分とし、六十に満ちれば約して度とし、分もまた十を乗じて秒とし、六十に満ちれば約して分とする。これらを併せれば得られる。
- 緯度を求める。小輪心定度と自行定度とによって、その星の緯度立成表に入り、縦・横の二方から数を取る。得た数を後行と引き合わせる(黄道と交わる場合は後行と併せる)。また小輪心定度を立成表の上の小輪心定度と引き合わせ(上の横行)、二つの引き算の余りを乗じ、立成表の上の小輪心度の累加数で割り(土星の上の横行は小輪心度が三度おき、火星は二度おき、という類)、六十に満ちれば収めて分とし、二方から取った数に加減して(後行より多ければ減じ、少なければ加える。黄道と交わる場合は後行の数が多くても減じる)左に寄せておく。次に自行定度を立成表の上の自行定度と引き合わせ(首の直行)、また二方から取った数を下行と引き合わせ(黄道と交わる場合は下行と併せる)、二つの引き算の余りを乗じ、立成表の上の自行度の累加数で割り(土星の直行は自行度が十度おき、火星は四度おき、という類)、収めて分とし、先に左へ寄せた数と加減する(二方から取った数が下行より多ければ減じ、少なければ加える。黄道と交わる場合、得た分が寄せておいた数より多ければ、得た分から寄せておいた数を減じ、余りが黄道を越えた南北の分である)。こうして黄道の南北の緯定分が得られる。
- 緯度の細行分を求める。その星の前段の緯度と後段の緯度とを引き合わせ、余りを相距日で割って日差とする。前段の緯度に日差を、順なら加え退なら減じて、日ごとの緯度分とする(按ずるに、緯度は前段が後段より少ない場合に日差を順に加え退に減じるのであって、前段が後段より多い場合は日差を順に減じ退に加えるべきで、一様には扱えない)。前後の段で南北が異なる場合は、その星の前後の段の緯度を併せ、相距日で割って日差とする。前段の緯度から日差を順次減じ、引けなくなったところで日差からその残りを減じ、余りに日差を順次加えていけば、日ごとの緯度が得られる。
日食の推算法
- 日食の諸数は、午前の合朔なら前一日の数で推し、午後の合朔なら次日の数で推す。
- 日食の限を判別する。合朔の太隂緯度が黄道の南四十五分以下、黄道の北九十分以下であれば食がある。もし合朔が昼であれば食のすべてが見える。合朔が日の出前三時、および日がすでに八十五分(一時の四分の一)を過ぎたところであれば、いずれも帶食となる。合朔が夜の刻にあたる場合は計算しない。
- 食甚の汎時(すなわち合朔)を求める。午正に太隂が太陽を行き過ぎた度(求法は後の月食の「太隂が時ごとに太陽を行き過ぎる分」に見える)を秒に通じ、二十四を乗じて實とする。太隂の日行度から太陽の日行度を減じて秒に通じ、これを法として實を割って時とする。時の下の零数は六十を乗じて分とし、分の下の零数は六十を乗じて秒とする。三十秒以上は収めて一分とし、六十分は収めて一時とする。あわせて食甚の汎時である。
- 合朔の太陽經度を求める。食甚の汎時を分に通じ、太陽の日行度を秒に通じて乗じ、二十四で割って微とし、六十に満ちれば約して秒とし分とする。これを午正の太陽度に加減して(午前の合朔なら減じ、午後なら加える)、合朔時の太陽經度を得る(すなわち食甚の日躔黄道度である)。
- 加減分を求める。合朔時の太陽の宫度によって晝夜加減立成表に入り、加減分を取って比例法によって求める。
- 子正から合朔までの時分秒を求める。食甚の汎時に加減分を加減し(午前の合朔なら減じ、午後なら加える)、十二時を加減すれば(午前の合朔なら十二時から減じ、午後なら十二時に加える)、子正から合朔までの時分秒である(按ずるに、時を子正から起こすのは、その術を変えて大統厯に合わせたもので、本来の法ではない)。
