特の死後の継承
- 李流、字は玄通、特の第四弟。若くして学を好み弓馬に親しんだ。東羌校尉何攀はこれを見て非凡と評し、賁育(孟賁・夏育、古の勇士)の勇があると称え、東羌督護に挙げた。益州へ避難した際、益州刺史趙廞は流を高く評価し、兄の庠に部衆を集めさせ、流も郷里の子弟を招き数千人を得た。庠が廞に殺されると、流は特に従い流民を安んじ、常俊を綿竹で破り趙廞を成都で平定した。朝廷はその功を論じ奮威将軍・武陽郷侯に任じた。特は初め承制して流を鎮東将軍とし東営に居らせ東督護と号し、精鋭を率いて益州刺史羅尚と対峙、尚はこれを破ることができなかった。
- 特が殺されると蜀人の多くが叛き、流は特の子の蕩・雄と共に残兵を集め赤祖へ還った。流は自ら大都督大将軍益州牧を称し東営を守り、蕩・雄は北営を守った。時に荊州刺史宋岱が水軍三万を率い尚を助け墊江に進駐、前鋒の建平太守孫阜は徳陽を攻め破り、特が任じた太守任臧・守将騫碩らを捕らえ、涪陵県に退いて屯した。
- 三月、尚は督護常深を毗橋に進軍させ、また牙門左汜・黄誾・何沖に三方から攻めさせ繁城に進駐、綿竹の守将は降伏した。涪陵の民、薬紳・杜阿らも兵を挙げ尚に呼応した。流は弟の驤と共に深を防ぎ、蕩・雄に紳を防がせた。何沖は虚を突いて北営を攻め、氐族の符成・隗伯・石定は営中で叛き呼応し蕩・雄を攻めた。蕩の母・羅氏は甲を着て応戦、伯は手ずから羅氏を斬りつけ顔を傷つけた(『晋書』には目を傷つけたとある)が、羅氏の気概はますます激しくなった。この時、成・伯は内で戦い、沖らは外を攻め、朝から日中に至るまで営はまさに破られようとしたが、折しも驤が深の柵を破り、深の兵は散り散りとなった。蕩・雄もまた紳を撃破し、それぞれ兵を引き沖らと戦い大破した。成・伯はその党を率い突囲し尚のもとへ帰した。流らは勝ちに乗じて成都に迫ったが、尚は再び城を閉ざして守った。蕩は馬を馳せ敗兵を追撃した際、叟族の長い矛に突かれて死んだ。
- 朝廷は再び侍中で燕国の劉沈を仮節・益州刺史とし、羅尚・梁州刺史許雄らの軍を統率して流を討たせようとしたが、進軍して長安に至った際、河間王司馬顒は沈を軍師として留め、代わりに席薳を遣わした。流は特・蕩が相次いで死に、さらに宋岱・孫阜の軍が迫るのを大いに恐れた。太守李含もまた流に降伏を勧め、流はこれに従おうとしたが、驤と雄が代わる代わる諫めて聞き入れなかった。
- 夏五月、流は子の世および含の子・胡を人質として孫阜のもとへ送ろうとしたが、阜はこれを拒んだ。胡の兄・離は梓潼太守であったが、父と舅が降伏を望んでいると聞き、梓潼から馳せ戻り諫めようとしたが間に合わず、退いて雄と共に阜の軍を襲う謀を語り「もし事が成れば、人主の座は三年ごとに交代することにしよう(一に「あなたと三年ごとに交代して主となる約束をする」とも)」と述べた。雄は「あなたとの約束は決まったが、老いた父は従わないだろう(一に「今すぐ計を定めることはできるが、二人の父は従わないだろう」とも)、どうすればよいか」と応じた。離は「いまはまず父たちを抑え、それができなければ大事を決行するのみ、たとえあなたの叔父であっても、勢いのやむを得ぬところ、老いた父といえどもどうして反対できましょうか」と述べ、雄は大いに喜んだ。
- そこで二人は共に六郡の流民を誘い「我らは以前すでに蜀の民に暴虐を働いた、いまいたずらに手をこまねけば魚肉となるだけだ、ただ心を一つにして阜を襲い富貴を得るのみだ」と説くと、衆はこれに従った。雄はついに離と共に阜の軍を襲い破り、多くの死者を出させた。折しも宋岱が墊江で卒し、荊州軍は退いて尚を転じて攻めた。流は自らの器量の乏しさを恥じ雄の才を大いに評価し、軍事をことごとく雄に委ねた。雄は尚の軍を攻め、尚は太城に籠って守った。六月、雄は帛羊頹から江を渡り汶山太守陳図を攻め殺し、郫城を取った。秋七月一日、雄は郫城に入り拠り、流は全軍をここへ移した。三蜀の百姓はいずれも険阻に頼り砦を結び、あるいは南の寧州へ、あるいは東の荊州へ逃れ、城邑は空になり人けが絶えた。流の軍は掠奪しても得るものがなく、士卒は飢えに苦しんだ。ただ涪陵の民千余家だけが江西にあり、青城山の隠士范長生を頼っていた。
- 平西参軍の涪陵徐輿は尚に汶山太守を求め、長生らと結び流を挟撃しようとしたが、尚は許さなかった。輿はこれを怨み江西へ使者となることを求め流に叛き降った。流は輿を安西将軍とし、輿は長生を説き流の軍に糧を供給させると、長生はこれに従い、流の軍は再び勢いを取り戻した。九月、流は病が篤くなり諸将に「驍騎(驤)は聡明で仁愛に富み識量も優れている、それだけで大事を成すに十分だが、前軍(雄)は英武、まさに天の助けというべきだ、共に前軍に事を託し成都王とするがよい」と述べ、そのまま没した。享年五十六。諸将は共に雄を主に立てた。雄は帝号を僭称するに及び、流を秦文王と追諡し、その子の龍に跡を継がせた。