封神演義羑里城に西伯侯を囚える(第十一回 羑里城囚西伯侯)

三重臣、姜桓楚の惨殺に抗議す

紂王が姜桓楚を裁きもせず殺し、その屍を刻ませたことに、姫昌・鄂崇禹・崇侯虎の三人は驚き、紂王の無道を悟る。三人は臣下として君主を諫める道理を説き、比干が三人連名の上奏文を紂王に披露させる。上奏文は、堯舜の善政に比べ紂王が政を怠り讒言を信じ酒色に溺れていること、賢后姜后を惨刑に処す一方で妲己を寵愛していること、太史を無実の罪で斬り大臣を醢刑に処し、炮烙の刑で忠言を封じていることなどを列挙し、費仲・尤渾を退け妲己を除いて宮中を粛正するよう求める内容であった。

紂王激怒、四臣を処刑せんとす

上奏文を読んだ紂王は激怒して表章を破り捨て、四人を梟首にせよと命じる。中諫大夫の費仲・尤渾が進み出て、崇侯虎だけは日頃忠実に働いてきたことを理由に赦免を願い出る。紂王はこれを容れて崇侯虎のみを特赦する。

これに怒った武成王黄飛虎が、亜相比干・微子・箕子ら七名とともに進み出て、姜桓楚・鄂崇禹・姫昌の功績と人徳を並べ立て赦免を懇願する。紂王は姫昌についてのみ赦免を許すが、姜桓楚と鄂崇禹は謀反の罪ありとして処刑を命じる。さらに上大夫膠鬲・楊任らも二人の赦免を求めるが、紂王は激怒し「これ以上諫める者は同罪とする」と一喝する。結局、鄂崇禹は梟首、姜桓楚は醢刑に処された。姫昌は七人の殿下に礼を述べ、二侯の非業の死を嘆いた。人々は密かに二人の遺体を埋葬し、事の落ち着くのを待つことにした。

姫昌の帰国と餞別の宴での失言

翌日、比干の奏上により姫昌の帰国が許される。費仲は姫昌の忠誠を疑い、餞別の席で本心を探るよう紂王に進言し、許可を得る。比干は姫昌に、事変を恐れ早く帰国するよう助言する。姫昌は十里長亭で百官の見送りを受け、和やかに酒を酌み交わすが、そこへ費仲・尤渾も加わる。酒が進むうち、費仲が姫昌に易占の的中率を尋ね、紂王の行く末を問う。姫昌は酔いに任せ、商の国運があと数十年で尽きること、紂王が善終を全うできないことを口にしてしまう。さらに費・尤の二人に運勢を占うよう求められると、二人が将来「雪解け水に浸かり氷に凍えて死ぬ」と告げる(後に姜子牙が岐山でこの二人を凍死させ封神台に供える伏線)。自分自身については「善終正寝」と答えた姫昌の言葉に、二人は表向き喜ぶふりをしつつ、内心では侮辱されたと激怒する。

費・尤の讒言と紂王の再拿捕命令

二人は朝廷に戻り、姫昌が国運の衰亡と紂王の非業の死を予言し暴言を吐いたと訴える。紂王は激怒し、晁田に姫昌を追跡・連行させ梟首にせよと命じる。

太廟火災の予言的中と羑里幽閉

晁田に呼び止められた姫昌は、災いが避けられぬことを悟り、家臣たちに西岐へ帰るよう命じ、自らは朝歌へ引き返す。紂王の面前で再び弁明するが許されず、紂王は自らの死生を予言したことを侮辱と断じ処刑を命じる。黄飛虎ら七人の重臣が再び諫め、「姫昌の占いが伏羲の八卦に基づくものであり、的中するか否かで真偽を確かめればよい」と進言する。紂王はこれを容れ、姫昌に目下の吉凶を占わせると、姫昌は「明日午の刻に太廟が火災に見舞われる」と告げる。

翌日、費仲・尤渾は密かに太廟の防火を強化させるが、果たして午の刻に雷鳴とともに太廟は炎上する。(詩:この火の由来と激しさを描写する一編)紂王は予言の的中に恐れをなし、費・尤は「一度の的中で軽々に帰国を許すべきではない」と進言する。比干らの取りなしにより、紂王は姫昌の死罪は赦すが帰国は許さず、羑里に幽閉することとした。姫昌は羑里で七年の間、教化に努め民は安んじて暮らし、閑居の間に伏羲の八卦を六十四卦・三百八十四爻に推し広めた。(詩:羑里幽閉の七年と易学の功績を称える一編)

天下の反乱、太乙真人の霊珠子下山を告げる

紂王が大臣を理由なく幽閉したことに、東伯侯姜文煥が四十万の兵で游魂関を、南伯侯鄂順が二十万の兵で三山関を攻め、天下すでに四百鎮の諸侯が反旗を翻していた。黄飛虎は憂慮し、諸関の守りを固めるよう命じる。

一方、乾元山金光洞の太乙真人のもとに崑崙山玉虚宮の白鶴童子が玉札を届け、「姜子牙がまもなく下山するので、霊珠子(哪吒)を人間界へ送るように」と伝える。太乙真人はこれを了承する。