- 第一東西差(經差)を求める。合朔時の太陽の宫が立成表(經緯時加減立成)の右七宫にあれば上行の時を取り(順行)、左七宫にあれば下行の時を取る(逆行)。子正から合朔までの時によって經差を取り、比例法によって求め(時の下の小餘だけを用いて求める。以下同じ)、第一東西差とする。
- 第二東西差を求める。合朔時の太陽の宫を立成表で見て(上と同じ)、次の宫の子正から合朔までの經差を取り、比例法によって求め、第二東西差とする。
- 第一南北差(緯差)を求める。合朔時の太陽の宫と子正から合朔までの時とによって立成表に入り(上と同じ)、緯差を取って比例法によって求め、第一南北差とする。
- 第二南北差を求める。合朔の太陽の宫について次の宫を取り、子正から合朔までの緯差を比例法によって求め、第二南北差とする。
- 第一時差を求める。合朔の太陽の宫と子正から合朔までの時とによって立成表に入り、時差を取って比例法によって求める。
- 第二時差を求める。合朔の太陽の宫について次の宫を取り、子正から合朔までの時差を比例法によって求める。
- 合朔時の東西差を求める。第一東西差と第二東西差とを引き合わせ、余りを秒に通じ、合朔時の太陽の度分(これも秒に通じる)を乗じ、三十度で割って纎とし、六十で収めて微・秒・分とし、第一東西差に加減して(第一東西差の数が第二差より少なければ加え、多ければ減じる。以下同じ)合朔時の東西差とする。
- 合朔時の南北差を求める。第一南北差と第二南北差とを引き合わせ、余りを秒に通じ、太陽の度分を乗じ、三十で割って纖とし、率に従って収めて微・秒・分とし、第一南北差に加減して合朔時の南北差とする。
- 合朔の時差を求める。第一・第二の両時差を引き合わせ、太陽の度分を乗じ、三十で割り、率に従って収め、第一時差に加減して合朔の時差とする。
- 合朔時の本輪行度を求める。本輪の日行度(一十三度四分)を分に通じ、食甚の汎時(これも分に通じる)を乗じ、二十四で割って秒とし、率に従って収めて分とし度とし、午正の本輪行度に加減して(午前なら減じ、午後なら加える)、合朔時の行度とする。
- 比敷分を求める。本輪行度によって立成表(太陽・太隂の晝夜時行および景徑分の立成)に入り、同じ宫の近い度の太隂比敷分を取り、比例法によって求める。
- 東西定差を求める。合朔時の東西差を秒に通じ、比敷分を秒に通じて乗じ、纖とし、六十で収めて微・秒・分とし、合朔の東西差に加えて(加えるだけで減じることはない)定差とする。
- 南北定差を求める。法は東西定差と同じ。
- 食甚の定時(すなわち食甚定分)を求める。その日の合朔時の太陽度が立成表(經緯時加減立成)の左七宫にあれば、その時差は黒字なら減じ白字なら加える。右七宫にあれば白字なら減じ黒字なら加える。いずれも子正から合朔までの時に加減し、得た数を子正から起算して減じ、何時の初・正かを得る。余りを秒に通じ、一千を乗じ、一百四十四で割り(六十分が一時、毎日一千四百四十分であるから、千を乗じてまた一四四で割るのである)、六十で約し、百に満ちれば刻とする。これが食甚の定時である。
- 食甚の太隂經度を求める。合朔の太陽經度に東西定差を加減すれば、食甚の太隂經度が得られる(その加減は食甚定時の時差の加減に従う)。
- 合朔の計都度を求める。食甚の汎時を分に通じ、計都の日行度(三分一十一秒)を秒に通じて乗じ、二十四で割って微とし、六十に満ちれば収めて秒とし分とし、その日の午時の計都行度に加減して(羅・計は逆行するので、午前の合朔なら加え、午後なら減じる)、合朔時の計都度とする。
- 合朔の太隂緯度を求める。食甚時の太隂經度に合朔時の計都度を加減し、余りを計都と月との相離度として太隂經度立成表に入って取る。
