元史卷七十三 祭祀志第二十四 祭祀二 郊祀下

親祀の儀(その目は10項目)

  1. 斎戒:祀の前7日、皇帝は別殿で4日間散斎(有司は奏刑罰の文字を停める)、大明殿で2日・大次で1日の計3日間致斎する。致斎の前日、尚舎監が大明殿西序に東向きの御幄を設ける。致斎の日、質明(夜明け前)に諸衛が部を率いて屯門・列仗し、通事舎人が侍享執事の文武四品以上の官を別殿に奉迎する。侍中が「中厳」「外辦」を版奏し、皇帝は通天冠・絳紗袍を服して大明殿の御幄に東向きに坐す。侍中の奏に応じ皇帝は座を降りて室に入り解厳、侍享執事官は各々本司に還る。侍祠官は中書省で誓戒を受け、散斎4日致斎3日とする。壝門を守る兵衛と大楽工人は共に一夜清斎し、光禄卿は陽燧で明火を取り爨に供し、方諸で明水を取り尊に実れる。
  2. 告配:祀の前2日、摂太尉と太常礼儀院官が太廟に赴き一献礼で太祖法天啓運聖武皇帝の室に奏告する。寅刻、太尉以下が公服で南神門東偏門より入り、盥手・滌爵・酌酒・上香・奠幣・祭酒・読祝などの一連の作法を経て再拝し、太祝が祝幣を捧げて望瘞位に至り、太尉以下は坎位に赴いて焚瘞する。
  3. 車駕出宮:祀の前1日、所司が内外仗を備え、侍祠官が崇天門外に序立、太僕卿が大明門外に御馬を控える。侍中の「中厳」「外辦」奏を経て皇帝は通天冠・絳紗袍で出御、輿に乗り大明門外で馬に乗り換え、崇天門外で百官が乗馬し、郊壇南の櫺星門外で下馬、皇帝は歩いて櫺星門より入り輿に乗って大次に至り入次する。祝冊は禮儀使が奏請し皇帝が署した後、郊祀令が受け取り各壇に奠じる。
  4. 陳設:祀の前3日、尚舎監が大次を外壝西門の道北に南向き、小次を内壝西門の外道南に東向きに設ける。兵衛が壝門を守り、外垣東西南の櫺星門外に蹕街清路の諸軍を配し(旗服は各方色に依る)、壇から200歩は行人を禁ずる。祀の前1日、郊祀令が壇の上下を掃除し、太楽令が登歌楽・宮県楽を壇上及び壇南内壝南門外に設ける。奉禮郎が御版位・御飲福位・亜終献飲福位・亜終献助奠門下侍郎以下の版位・司徒太常卿以下の位・糺儀御史位・御盥洗爵洗位・御終献盥洗爵洗位・省牲饌等の位を設ける。未後2刻、郊祀令が太史令と共に昊天上帝・配位の神位を壇上に設け、玉璧・幣を篚に納める。
  5. 省牲器:祀の前1日未後2刻、郊祀令が壇の上下を掃除し、司尊罍・奉禮郎が祭器を位に設け、郊祀令が礼神の玉を神位前に置く。未後3刻、廩犠令・太祝・祝史が牲を位に就ける。太常卿・光禄卿丞・監祭監礼官・太官令丞らが省牲位に赴き、視滌濯・省牲(充・腯の唱和)・省饌・視滌溉などの手順を経る。晡後1刻、太官令が宰人を率い鸞刀で牲を割き、祝史が血と左耳の毛を取って豆に実れ、牲首を盤に貯める(馬首を用いる)。刑部尚書がこれに莅み、水を実れ烹る事を監視する。
  6. 習儀:祀の前1日未後3刻、献官・諸執事が各々その服を服して外壝西南の隙地で習儀する。陳設・楽架・礼器等の物はいずれも行事の儀と同じくする。
  7. 奠玉幣:祀の日丑前5刻、太常卿が神座に燭を設け、太史令・郊祀令が昊天上帝及び配位の神座を設ける。執事者が玉幣を篚に陳べ、禮部尚書が祝冊を案に設け、光禄卿が籩豆簠簋尊罍を式の如く実れる。大楽令が工人・二舞を率いて位に就く。監祭礼官が壇の上下を点検し、太尉が盥洗・搢笏・登壇・奠玉幣(正位・皇地祗・配位の順)などの作法を経て、拝礼の後、祝史が毛血豆を奉じて壇に登り太祝が神座前に奠じる。
  8. 付記:至大3年(1310年)の大祀の奠玉幣の儀は、これと少し異なる(正配三位のみでなく壇上第一等神位にも玉幣・明燭・籩豆尊罍を陳ね、分献官が各陛道から詣でて上香・祭酒を行うなど、より広い範囲の従祀神位に対して分献官が分担して奠献する形式であった)。
  9. 進饌:皇帝が奠玉幣を終え還位した後、祝史が毛血豆を降ろす。司徒・太官令が斎郎を率い饌を奉じて入り、皇帝は盥洗・爵洗の後、正位酒尊所で泛斉を酌み、太祖神座前で三上香・三祭酒・馬湩の祭を行い、読祝、再拝する。次に配位でも同様に行う。飲福位で福酒を受け胙肉を受け、再拝して小次に還る。亜献官・終献官も卯陛から登壇し同様の儀を行うが、読祝はせず、いずれも飲福して胙を受けない。徹籩豆・賜胙の後、送神楽が奏され、皇帝は再拝して大次に還る。
  10. 望燎:皇帝が大次に還った後、摂太尉以下・監祭礼官が望燎位に赴き、太祝が篚を捧げて神位前より燔玉・祝幣・牲俎及び黍稷飯籩爵酒を各々その陛より降ろし燎壇に至り、柴上に置いて焼く。半ば焼けたところで礼が終わる。
  11. 車駕還宮:皇帝が大次に還り解厳、通天冠・絳紗袍に着替え、法駕を整え、来た時と逆の順で百官が上馬・下馬を行い、崇天門・大明門を経て還宮する。

