民國演義第五十二回 偽り交歓し妓を挟み宴に侑め、反目を仮り眷を遣り郷に還す (偽交歡挾妓侑宴 假反目遣眷還鄉)

小鳳仙の慧眼

蔡鍔は小鳳仙に本名を明かし、素性を隠さぬよう促されると、松坡の名を記す。小鳳仙は蔡鍔の正体を見抜きながらも、帝制推戴の風潮に乗じず、逆に彼を軽んじる素振りを見せ、曹操配下の華歆・荀彧のような佞臣にはなるなと突き放す。蔡鍔はその聡明さに感服し、以後たびたび通うようになる。

二人の心通わせ

再訪した際、小鳳仙は蔡鍔の内心の鬱屈を見抜いて涙を流し、蔡鍔もまた感じ入る。金銭で取り入ろうとする鴇母を退け、二人は身の上を語り合う。小鳳仙は不遇な出自と苦界に身を落とした経緯を語り、蔡鍔に誠意を誓う。蔡鍔は「時が来れば話す」と機を待つ姿勢を示した。

帝制派を招いての宴

翌日、蔡鍔は顧鼇・楊度・孫毓筠・胡瑛・阮忠樞・夏寿田、さらに梁士貽ら帝制派の面々を雲吉班に招き、小鳳仙との祝宴を開く。座興に楊度が呼んだ名妓・花元春も加わり、帝制推戴の話題で盛り上がるが、蔡鍔は調子を合わせつつ、内心は別のことを考えていた。小鳳仙は「男女・貴賎の別なく国を思う心は同じ」と気概を見せる。

偽装離婚劇

蔡鍔は自宅を購入して改修するなど派手な浪費を装い、袁の監視の目を欺こうとする。妻とは口裏を合わせた芝居で、表向きは離婚を主張し激しく夫婦喧嘩を演じる。王揖唐・朱啓鈐が仲裁に入るも、蔡鍔は頑なに離婚を主張し、妻は涙ながらに帰郷を望むふりをして荷物をまとめ、南下していった。これにより蔡鍔は家族を安全に脱出させることに成功した。

評語

本回は終始蔡鍔を描くための構成であり、小鳳仙もまた蔡鍔を引き立てる存在として描かれる。長年連れ添った妻にすら秘密を明かさなかった蔡鍔が、出会って間もない小鳳仙に心を開いたとは考えにくく、著者は小鳳仙を借りて蔡鍔の人物像を際立たせ、また推戴に群がる者たちへの風刺を託したものであろう。妻を帰郷させた顛末は虚構ではなく事実に基づくとされ、文と情のいずれが先かは読む者の判断に委ねられる。