- 食甚の太隂緯度を求める。南北定差に合朔時の太隂緯度を加減し(黄道の南なら加え、北なら減じる)、食甚の緯度を得る。
- 合朔時の太陽自行度を求める。太陽の日行度(五十九分八秒)を秒に通じ、食甚の汎時(これも分に通じる)を乗じ、二十四で割って得た数を微とし、六十に満ちれば収めて秒とし分とし、その日の午正の自行度に加減して(午前の合朔なら減じ、午後なら加える)、合朔の自行度を得る。
- 太陽の徑分を求める。合朔の太陽自行度を引数として立成表(影徑分立成)に入り、同じ宫の近い度で太陽の徑分を取り、比例法によって求める。
- 太隂の徑分を求める。合朔時の本輪行度を引数として立成表(上と同じ)に入り、同じ宫の近い度で太隂の徑分を取り、比例法によって求める。
- 二半徑分を求める。太陽・太隂の両徑分を併せて半分にする。
- 太陽の食限分を求める。二半徑分から食甚の太隂緯度を減じた余りが太陽の食限である(引けなければ食はない。太隂に緯度がなければ皆既となる。太隂に緯度がなく、かつ日の徑が月の徑より大きければ金環食となる)。
- 太陽の食甚定分を求める。太陽の食限分を秒に通じ、一千を乗じて實とし、太陽の徑分を秒に通じたものを法として割り、百で約して分とし、太陽の食甚定分とする。
- 時差(すなわち定用分)を求める。食甚の太隂緯度を秒に通じて自乗し、二半徑分もまた秒に通じて自乗し、二つの自乗数を引き合わせ、余りを平方に開き、二十四を乗じて實とする。その日の太隂の日行度から太陽の日行度を減じ、分に通じたものを法とし、實を法で割って得た数を分とし、六十分に満ちれば一時として、時差とする。
- 初虧を求める。食甚定時から時差を減じ、余りの時を子正から起算して減じ、初・正の時を得る。余りの分を秒に通じ、一千を乗じ、一百四十四で割り、六十で約し、百に満ちれば刻として、初虧の時刻とする。
- 復圓を求める。食甚定時に時差を加え、子正から起算して初虧の法のようにすれば、復圓の時刻を得る。
- 初虧・食甚・復圓の方位を求める。大統厯の法と同じである。
月食の推算法
- 月・日の諸数は、午前の望なら前一日で推し、午後の望なら次の一日で推す。
- 月食の限を判別する。望の日の太隂經度が羅㬋または計都の度と一十三度以内に離れており、太隂緯度が一度八分以下であれば食がある。また合望が太隂の出る前二時・入る前二時にあたる場合はその限りで帶食となる。二時以上であれば計算しない。
- 食甚の汎時(すなわち經望)を求める。その日の太隂經度から六宫を減じ(引けない場合は十二宫を加えて減じる)、それをその日の午正の太陽度から減じたものを午前の望とする(太陽度が引けない場合は六宫を加えて減じ、午後の望とする)。引き合わせた余りの数を秒に通じ、二十四を乗じて實とする。その日の太隂經度から前一日の太隂經度を減じ(午後の望であれば後一日の太隂經度を減じる)、余りを太隂の日行度とする。またその日の午正の太陽度から前一日の午正の太陽度を減じ(午後の望であれば後一日の太陽度を減じる)、余りを太陽の日行度とする。両者の日行度を引き合わせ、余りを秒に通じて法とし、實を割って得た数を時とする。時の下の余りの数は六十を乗じて分・秒とすれば、求める食甚の汎時である。
- 食甚の月離黄道の宫度を求める。食甚の汎時と太陽の日行度とをともに秒に通じて乗じ、二十四で割って得た数を□(底本欠字)とし、六十に満ちれば収めて微・秒・分とし、その日の午正の太陽度に加減して(午前の望なら減じ、午後の望なら加える)望時の太陽度とし、六宫を加えれば求めるものが得られる。
- 晝夜加減差を求める。望時の太陽の宫度を引数として晝夜加減立成表に入り、加減分を取って比例法によって求める。
