洪秀全演義第五十三回 雷正琯密札もて銭江を訪ね、楊輔清兵を匿して慶瑞を破る (雷正琯密札訪錢江 楊輔清匿兵破慶瑞)

曾左の不和の芽生え

  • 左宗棠は李世賢を二十里追って引き返す。遅れて到着した張運蘭・曾国荃ら十路の将は、自分たちの援軍のおかげで勝てたのに左宗棠が手柄を独り占めしようとしていると不満を漏らす。
  • 左宗棠は曾国藩の幕僚郭意誠に、わずかな徴収権しか与えられなかったことへの不満を訴え、一方で自らの小勝を誇る。曾国藩もこれを聞いて左宗棠を快く思わなくなり、曾左の不和はここに始まった。

錢江を求める雷正琯

  • 太平天国の元軍師・錢江は身を隠して以来行方が知れない。かつて洪秀全に献じた「興王策」の文書は胡林翼の手に渡り、湖北で団練大臣を務める雷正琯がこれを読んで深く感嘆し、錢江を探し出して自分の下で用いたいと願うようになる。
  • 幕友王延慶は「錢江はいずれ捕まる不安から身を潜めているだけで、見つけ出せば必ず得られる」と助言。雷正琯は密かに人を放って捜索させるが、成果は上がらない。
  • 後に雷正琯は捻軍討伐のため河上へ移るが、錢江への執着は変わらず、罪を許し登用する旨の布告を出して人材を招く。

偽の錢江

  • 布告後、河沿いを放浪する道士風の男が現れ、寺院などに時勢を論じる詩を残して回り、「閒散道人」と署名する。周囲は彼を奇才ともてはやし、雷正琯の密偵も注目する。
  • 男は「自分を用いうるのは雷正琯だけだろう」とほのめかし、雷正琯は詩を取り寄せて読み、才気を感じて面会する。男は洪秀全軍にいたことをほのめかし、雷正琯は厚遇して重んじる。
  • しかし男は弁舌は立つが実務では役に立たず、糧秣の手配などで無策をさらけ出す。雷正琯は「これは錢江ではない」と見抜いて欺かれたことを悟り、後に別件を口実にこの男を処刑し、「錢江を討った」として報告した。

楊輔清の南征計画

  • 太平軍の前軍主将・輔王楊輔清は、清の糧道が閩・粤に頼っていることに着目し、福建を落として広州も攻めれば清軍の兵站を断てると考え、李秀成に浙・閩方面への出兵を提案する。
  • 李秀成は既に蘇州を平定し、清浦での洋兵との戦いにも勝利していた。楊輔清の提案に賛同し、李世賢に浙江・江西方面を委ね、楊輔清の南下を許可する。
  • 李秀成は「福州を落とした後は速やかに天京へ戻るように」と念を押し、楊輔清も同意する。

陳金剛の帰順

  • 広西で挙兵していた陳金剛が太平天国への帰順を申し出る。楊輔清は陳金剛とその部将江志・侯臣・戴鄭金を重用し、王・侯に封じるよう洪秀全に上奏。広西方面を牽制させ、自らは六万の兵で徽州・淳安・厳州・金華を次々と攻略し、処州へ迫る。

慶瑞との対陣

  • 清朝は慶瑞を閩浙総督に任じて迎撃させる。慶瑞は曾国藩に援軍を求めつつ、処州を先に確保する策を取る。
  • 楊輔清の大軍を前に慶瑞は籠城策を取ろうとするが、楊輔清は攻城の構えを見せず小道を探るふりをして陽動する。慶瑞はこれを見抜いたつもりで出撃を決断する。
  • 楊輔清は偽りの敗走で慶瑞を誘い込み、険しい山道の伏兵地帯へ引き込む。慶瑞は疑いつつも追撃を続けるが、四方から太平軍の伏兵が現れて清軍は総崩れとなり、副都統穆騰阿が命がけで慶瑞を護って逃走する場面で次回に続く。