摂祀の儀(その目は9項目)

  1. 斎戒:祀の前5日、質明に奉禮郎が儀鸞局を率い中書省に献官・諸執事の版位を設ける。礼直局管勾が誓文を宣読し、七品以下の官はまず退き、太尉以下は再拝して退く。散斎3日は正寝に宿し、致斎2日は祀所に宿す。散斎日は治事するが弔喪・問疾・作楽・判署刑殺文字・決罰罪人・穢悪事への関与を禁じ、致斎日は祀事のみを行い他は禁ずる。守壝門の兵衛と大楽工人は清斎一宿する。
  2. 告配:祀の前2日、初献官と太常礼儀院官が太廟に赴き太祖皇帝の本室に奏告し還る。
  3. 迎香祝:祀の前2日、翰林学士が礼部で祝文を書写し、太常礼儀院官も会同する。祀の前1日質明、献官以下が公服し、礼部尚書がその属を率いて祝版を捧げ太常礼儀院官と共に闕廷に赴き、太尉が御署を請う。御香・御酒と共に崇天門外に迎え出し、香は輿・祝は香案・御酒は輦楼に置き、いずれも金の複覆いを掛ける。太尉以下が乗馬し、清道官・巡兵・金鼓・京尹儀従等が行列を成し、儀鳳司が奏楽、太常礼儀院官が香輿の前を導き、控鶴が輿案を舁いで祀所に至る。輿案は南櫺星門より入り、諸執事官は左右の偏門より入り、御香・祝版を香殿に安置する。
  4. 陳設:祀の前3日、枢密院が兵衛を設けて壝門を守り、外垣の櫺星門外に蹕街清路を設ける。祀の前1日、郊祀令が壇上下を掃除し、大楽令が登歌楽(琴瑟・籥篪笛簫・巣笙和笙・匏塤等)と圜宮県楽(編磬・編鐘・十二鎛鐘・晋鼓・雷鼓等)を配置する。文舞は八佾64人、武舞も八佾64人でそれぞれ楽器・儀仗と共に配置される。太史令・郊祀令が昊天上帝・皇地祗・配位・五方帝日月天皇大帝北極等9位・内官54位(第二等)・中官159位(第三等)・外官106位(内壝内)・衆星360位(内壝外)の神座を設ける(数値は前篇「祭祀一」の壇壝・神位の記述に同じ)。奉礼郎が儀鸞局を率いて献官以下・諸執事の版位、牲榜、省牲位、省饌位を設け、祠祭局が正配三位の籩豆簠簋登鉶等の祭器、尊罍・幣篚等を配置する。
  5. 省牲器:親祀の儀に同じ。
  6. 習儀:親祀の儀に同じ。
  7. 奠玉幣:祀の日丑前5刻、太常卿が神座に燭を設け、太史令・郊祀令が神座を陞設する。執事者が玉幣を篚に陳ね、禮部尚書が祝版を案に設け、光禄卿が籩豆簠簋を実れる(籩4行・豆4行に各種の実を配し、簠は稲粱・簋は黍稷・登は太羹を実れる)。良醖令が尊罍に泛斉・醴斉・盎斉・醍斉・沈斉及び玄酒を実れ、太官丞が馬湩の革嚢を尊所に設ける。祠祭局が銀盒に香を貯え瓦鼎に設ける。大楽令が工人・二舞を率いて入り、監察御史・監礼博士・郊祀令以下の諸執事が就位する。監祭監礼官が壇の上下・祭器を按視し、太祝が蓋羃を徹する。降神楽(天成之曲、6成)が奏され、文舞(崇徳之舞)が舞われる。太常礼儀院使が牲首を燎壇で燔き、盤血を坎位に瘞める。太尉が盥洗・爵洗・登壇し、正位・皇地祗・配位の順に玉幣を奠じ、読祝、再拝する。降壇後、毛血豆が壇上に奠じられる。
  8. 付記:至大3年(1310年)の大祀では、壇上及び第一等神位にも玉幣・明燭・籩豆尊罍を陳ね、分献官(子丑寅卯辰巳の陛道と午未申酉戌亥の陛道にそれぞれ配される)が第一等から第三等・内壝内外の諸神位に分かれて奠玉幣・上香・祭酒を行う、より大規模な儀式であった。
  9. 進熟:太尉が奠玉幣を終えると、太官令丞が斎郎を率い、厨で牲体を盤(馬牛羊豕鹿各5盤、宰割は国礼に依る)に設け、饌殿に運ぶ。光禄卿が籩豆簠簋を実れ(籩は粉餈、豆は糝食、簠は粱、簋は稷)、司徒・太史令丞が斎郎を率いて饌を正位・配位・第一等の各神座に奉り、太祝が迎えて神座前に奠じる。太尉が盥洗・爵洗の後、登壇し正位酒尊所で泛斉を酌み、太祖神座前で三上香・三祭酒(馬湩を含む)・読祝の後、皇地祗・配位でも同様に行う。次に亜献官・終献官が同様の儀を行う(読祝なし)。第一等から第三等・内壝内外の分献官も各々盥洗・酌奠を行う。徹籩豆・賜胙・送神楽の後、望燎の儀に移る。
  10. 望燎:太尉・司徒以下の献官・執事が望燎位・望瘞位に赴き、玉幣・祝版・饌食・黍稷等を燎壇・瘞坎に納めて焚瘞する。禮直官の「可燎」の合図の後、半ば焼けたところで礼が終わり、次第に退出する。太尉以下は最後に斎班幕前で「礼畢」を唱え退く。太常礼儀院使・監祭監礼官が胙肉・酒醴を検分し闕庭に進呈する。

