元史演義汪罕を責め密かに砦を襲い、脱里を殺し力を恃み兵を興す(第 九 回 責汪罕潛師劫寨 殺脫里恃力興兵)
巴勒渚納の誓い
- 敗残の帖木真は巴勒渚納まで退き、川の水を汲み交わして将士と生死を共にする誓いを立てる。将士は歓呼して応じ、数日のうちに四千六百人ほどの部衆が集まる。傷の癒えぬまま出猟を続けた畏答兒は傷が悪化して命を落とし、帖木真は手厚く葬る。その後、姻戚である弘吉剌部と誼を通じ、東方の憂いを除く。
汪罕への詰問状
- 帖木真は使者を送り、汪罕へ過去の恩義(父也速該の助力、輜重の供与、四傑による救援など)を五か条にわたって数え上げ、なぜ自分を疑い離れたのかを厳しく問う。あわせて離反した阿勒壇・火察兒らへは背信を、鮮昆へは父を思う孝を説いて翻意を促す。
開戦への傾き
- 汪罕は曖昧な態度に終始する一方、鮮昆は帖木真の詰問に激しく反発し、決戦の準備を命じる。
木華黎の計略
- 木華黎の献策により、答力台が離反者側から帖木真へ帰順する。さらに合撒兒が偽装投降を装って汪罕を欺き、送られてきた使者をその場で斬り捨てて陽動に成功する。
温都兒山の奇襲と汪罕部の壊滅
- 汪罕が酒宴で油断している隙を突いて奇襲を仕掛け、三日間の激戦の末に汪罕軍を包囲・壊滅させる。帖木真は最後まで主君を守り抜こうとした捕虜合答黑吉の忠義に感じ入りこれを許す。汪罕の姪二人、亦巴合・莎兒合をそれぞれ側室・子婦として迎える。
汪罕・鮮昆の末路
- 脱里(汪罕)と鮮昆は落ち延びるが、道中で仲違いして袂を分かつ。脱里は乃蠻部の国境で間諜と誤られて斬られ、鮮昆も逃亡先の回疆で捕らえられ処刑される。克烈部はここに滅亡する。
乃蠻部の不穏な兆し
- 乃蠻の太陽汗は献上された汪罕の首級を弔おうとするが、不吉な兆候に驚き動揺する。妻古兒八速に一喝され奮起した太陽汗は帖木真討伐を決意し、汪古部へ加勢を求める使者を送るところで本回は終わる。
評語
著者は、汪罕の滅亡が息子鮮昆の妄動に乗じられ、乃蠻の危機が妻古兒八速の言葉に煽られたことを指摘しつつ、「婦子の言は尽くは信ずべからず」と戒める一方、根本の原因は脱里自身の負恩と太陽汗自身の好戦の性向にあると総括し、禍福は自ら招くものであると結んでいる。