- 要旨: 兵は号令を煩雑にしすぎるとかえって士気を損なうため、まず官(将校)を教える法を明確にすべきとして第五篇に置くとする。将校の連帯責任・軍紀・名分の秩序を定める。
将校間の和と軍令の徹底
- 将領・哨官・隊長らが互いに反目し、妬みや妖言で軍令を偽り伝え事を誤らせた場合は斬に処す。
- 各営の編成が定まれば腰牌の記載を基に名簿二部を作り、印を押した上で一部を把総に、一部を本府に保管する。
欠員・傷病の報告手順
- 逃亡・死亡による欠員が出れば、月半ばに隊長が補充手本を作成し、哨官→総→府の順に報告し、確認の上で名簿を改め腰牌を発行して常時操練に戻す。
- 欠員が生じた際は本人の伍が即日隊長に報告し、隊長→哨長→哨官→把総の順に同日中に手本を提出する。
- 傷病者が出た場合も同じ経路で当日中に報告し、府の判断で医療を手配する。遠征先では本府が自ら見舞うとする。
携行糧食の規定
- 各兵が常時携行すべき乾糧の作り方を定める。米を炒って粉にしたもの、麦粉を油で練ったものや蒸したもの、塩・酢や酒に浸して乾かした粉など、複数の保存食を分けて包ませ、敵に包囲されるなど緊急時以外は使わせない。出兵の際に携行を忘れれば武器の携行漏れと同罪とする。
教練場の規律
- 教練場には静砲の合図後に遅れて到着した者を欠席として処罰し、門を閉ざした後の出入りや無断の営内立入りは巡視旗の責任とする。
- 毎日の点呼では各隊の出欠を確認し、把総が集計して報告する。主将不在の日も同様に当日中に報告する。
責任の所在
- 装備の不備は哨長の責、号令の不徹底は把総の責、武芸の未熟は哨官の責、逃亡・窃盗などを告発しない場合は隊長と同隊の甲兵の責とする。
- 平時・臨陣を問わず、違反・遅延・怠慢・器具不良などが一定人数を超えれば、甲長・隊長・哨長・領兵官(哨官)まで段階的に連座させる基準を定める(甲三人以上で甲長連座、隊一甲以上で隊長連座、哨一隊以上で哨長連座、五割以上で領兵官連座)。
伝令の徹底
- 号令は巡視旗から領兵官へ、領兵官から哨長へ、哨長から隊長へ、隊長から甲長へ、甲長から各兵へと段階的に伝えるものとし、伝達を怠った場合は平時で棍打ち四十、出征中は軍法とする。
- 主将自らが数千人に一言ずつ伝えることはできないため、伝達経路を厳格に守らせ、途中で不明な点があれば必ず聞き返させる。伝わっているか抜き打ちで確認し、不徹底が判明すれば隊長→哨長→把総の順に遡って追及し、軍法で重く処すとする。
平時の礼儀と身分秩序
- 警戒のない平時、駐留地では哨官以上は冠帯を、哨長・義士は青衣を、隊長は青い布衫と帯を着用してよいとする。
- 上下の応対では、把総と哨官、哨官と哨隊長、哨隊長と兵の間で郷里の情に応じた接し方を認めつつも、座る際は側に控えるべきで、肩を並べて座ることは隊長と兵の間でも許さない。
- 教練・出征・号令発布の際は、把総は錦繍の戎装、哨隊長は方角の色に応じた小袖の戎衣と旗を用い、軍容を整えて号令を受ける。哨官は把総に、哨長は哨官に、隊長は哨長に、兵は隊長に、それぞれ跪いて命令を受けるものとし、哨長以下は把総の前で、隊長以下は哨官の前で伏して敬意を示す。
公の場での礼と軍紀の重み
- 公の場での礼式を細かく定める(哨官は把総に跪拝と一揖、哨長は把総に二跪一揖だが揖は不要、隊長は哨長に揖のみ立礼、というように身分に応じた作法)。
- 「軍中では草を立てても標となる」という俗諺を引き、朝廷の名分はなおさら厳格であるべきだと説く。
- 部下の反抗を許さない以上、自分自身も上司への反抗は許されないとし、郷里の旧知の間柄を理由に軍紀を曲げることは決して許されないと戒める。私情で違反を見逃した者・違反した者双方を軍法で重く処すと結ぶ。