祭告三献の儀(大徳11年〈1307年〉制定)

  • 告の前3日、三献官・諸執事官が公服で中書省にて誓戒を受ける。前1日未正2刻、牲器を省する。祭告の日質明、三献官以下が法服を服し、監祭礼官以下が就位、太官令が斎郎を率いて出、三献・司徒・太常礼儀院使・光禄卿が就位する。降神楽(6成)の後、太常礼儀院使が牲首を燔き、三献以下が再拝する。初献官が盥洗・登壇し昊天上帝の位前で上香・奠玉幣・再拝、次いで盥洗・爵洗・酌酒の後、昊天上帝・皇地祗の位前でそれぞれ上香・三祭酒・読祝・再拝を行う。亜献・終献も初献の儀に依るが読祝はしない。徹籩豆・賜胙・再拝の後、三献・司徒・太常卿・光禄卿・監祭監礼官が望燎位に赴き、玉幣祝版を燔いて礼を終える。

祭告一献の儀(至元12年〈1275年〉制定)

  • 告の前2日、郊祀令が壇壝の内外を掃除し、翰林国史院学士が祝文を書写する。前1日、告官等が公服で祝版を捧げ御署を請い、御香・上尊酒と共に祀所に迎え斎宿する。告の日質明前3刻、郊祀令が壇に鋪筵陳設し、告官等が紫服で就位。「有司謹具請行事」の後、拝礼、告官が盥洗・爵洗・酌酒の上、昊天上帝・皇地祗の神位前で上香・祭酒・読祝を行い再拝する。降壇後また再拝し、望燎位で祝版を半燎した後、告官以下は退く。瘞坎は祭所の壬地に方形に、物を容れるに足る深さで設ける。