元史演義失馬を追い幸いに良友に遇い、竜に乗り佳耦を送り帰す(第 四 回 追失馬幸遇良朋 喜乘龍送歸佳耦)
羊毛車での危機と鎖児罕失剌の助け
- 泰赤烏部の捜索隊が鎖児罕失剌の家まで来て羊毛車を調べようとするが、鎖児罕失剌が「この暑さで羊毛の中に人が隠れられるはずがない」ととぼけて危機を切り抜ける。捜索隊が去った後、帖木真は車から出る。
- 鎖児罕失剌は帖木真の身の危険を案じ、騾馬・弓矢・食糧を持たせて母兄弟のもとへ帰るよう促す。帖木真は深く感謝し、娘の合答安への未練を残しつつ出立する。
母兄弟との再会と八頭の馬の盗難
- 帖木真は道中で母兄弟と再会し、不兒罕山付近の桑沽児河のほとりに移住する。ある日、也速該の遺した八頭の良馬が盗まれ、帖木真は自ら追跡に出る。
- 途上で出会った青年博爾朮(孛端察兒の後裔で、四傑の一人)が同行を申し出て共に馬を追い、盗人の集落から馬を取り戻す。帰路、追っ手を撃退し、無事帰還する。博爾朮は謝礼の馬を固辞し、義俠心から助けたのだと告げて別れる。
孛兒帖との婚礼
- 母訶額侖の勧めで、帖木真は別勒古台を伴い、かねて許婚だった徳薛禅の娘孛兒帖のもとへ赴く。徳薛禅夫妻は歓待し、その夜のうちに婚礼を行う。
- 数日後、帖木真は母のもとへ帰るが、徳薛禅の妻搠壇も同行して訶額侖に挨拶する。孛兒帖は蒙古の風習にのっとり灶に礼を捧げ、訶額侖に拝礼した。
汪罕との同盟
- 孛兒帖が持参した黒貂の外套について、帖木真は父也速該がかつて克烈部の汪罕(脱里)と盟友であったことを思い出し、これを汪罕への贈り物にしようと母に相談し、賛同を得る。
- 帖木真は別勒古台とともに汪罕のもとへ赴き、外套を献上して礼を尽くす。汪罕は喜び、離散した部民の回復を助けると約束する。帖木真は帰宅後、何やら外で騒がしい声を聞き、再び泰赤烏部の襲来かと身構えるところで本回は終わる。
評語
著者は、覇業を成す者には必ず良き輔弼が伴うとし、微賤の頃からの友こそ頼りになると評する。博爾朮が帖木真の窮状を見て即座に助力を申し出たことを俠義の証とし、また徳薛禅が貧富の変化にかかわらず約束を違えず娘を嫁がせたことを信義の厚さとして称え、「胡人に信義なし」とは言えないと結んでいる。