- 要旨: 呉起は魏の武侯に対し、周辺六国それぞれの気風と弱点を分析し、それに応じた攻略法を説く。また戦うべき時と避けるべき時の判断基準、敵情視察の要点を論じる。
六国包囲への対処
- 武侯が秦・楚・趙・斉・燕・韓の六国に囲まれた不利な情勢を憂えると、呉起はまず戒めを怠らないことこそ肝要であり、既に武侯が戒めているのであれば禍は遠いと答える。
六国の気風とそれぞれの攻略法
- 斉:陣は重厚だが堅固でない。国は富み君臣が驕奢で民政が緩く、俸禄が不均衡なため一枚岩でない。三分して左右を揺さぶり脅せば陣は崩せる。
- 秦:陣は散開して各自が奮戦する。地形険しく政治厳格、賞罰が信頼され民に譲る心がなく闘志が強い。利で誘って引き離し、隙を見て伏兵で将を狙う。
- 楚:陣は整っているが持久力がない。国土広く政治が騒がしく民が疲弊している。屯営を乱し士気を奪い、速やかに攻めて退き、正面から戦わず疲弊を待てば破れる。
- 燕:守りを固め逃げない。民は謹直で勇義を好み謀計に乏しい。触れて迫り、遠回りに揺さぶり、車騎の退路を塞げば将を虜にできる。
- 三晋(韓・魏・趙):気風は穏やかで政治は公平だが、民は戦に疲れ兵に慣れて将を軽んじ俸禄も薄く死を賭す志がない。陣を張って圧迫し、来れば拒み、去れば追って疲れさせる。
- あわせて、いずれの軍にも力量抜群の勇士がいるはずであり、旗を奪い将を討つほどの者を選び優遇すべきで、これを「軍命」と呼ぶ。五兵に巧みで体力があり敵を呑む志を持つ者には爵位を加え、その父母妻子を厚遇して賞罰を明らかにすれば、堅陣の士として持久戦に堪えられるとする。
占わずして戦うべき八つの場合
- 厳寒に苦労して行軍する敵、猛暑に強行軍する敵、長期出兵で兵糧が尽き民が怨む敵、軍需が尽き天候も悪く略奪もできない敵、兵員が少なく地の利もなく疫病もあり援軍もない敵、日暮れて疲れ甲を解いて休む敵、将吏が頼りなく軍が動揺している敵、陣も宿営も定まっていない敵——これら八つは占わずとも迷わず撃つべきとする。
占わずして避けるべき六つの場合
- 国土が広く民が富む場合、君主が下を愛し恩恵が行き渡る場合、賞罰が信頼され時宜を得ている場合、功に応じて任用し賢能を用いる場合、軍が精強な場合、大国の援助がある場合——これら六つが敵に劣るときは迷わず避けるべきとし、「勝てると見れば進み、難しいと知れば退く」原則を説く。
敵情の観察による勝敗判断
- 敵が浩々として無警戒に来て旌旗が乱れ人馬が落ち着かなければ、少数でも多数を撃てるとする。
- 諸侯の連合がまとまらず君臣が不和で、陣地の準備も禁令も整わず軍中が騒然として進退に迷う状態であれば、半数で二倍の敵を撃っても百戦して危うくないとする。
撃つべき敵の十三の兆候
- 遠来して隊列が定まらない、食事の後で備えがない、逃走中、疲労している、地の利を得ていない、時機を逸している、長道の後半で休んでいない、渡河の最中、険路にいる、旌旗が乱れている、陣が頻繁に移動している、将が兵から離れている、心に恐怖がある——これらいずれの場合も精鋭で衝き、後続を分けて急襲すべきだとする。