封神演義陳塘関に哪吒、世に出る(第十二回 陳塘關哪吒出世)
哪吒の誕生
陳塘関の総兵官李靖は、かつて西崑崙の度厄真人に師事し五行遁術を学んだが、仙道成らずして下山し紂王に仕えていた。妻の殷夫人には既に長男金吒・次男木吒がいたが、三度目の懐妊は三年半を経ても生まれず、李靖夫妻は妖異を疑い憂えていた。ある夜、夫人は道服の道人が「麟児をお受け取りを」と告げて何かを懐に投げ入れる夢を見、目覚めると同時に産気づく。李靖が駆けつけると、産室には紅い霊気が満ち、肉の球が転がっていた。李靖が剣で切り開くと、中から満身に紅光を放つ男児が飛び出す。右手に金の腕輪、腹には紅い綾を纏っていた(金の腕輪は「乾坤圏」、紅い綾は「混天綾」で、いずれも金光洞の至宝。この子は霊珠子の化身であり、後の姜子牙の先鋒官となる)。李靖は驚きつつも我が子として夫人に手渡した。
翌日、乾元山金光洞の太乙真人と名乗る道人が祝いに訪れ、赤子を一目見て「丑の刻生まれで殺戒に触れている」と告げ、名を「哪吒」と授け、自らの弟子とすることを望む。李靖は快く承諾し、道人は齋の饗応を辞して山へ帰った。
哪吒、九湾河で洗浴し夜叉・三太子を討つ
七年が過ぎ、哪吒は七歳、身の丈六尺に育っていた。李靖は東伯侯姜文煥の反乱に対応し日々軍を訓練していた。ある暑い日、哪吒は母の許しを得て家将を連れ関外へ遊びに出る。(詩:炎暑の景色を詠う一編)柳陰で涼みながら、哪吒は九湾河(実は東海に通じる川)で混天綾を水に浸して体を洗う。すると綾の霊力で水が紅く染まり、東海の水晶宮まで激しく揺れ動いた。
龍王敖光は異変を怪しみ巡海夜叉李艮を遣わすが、李艮は哪吒を罵り斧で斬りかかったため、哪吒は乾坤圏を投げて一撃で撲殺してしまう。報せを受けた敖光は三男の三太子敖丙を派遣する。敖丙は哪吒を打ち据えようとするが、哪吒は混天綾で敖丙を絡め取り、乾坤圏で打って本来の龍の姿に戻し、絶命させたうえで龍の筋を抜き取り、父の甲冑の紐にしようと持ち帰った。
敖光の抗議と哪吒の弁明
敖光は激怒し、変装して陳塘関の李靖を訪ね、我が子が夜叉と三太子を殺し筋まで抜いたことを詰る。李靖は信じられず、哪吒を呼び出して問い質す。哪吒は事の次第を包み隠さず語り、龍の筋を父の甲冑の紐にしようとしたことまで打ち明ける。李靖は仰天し、哪吒を敖光の前に出して謝罪させる。哪吒は非を認め、龍の筋を返そうとするが、敖光は「明日玉帝に奏上し、その師を通じて汝を捕らえさせる」と言い残して立ち去る。李靖夫妻は一族が滅ぼされることを恐れて嘆き悲しみ、夫人は哪吒を「滅門絶戸の禍の種」と責める。哪吒は自らが太乙真人の弟子であり凡人ではないことを明かし、「一人の行いは一人が引き受ける」と言って土遁の術で乾元山へ向かった。
太乙真人の指図で敖光を懲らしめる
哪吒は師の太乙真人に事の次第を訴え、赦しと救いを乞う。真人は、龍王が興雲布雨を掌る正神とはいえ小事を天庭に訴えるのは道理に外れると考え、哪吒の胸に隠身符を書き記し、「寶徳門でこうせよ」と指図して天界へ送り出す。
(天門の壮麗な様子を描く一編)哪吒が寶徳門に着くと、まだ天門は開いておらず、朝服姿の敖光が黄巾力士を待って佇んでいた。隠身符により哪吒の姿は敖光から見えないが、哪吒には敖光が見える。哪吒は乾坤圏で敖光の背後から不意打ちし、敖光は地面に打ち倒される。哪吒はその背に足を踏みかけ、続きは次回に語られる。