魏鄭公諫錄高昌に臣礼を失わせぬよう諫める(諫髙昌不失臣禮)

  • 太宗は侍臣に、高昌が臣礼を失わなければ滅亡には至らなかったはずで、この一国を平らげて自らかえって内心恐れを抱いていると述べ、永く功業を隆んにするには、上下ともに驕らず忠諫の士を進用して自らを匡し、貪残を退けて忠良を用い、小人の言によって君子を議さない、この三道を守って帝位を保ちたいと語った。
  • 魏徴は、古の帝王は乱を治め業を創める際は必ず戒め懼れ、民間の言を採り忠言の策に従うが、天下が安定すると欲に任せて諂諛を喜び正諫を厭うようになると述べ、漢の張良が高祖の廃嫡立庶の企てに対し「今日のことは口舌で争えるものではない」として以後二度と諫めなかった故事を引いた。
  • 魏徴はさらに、陛下の功業の盛んなことは漢高祖など比べるに足りず、即位十五年で聖徳が広く行き渡り、今また高昌を平定した上でなお安危を意に懸け忠良を納れ正言の路を開こうとされるのは天下の幸いであると述べ、斉の桓公が管仲・鮑叔牙・寗戚と酒を飲んだ折、鮑叔牙が「公は莒に出奔した苦難を、管仲は魯で縛られた恥を、寗戚は車の下で牛を飼った貧しさを忘れないように」と杯を挙げて戒め、桓公が席を避けて再拝し「私と二大夫がこの言葉を忘れなければ社稷は危うくならない」と答えた故事を引いて諫めた。
  • 太宗は笑って、「私は布衣の時のことを忘れない、公も鮑叔牙の人となりを忘れてはならない」と述べた。