- 要旨: 号令と賞罰の原則が定まった上は、坐作進退の型と実戦の攻殺撃刺を同時に教えるべきだが、審査の作法を知らずに比較(技量審査)を行えば見栄えだけの花法が入り込み実戦本位の型が損なわれるとして、この篇を第六に置くとする。
比較の基本方針
- 実戦さながらの型のみを学ばせ、見た目重視の花槍などの型を用いさせない。各級の責任者(伍長・教師隊長・哨官・把総)は、部下の未熟の程度に応じて段階的に責任を負うと定める。
各武器の規格
- 長槍は穂先を軽く鋭く(重さ二両以内)、柄は先端を軽く腰を硬く根元を太くする。
- 狼筅は先端に刃を一尺つけ、四方の竹枝は太く堅いものを用いる。
- 扖杈棍は一丈二尺とし、短兵も長く使うことで長槍の間合いに入れるようにし、各自解首用の一振りを備えさせる。
- 弓箭手は弓の強さを個々に合わせ、鉄鏃の矢三十本、大ぶりの腰刀と解首刀を各一振り持たせる。
- 弩弓は威力の強い新品堅牢なものとし、毒薬一瓶・鉄箭百本、腰刀・解首刀各一振りを備える。
- 立牌は後方の槍兵を隠せる高さと幅を持たせ、腰刀一振りを添える。
- 藤牌は堅く大きく軽いもので全身を覆えるものとし、長刀一振りと投げ槍三本を添える。投げ槍がなければ牌がないのと同じで、長短の間合いの差を埋めるために敵の気を逸らして藤牌の兵が踏み込む隙を作る役目を果たすとする。
- これらの規格を守らない場合は前条の分数に準じ軍令で連座させる。
火器の管理
- 火薬筒・火縄・薬線・匙・油単・火薬などが不備であったり、乾燥不十分であったりすれば、隊長も併せて処罰し、当人はさらに重く罰する。
- 破損した各種火器は自弁できなければ各総へ申請させ、把総が平時から点検する。
体力の鍛錬論
- 人の血気は用いれば強まり怠れば脆くなるとし、筋骨を働かせ体を鍛えることは君主宰相にも通じる道理であり、まして兵ならなおさらだが、度を過ぎた苦役は避けるべきだと説く(練兵の力)。
- 平時に重い武器で鍛えれば実戦で軽い武器を扱うとき自然に手が速くなる(練手の力)。
- 一里を息切れせず走れるよう鍛え、古人が足に砂袋をつけて徐々に重くし、実戦で外すことで身軽になった故事を引く(練足の力)。
- 平時に重い甲冑・荷物を背負って鍛えれば実戦で身が軽くなり進退が速くなる(練身の力)。
喊声と装備管理
- 喊声が揃わない者は巡視旗が捕らえ軍法に問う。
- 什物・武器には隊の名を刻み油を塗って管理し、点検・紛失確認に備える。
各武器の試験方法
- 弩は六十歩で的(高さ五尺・幅一尺五寸)を狙い、三本中二本命中を及第とする。
- 槍は単独での手法・歩法・身法・進退を見た後、実際に二人で対戟させ、さらに二十歩先の的(目・喉・心・腰・足の五点に木球を仕込んだ的)を突いて木球を槍先に留められるかで判定する。
- 弓は八十歩で的(高さ六尺・幅二尺)を狙い、三本中二本命中を熟練とする。
- 狼筅は単独の身のこなしを見た後、槍との対戟で相手の誘いに動じず防げるかを見る。
- 叉鈀は単独の動きを見た後、槍・刀との対戟で長槍・棍を受け止め、狼筅と連携して敵を討てるかを見る。
- 刀は叉鈀・狼筅の防御を突破できるかを基準とするが、真に優れた刀法の伝承者は稀であるとし、後世の傑物による発展を期待すると述べる。
- 挨牌(牌隊の連携)の試験では、牌・狼筅・槍・短兵が模擬の敵槍に対し、上段・下段・左右いずれから突かれても定められた連携(狼筅が受け止め槍が討ち、突き崩されそうな時は短兵が救援する等)で対応できるか、複数の敵に対しても隊形を崩さず対応できるかを見る。
- 藤牌は単独で身を隠しつつ敵を見失わない動きができるかを見た後、投げ槍で敵の気を逸らしてから斬り込む機敏さを試す。
- 標槍は三十歩先の銭貨的に命中させられるかを試す。
- 火器は八十歩の的に対し三発一中、あるいは十発七中を精良の基準とする。
- 火箭も同様に八十歩で的に当てられるかを見るが、器具の不良による失敗は兵の責を問わず、器具が精良なのに撃ち損じた場合のみ兵を追及する。
- 千里雷などの特殊火器は緊急時に誤りなく点火できるかを基準とし、平時の点数には数えないが、付属品の紛失・破損は重く罰する。
- 旗の扱いは太鼓の速さに合わせて振り、身をかがめ腰を回し頭上を一周させてから旗を立てる型を、太鼓の打ち方は両手で高く槌を掲げ素早く打ち下ろす型を基準とする。
場内での比較審査の手順
- 操練後の休憩を挟み、中軍官が藍旗を掲げて狼筅手を集め、点呼と審査を行う(狼筅は竹=木の属性に応じ藍旗を用いる)。
- 続いて黄色い円旗で牌手を(牌は防御の属性に応じ黄)、白旗で長槍手を(槍刃は金の属性に応じ白)、黒旗で叉鈀・短兵を(短兵の鋭さは水の勢いに応じ黒)、紅旗で鳥銃・火箭・弩手を(火器は火の属性に応じ紅)、それぞれ順に集めて同様に審査するという、五行の色分けに基づく段取りを示す。
賞罰の等級
- 武芸の審査は上・中・下それぞれ三段階に分け、再審査で元の等級のままなら無賞、一段階昇進で銀一分、二段階昇進で二分、一等級丸ごと昇進すれば五分の賞を与える。
- 昇進なしが続いた場合は回数に応じて棍打ちを重くし(一回目は免除、二回目五棍、三回目十棍、五回目以上は四十棍で除隊)、罰を望まない者には代わりに銀を徴収し、上達した者への賞に充てるとする。
- 火器の命中率にも同様の賞罰基準(三発中一中で平常、二中で銀一分、三中で五分の賞、不命中が続けば棍打ちを重ね五回目で除隊)を定め、弓弩にも同様の基準を適用するとする。