民國演義第二十四回 借款を争い是を挑み非を翻し、改制を請い巧を弄し拙を成す (爭借款挑是翻非 請改制弄巧成拙)
借款咨文をめぐる紛糾
- 袁総統は署名済みの六国借款契約を、議決ではなく「備案(届出)」として参議院・衆議院に通知する。趙秉鈞・陸徴祥・周学熙連名の上申文には、財政窮迫のやむを得ぬ事情と、前年末に参議院で大綱が一応表決済みである旨が述べられている。
- 参議院は「未議決のまま署名した契約は無効」と即座に反発。衆議院でも質問が行われ、宋教仁事件と借款問題の両方で批判を浴びた趙秉鈞は総理を辞して天津へ去り、袁総統は陸軍総長・段祺瑞を代理総理に据える。
- 段祺瑞は財政の窮状を釈明するにとどまり、明確な弁明はしない。衆議院は投票の結果、二百十九対五十三の大差で借款を承認せず、契約の咨文を突き返す方針を決める。
- しかし政府寄りの統一党が金銭工作により共和党・民主党を懐柔し、三党は合流して「進歩党」を結成、借款容認へ傾く。国民党だけは最後まで抵抗するが、両院とも出席率が低迷し議事は停滞する。
- 各省都督・民政長の間でも賛否が割れ、浙江都督・朱瑞は「借款そのものより、今回の署名手続きの適法性が争点であり、議院内の問題は議院内で解決すべきだ」とする長文の電報を発し、事実上政府寄りの論陣を張る。国民党系の江西・李烈鈞、安徽・柏文蔚、広東・胡漢民らは違法性を強く指弾する。
- 最終的に国民党も妥協し、政府が改めて形だけ議案を提出する条件で借款を事実上黙認する形に落ち着き、参議院だけは最後まで承認を拒み続けるが、政府は意に介さず借款の受け取り・支出を続ける。
裘平治の勧進表騒動
- 湖北の商人・裘平治は、宋教仁事件や借款問題で世情が乱れる中、袁総統に「共和より帝政の方が国のためだ」とする勧進めいた上申文(連名者は捏造)を送りつけ、これを機に立身出世を企む。
- ところが袁総統は新聞紙上でこの上申を「喪心病狂か煽動の企てだ」と厳しく糾弾する布告を発し、湖北の民政長に裘の逮捕を命じる。
- 新聞でこれを知った裘平治は驚愕し、友人の勧めに従って慌てて逃亡する。結局捕まらず、政府側も本気で追及はしなかったが、裘は一時生きた心地がしなかったという。
評語
- 借款の違法署名は誰の目にも明らかな専断だったとし、進歩党の日和見と国民党の空しい抗議をともに批判する。朱瑞の電報は私心なしとは言えないが指摘には一理あるとする。裘平治の一件は、私欲から出た浅はかな企てが露見して自らを窮地に追い込んだ好例であり、功名に逸る者への戒めとして描かれていると評する。