- 要旨: 南方の水田地帯は車が使えず、不意の遭遇戦で頼るべき陣がなければ敵に隙を見透かされ全軍崩れかねないとし、疑似の城壁(布城)や各種防具・火器を用いて、緊急時にも頼りとなり敵の目を欺く備えを説く篇。
布城(布製の擬似城壁)
- 拒馬・蒺藜の外側にさらに布製の擬似壁を張り、遠目には本物の城壁と見紛わせて敵の接近をためらわせる工夫を説く。
- 内側から外を見て銃・槍・弩を放てる一方、敵からは内部が見えないという非対称の利点を挙げ、銃撃を受けた場合は綿布団を重ねて防弾に用いるとする。
- 具体的な寸法(鴛鴦陣の隊間隔一丈五尺に合わせ、高さ四尺・長さ一丈五尺の布を五幅、磚石を描いて本物らしく見せる)を示す。
拒馬・蒺藜
- 拒馬は三本一束の木材(長さ五尺)に鉄の穂先と石突を付けた組立式の柵として、隊ごとに複数架を連結し重石で固定する。
- 蒺藜は紐に連ねて牌に掛けて携行し、使用時に地面へ広げる方式とし、素早い展開・撤収を可能にする。
剛柔牌・軟壁(防弾用の盾)
- 円形の藤牌は刀槍は防げても銃弾を防げない限界を指摘し、代替として木枠に古綿布団を掛けた「軟壁」を紹介するが、簡便な代用に過ぎないとする。
- より確実な防弾具として、牛皮・綿・薄綿紙の球・布袋を幾重にも重ねた「剛柔牌」の製法を詳述する。重さ十五斤、費用五両以上とやや高価だが、四、五十歩先からの銃弾を防いだ実績があり、他のあらゆる代替案(鉄・鵞毛・人毛・紙・皮漆など)を試した中で最も優れていたと述べる。
銜枚・鬼箭・撒毒蒺藜筒・飄石
- 静粛を保つための木札状の銜枚(口に含む札)、毒を仕込んだ鉄蒺藜「鬼箭」(敵の足を刺す)、竹筒に入れて腰から手早く撒く蒺藜携行具、投石用の縄付き竹の「飄石」(守城に有効)を紹介する。
夜間の弩機罠(夜伏耕戈)
- 毒矢を仕込んだ弩を糸で連結し、要路をまたいで伏せておき、触れると自動的に発射される罠を説く。誤って味方を傷つけぬよう通行路には設置しないよう注意する。
- 敵が長竹で先に探りながら進む対策として、罠を複数段に分けて仕掛け、最初の一つを作動させても後続の罠が残っているようにする工夫を提案する。
木城
- 大小の木材で組んだ持ち運び可能な城壁を紹介する。二人で担げる重さに調整し、城壁の狭間としても、野営時に即席の防塁としても使えるとする。
鳥銃(火縄銃)の扱いと火薬
- 火薬・弾丸の装填手順、狙いの付け方(前後の照星を合わせる)を詳述し、火縄銃は狙いが直進的で扱いやすく、木馬式の神機銃や辺銃より優れているとする。
- 火薬の調合比率(硝・硫黄・柳炭の分量)と、水を加えながら杵で徹底的に搗き込む製法、完成度を確かめる方法(紙の上で燃やして紙が傷まないか、手のひらで燃やして熱くならないかを確認する)を示す。
- 銃身の手入れ(湿気対策のための定期的な清掃、後部のねじを外しての修理)についても触れる。
賽貢銃(新考案の火器)
- 鳥銃は速く正確だが威力が小さく大軍に対応できず、仏郎機は重くて機動性に劣るという両者の弱点を補うため、著者が考案したという「賽貢銃」を紹介する。木馬を使わず弾丸の装填が速く、貢(大砲)並みの威力を鳥銃並みの速さで発揮できるとし、五百人につき五、六門を要路の守備に配すべきとする。
連子銃・子母炮
- 連続して弾丸を発射できる連子銃(誤射が多く安定しないため参考として記載)と、夜間や奇襲に用いる子母炮(敵陣近くに撃ち込み、しばらくして爆発することで混乱を誘う)を紹介する。
- 子母炮の装填手順(螺旋状の火薬導線を仕込んだ瓶を伏せて装填し、瓶の導線と親砲の導線の点火タイミングを慎重に合わせる必要がある)を詳述する。
仏郎機
- 天下に広く使われる利器だが旧来の製法は精度に欠けるとし、改良点(母銃を長くして直進性を高める、子銃と母銃の口径を寸分違わず一致させる、木馬を使わず弾丸を直接押し込む方式にする、前後の照星を追加する)を提案する。子銃と母銃の口径の精密な一致こそ性能の要であると強調する。
火箭
- 火箭も鳥銃に劣らぬ威力を持つが、製法・発射法を知らぬ者が多いと指摘する。導線の穴は打ち抜き加工の方が精度が高く、深さ・位置の誤りが軌道の乱れにつながるとし、羽根・矢柄・矾紙加工など保存性を高める工夫(二年程度の保存が可能)も併せて示す。
- 炮の運用法についても『武経』に載る単架式の砲の要点をあらためて説き、火薬の節約と継戦能力の点で守城の第一の武器であるとする。