紀效新書長兵短用說篇

  • 要旨: 兵器を実戦に耐えるよう鍛え、号令で心を一つにした上でなお武芸そのものを精練すべきであり、武芸と法令は並行して初めて意味を持つとして、この篇を第十に置く。長い武器も間合いが詰まれば短く使うべきだという「長兵短用」の要諦を説く。

長兵短用の原理

  • 長槍は構えが崩れやすく、突きが外れたり急所を外れたりして間合いを詰められると、短兵に踏み込まれても引く間がなく素手同然になる弱点があると指摘する。
  • 対策として手法と歩法を一致させ、外れれば緩やかなら足で退き、急なら手だけで槍を引き縮めて相手の武器を自分の槍身に絡ませないようにする。こうすれば一尺ほど引いた槍先でもなお敵を突けるとし、これが「長を短く用いる」秘訣であるとする。
  • 弓箭・火器も長兵の一種であり、百歩届く力があっても五十歩まで引きつけてから放ち、五十歩の力なら二十五歩まで引きつけて放つべきだとし、これも同じ「長を短く用いる」原理であると説く。長い武器の勢いの鋭さと、間合いを短く保つ節度は根本において同じ理であるとまとめる。

長槍総説

  • 長槍の法は楊家に始まり「梨花槍」と呼ばれ天下に広まったが、その妙は熟達にあり、熟達すれば心が手を忘れ、手が槍を忘れるほど滑らかに動けるとする。
  • 静を貴ぶこと、心が乱れず余裕をもって変幻自在に応じられることを説き、「二十年梨花槍を修めれば天下に敵手なし」という評を引く。
  • 後世に沙家の竿子、馬家の長槍などの流派が伝わるが、楊家の法にあるような虚実・奇正を兼ね備えた深奥は失われがちであるとする。
  • 実戦の陣立てで用いる場合は、型は簡潔に、隊列は疎らにすべきとし、簡潔でなければ乱れを解けず、疎らでなければ進退の自在さを欠くとする。左右は必ず短兵で補い、長短が互いに支え合うことで気勢を保ち、崩れを防げると説く。「気が満ちれば戦い、気が奪われれば避ける」という兵法の言葉を引いて締める。
  • 以下、六合の型(八母槍を基本とする組太刀の型)と二十四勢を図とともに記すと述べる。

八母槍と六合の型

  • 起手(構え)から「拿槍」「攔槍」「顛槍」「捉槍」「櫓槍」など八つの基本の受け・返し技(八母槍)を組み合わせ、突き・受け・纏め・救護の連係を身につける基本型を示す。
  • 第一合: 圏槍を基本に、封じ・閉じ・拿る動きと梨花擺頭(頭を振るような槍さばき)、内外の守りと目くらまし(閃賺)を組み合わせた型で、「秦王磨旗」と名づける。
  • 第二合: 纏槍と攔槍を基本に、黄龍占杵・黒龍入洞と呼ばれる突きの型と、拿って救護し目くらましを加える型で、「鳳點頭」と名づける。
  • 第三合: 穿指・穿袖という細かい槍さばきに、鷂子撲鵪鶉(鷹が鶉を捕らえるような動き)と四方への槍法を組み合わせた型で、「白蛇弄風」と名づける。
  • 第四合: 白拿槍で防いで退き救護する動きと、白攔で進んで猫が鼠を捕らえるように仕掛ける動きを組み合わせた型で、「鐵掃帚」と名づける。
  • 第五合: 四方の封閉から、死中に活を求め無から有を生ずるような迎え受けと目くらましを組み合わせた型で、「撥草尋蛇」と名づける。
  • 第六合: 截・進・攔・纏・拿・直の六つの要素を目くらましと組み合わせ、下段の遊場では撥草尋蛇、上段の遊場では秦王磨旗の型に通じるとする。
  • さらに接・進・拿・纏・攔・直の順で、大きな遊場では秦王磨旗、鐵掃子には対応する型がなく、裙攔槍・伏虎槍・地蛇槍やその破り方(盡頭槍、中平槍とその破り方)などを列挙し、「高低遠近を問わず、高ければ攔じず低ければ拿らず、ただ中心を一点突く」という要訣を示す。
  • 以下、習得のための図(甲〜癸に相当する二十数葉の型図)を付すとする。