元史卷七十 禮樂志第二十一 禮樂四
以下は各祭祀で用いられた舞(文舞・武舞)の振り付けを記す。原文は一つの成(曲の一区切り)ごとに十五拍の太鼓(鼓)に合わせて、開手・合手・退後・相顧蹲・高呈手・舞蹈・左揖・右揖・交籥(籥と翟を交える)・叩頭拝舞・躬身受(受礼の姿勢)などの型を順に踏む、という同一パターンの詳細な指示が曲ごとに繰り返される。ここでは共通する型の構成を示したうえで、曲名・宮調・成数と、各曲に特有の内容(武舞に込められた征戦の故事など)を保持して記す。
郊祀楽舞
- 降神:文舞「崇徳之舞」、乾寧之曲(六成。圜鐘宮三成・黄鐘角一成・太蔟徴一成・姑洗羽一成)。各成とも三鼓の予備動作の後、十五拍にわたって開手・合手・蹲・高呈手・左右の揖・交籥正蹲などを繰り返し、最後に躬身して受礼し三鼓で止める、という定型の振りである。
- 昊天上帝位酌献:文舞「崇徳之舞」、明成之曲(黄鐘宮一成)。同様の十五拍の型で構成される。
- 皇地祇酌献:大呂宮一成、同様の型。
- 太祖位酌献:黄鐘宮一成、同様の型。
- 亜献酌献:武舞「定功之舞」、黄鐘宮一成。干戚(盾と斧)を左右に揚げ、刺す・突くなどの武の型を十五拍にわたって展開する。
- 終献:武舞、黄鐘宮一成。亜献とほぼ同様の型で、面を西に向ける所作などが加わる。
宗廟楽舞
世祖至元三年 八室時享
- 降神:文舞「武定文綏之舞」、来成之曲(九成。黄鐘宮三成・大呂角二成・太蔟徴二成・応鐘羽二成)。各成とも十五拍の定型の型で構成される。
- 烈祖第一室:開成之曲、太祖第二室:武成之曲、太宗第三室:文成之曲、皇伯考卓沁第四室:弼成之曲、皇伯考察罕台第五室:協成之曲、睿宗第六室:明成之曲、定宗第七室:熙成之曲、憲宗第八室:威成之曲。いずれも無射宮一成で、十五拍の文舞の型を踏む。
- 亜献武舞「内平外成之舞」:順成之曲(無射宮一成)。按腰・左右揚干戚などの型のなかに、次の六つの征戦を象る所作が組み込まれる――第一に「王汗を滅ぼす」、第二に「西夏を破る」、第三に「金国に克つ」、第四に「西域を収め河南を定める」、第五に「西蜀を収め南詔を平らげる」、第六に「高麗を臣とし交趾を服させる」。
- 終献武舞:順成之曲(無射宮一成)。亜献と同様の型に、同じ六つの征戦を象る所作が繰り返される。
泰定十室楽舞
- 迎神:文舞「思成之曲」(黄鐘宮三成・大呂角二成・太蔟徴二成・応鐘羽二成)。定型の十五拍の型。
- 初献酌献:太祖第一室(開成之曲)・睿宗第二室(武成之曲)・世祖第三室(混成之曲)・裕宗第四室(昭成之曲)・顕宗第五室(徳成之曲)・順宗第六室(慶成之曲)・成宗第七室(守成之曲)・武宗第八室(威成之曲)・仁宗第九室(歆成之曲)・英宗第十室(獻成之曲)。いずれも無射宮一成で、十五拍の文舞の型を踏む。
- 亜献武舞:肅成之曲(無射宮一成)。干戚を用いる型。
- 終献武舞:肅成之曲(無射宮一成)。同様の型。
天暦三年 新製楽舞
- 明宗酌献:武舞「永成之曲」(無射宮一成)。十五拍の定型の型で構成される。