- 食甚の定時を求める。食甚の汎時に晝夜加減差を加減し(午前の望なら減じ、午後の望なら加える)、得た数に一十二時を加減し(午後の望なら十二時を加え、午前の望なら十二時と引き合わせる)、子正から起算して初・正の時を得る。その小餘は法に従って収めて刻とし(法は日食に詳しい)、定時を得る。
- 望時の計都度を求める。食甚の汎時を秒に通じて實とし、計都の日行度(三分一十一秒)を秒に通じて乗じ、二十四で割って得た数を□(底本欠字)とし、六十で収めて微・秒・分とし、その日の午正の計都行度に加減すれば(羅・計は逆行するので、午前の望なら加え、午後の望なら減じる)得られる。
- 望時の太隂緯度を求める。食甚の月離黄道度から望時の計都度を減じ(引けない場合は十二宫を加えて減じる)、余りを計都と月との相離度として太隂緯度立成表に入って取る。
- 望時の本輪行度(すなわち入遲疾厯)を求める。太隂の本輪の日行度(十三度四分)を分に通じ、食甚の汎時を秒に通じて乗じ、二十四で割って微とし、六十で収めて秒・分・度とし、その日の午正の本輪行度に加減すれば(午前の望なら減じ、午後なら加える)得られる。
- 太隂の徑分を求める。望時の本輪行の宫度によって影徑分立成表に入って求める(法は日食に詳しい)。
- 太隂の影徑分を求める。望時の本輪行の宫度によって影徑分立成表に入って取る。
- 望時の太陽自行度を求める。太陽の日行度(五十九分八秒)と食甚の汎時とをともに秒に通じて乗じ、二十四で割って得た数を□(底本欠字)とし、六十に満ちれば収めて微・秒・分とし、その日の午正の太陽自行度に加減する(法は日食の太陽經度を求める法と同じ)。
- 影徑の減差を求める。その日の太陽自行の宫度を引数として影徑立成表に入り、同じ宫の近い度で太隂の影徑差分を取り、比例法によって求める(法は前に詳しい)。
- 影徑の定分を求める。太隂の影徑分から影徑の減差分を減じる。
- 二半徑分を求める。太隂の徑分に影徑の定分を加え、半分にする。
- 太隂の食限を求める。二半徑分から望時の太隂緯度を減じる(引けなければ食はない)。
- 食甚の定分を求める。食限の分を秒に通じ、一千を乗じて實とし、太隂の徑分を秒に通じたものを法として割り、百で約して分とし、食甚の定分とする。
- 太隂が時ごとに太陽を行き過ぎる分を求める。太隂の望時の經度から前一日の太隂經度を減じ、また望時の太陽自行度から前一日の太陽自行度を減じ、二つの余りを引き合わせて太隂が昼夜に太陽を行き過ぎる度とする。秒に通じ、二十四で割り、六十に満ちれば収めて、時ごとに太陽を行き過ぎる分を得る。
- 時差を求める。太隂の緯度分を秒に通じて自乗し、また二半徑分を秒に通じて自乗し、両数を引き合わせ、余りを平方に開いて實とし、太隂が太陽を行き過ぎる度を秒に通じたものを法として割る。得た数が時差である(すなわち初虧から食甚までの定用分である)。
- 初虧・復圓の時刻を求める。時差を食甚定時から減じれば初虧の時刻、食甚定時に加えれば復圓の時刻である。時を命じ刻に収める法はいずれも日食と同じ。
- 食既から食甚までの時差を求める。二半徑分から太隂の徑分を減じ、秒に通じて自乗し、また太隂の緯度も秒に通じて自乗し、引き合わせて平方に開いて實とし、太隂が時ごとに太陽を行き過ぎる度を秒に通じたものを法として割る。得た数が時差である。
- 食既・生光の時刻を求める。食既から食甚までの時差を食甚定時から減じれば食既の時刻、食甚定時に加えれば生光の時刻である。
- 初虧・食甚・復圓の方位を求める。大統厯の時と同じである。
