五代史演義第十六回 梁朝を滅ぼすも驕り逸楽を思い、劉后を冊立し妾を妻とす (滅梁朝因驕思逸 冊劉後以妾為妻)
大梁入城と梁臣の処遇
- 李嗣源に続き唐主が大梁に入城。梁臣は跪いて許しを乞い、唐主は寛大に旧職を認める。李振は恥じることなく出仕しようとするが、敬翔は「君が昏愚でも諫められず、国が滅んでも救えなかった」と憤り、自ら首を吊って死ぬ。
- 梁主友貞の遺骸は丁重に葬り首級は太廟に納めるよう命じる。段凝は五万の兵を率いて降伏。唐主は段凝を厚遇するが、段凝は讒言を弄し梁の旧臣多数を左遷・処刑に追い込む。敬翔・李振・朱珪・張氏一族らが処刑され、趙巖も逃亡先で討たれる。段凝には李紹欽、杜晏球には李紹虔の姓名が下賜される。
- 朱温・朱友貞は庶人に落とされ宗廟は毀される。張全義の諫めで朱温の墓を暴くことは中止となる。郭崇韜は中書事を代行し太原郡侯に封じられ、唐主の信頼厚い腹心となる。
梁の後宮と唐主の淫楽
- 唐主は梁の後宮を接収。賀王妃石氏は屈服を拒み斬られるが、梁末帝妃郭氏は唐主に侍らされたのち、劉夫人の嫉妬により尼にされ洛陽に送られる。
劉皇后の出自と寵愛
- 唐主の第三夫人劉氏は成安の劉山人の娘で、幼くして唐軍に掠われ晋陽で曹太夫人に養われ、歌舞音曲に長じて唐主の寵を得た。実父が訪ねてきた際には自分の父と認めず、百叩きの刑を科す非情さを見せる。
- 唐主は劉氏に溺れ、梁妃郭氏を巡って劉氏と諍いになり、郭氏を尼として遠ざける。
内政の乱れと諸将の恩賜
- 袁象先・霍彥威・戴思遠・段凝・朱友謙・康延孝・温韜ら諸将は、こぞって劉夫人や宦官・伶人に賄賂を贈って唐主の恩寵と改姓名を得る。郭崇韜が温韜の罪状を弾劾しても唐主は取り合わない。
- 唐主は伶人と共に戯れ「李天下」を自称するなど遊興にふけり、伶官敬新磨の機知でかろうじて中牟令の処刑を免れさせる場面もある。伶官景進は民間の噂を集め讒言を弄し将相からも恐れられる存在となる。
- 宰相の顔ぶれも凡庸で、朝政は乱れがちになる。
荊南・高季興の動向
- 荊南節度使高季興は梁滅亡を恐れ入朝するが、唐主に酒席で「呉か蜀、どちらを先に取るべきか」と問われ、蜀の富を強調し呉より先に蜀を攻めるよう誘導する。伶官・宦官の賄賂要求に不満を抱いた季興は帰路夜逃げ同然に荊南へ戻り、防備を固めて唐に備える。
洛陽遷都と劉后の冊立
- 河南尹張全義の働きかけで唐主は洛陽への郊祀・遷都を決め、梁代に改名された官庁・軍号を旧に復す。
- 安義軍李継韜は梁への降伏歴があったが、生母楊氏の賄賂工作により赦免される。のち謀反未遂で誅殺され、遺領を巡り兄弟間で凄惨な争いが起こる。
- 劉夫人は皇后の座を熱望し、郊祀を口実に立后を先延ばしさせるなど画策。郭崇韜は当初嫌悪していたが、故人の子弟の説得で立后を上奏してしまう。
- 郊祀の後、劉氏は正式に皇后に冊立され、皇子継岌は魏王に封じられる。先妻の韓・伊両夫人は淑妃・徳妃に留め置かれ、朝賀を拒むほど不満を抱く。
- (詩:妾を皇后に立てたことが後宮の禍の始まりになると嘆く趣旨)
- 劉后の立后を機に伶官・宦官が跋扈し、宮廷はさらに乱れていく。
評語
本回は後唐の興亡の転機であるとし、英武で知られた唐主が一婦人に翻弄された点を指摘する。出自卑しい劉氏が寵愛を頼みに専横し、滅梁後は唐主自身が伶人と戯れるまでに驕り緩んだことが、宦官・伶人の跳梁と嫡庶の秩序破壊を招いたと評す。郭崇韜ほどの智士が引退の時機を誤り、劉氏の陰謀に加担してしまったことも痛惜すべき点として挙げる。