- 日の出入りの時を求める。午正の太陽經度を引数として西堿の晝夜時立成表に入り、その度分を取って比例法によって求め、未定分とする。また引数と相対する宫度でその度分を取り(初宫三度なら六宫三度に向かって取るごとし)、これも比例法によって求めて後の未定分とする。二つの未定分を引き合わせ(引けない場合は三百六十度を加えて減じる)、余りを秒に通じ、十五で割り、六十で収めて分とし時として、その日の食時の分秒を得る。これを半分にしてその日の半晝の時分秒とする。半晝の時分秒を十二時から減じた余りが日の出の時分秒、十二時に加えたものが日の入りの時分秒である。
- 日月の出入りの帶食分秒を求める。その日の日出の時分秒と日入の時分秒とを見て、初虧の時分秒より多く、食甚の定時および復圓の時分秒より少なければ、帶食がある。その日の日出時または日入時と、日甚の定時分秒とを引き合わせ、余りを帶食差とする。日食・月食の食甚定分に帶食差を秒に通じて乗じ、時差を秒に通じたもので割り、得た数を帶食分とする。食甚定分から帶食分を減じた余りが、日月の帶食で見えるところの分である。
- 月食の更㸃を求める。二十四時から晝時を減じ、さらに晨昏時を減じ(七十二分、すなわち中国の厯でいう五刻弱である)、余りを夜時とする。秒に通じ、五で約して更法とし、更法を五で分けて㸃法とする。食が子正より前にあるものは、初虧・食甚・復圓などの時から日入の時を減じ、さらに半晨昏の時(三十六分)を減じ、余りを秒に通じ、更法で減じて更数とし、更法に満たない分を㸃法で減じて㸃数とする。食が子正より後にあるものは、夜時を半分にし、初虧・食甚・復圓などの時のように更法で減じて更数とし、更法に満たない分を㸃法で減じて㸃数とする。いずれも初更・初㸃から起算する(更法で一度減じるごとに一更とし、その減じた余りが法に満たなくても、これも仮に一更と数える。㸃法もこれに倣う)。
太隂と五星の凌犯
- 太隂の晝夜行度を求める。本日の經度と次日の經度とを引き合わせた余りが、本日の晝夜行度である。
- 太隂の晨昏の刻度を求める。その日の午正の太隂經度に、立成表(太隂出入晨昏加減立成)のその日の昏刻の加差を加えれば、その日の太隂の昏刻の經度である。その次日の午正の太隂經度から、立成表のその日の晨刻の減差を減じれば、その日の太隂の晨刻の經度である。
- 月の出入りの度を求める。その日の午正の太隂經度に、立成表(すなわち前の立成表)のその日の月入の加差を加えれば、その日の月入時の太隂經度である。立成表のその日の月出の加差を加えれば、その日の月出時の太隂經度である。
- 太隂の犯すところの星座を求める。朔の後は昏刻の度から月入の度までを見、望の後は月出の度から晨刻の度までを見る。黄道の南北の各像の星の立成表に入り、經緯度が近く一度以下のものを取る。
- 時刻を求める。その日の午正の太隂經度と、取り出した各像の星の經度とを引き合わせ、分に通じ、二十四を乗じ、太隂の晝夜行度(これも分に通じる)で割って初・正の時を得る。その小餘は六十を乗じて分とし、一千を乗じ一百四十四で割り、百で約して刻とすれば、求める時刻が得られる。
- 上下の相離分を求める。太隂の緯度と犯される星の緯度とを引き合わせた余りが上下の相離分である。月と星がともに南にある場合、月のほうが多ければ下離、少なければ上離である。ともに北にある場合、月のほうが多ければ上離、少なければ下離である。南北が異なる場合は、月が北にあれば上離、南にあれば下離である。
- 各星が凌犯する五星の相離分を求める。その日の五星の經緯度によって黄道立成表に入り、各像の内外の星で經緯度が一度以下のものを取る。その五星の緯度と各星の緯度とを引き合わせた余りが上下の相離分である。
- 月が五星を犯し、五星が互いに犯す場合を求める。太隂の經緯度と五星の經緯度とを見て、近く一度以下のものを取る。