繹史列国の遺事(列国遺事)
戦国末期、諸国に伝わる士人・君主にまつわる短い逸話を集めた篇。出典書ごとに小話が並ぶ。
士の得難さを嘆く君主
- (戦国策より)斉の管燕が失脚した際、左右の従者が誰も供をしようとせず、「士は得難く用い難い」と嘆く。田需は「君は禽鳥に余った食を与えながら士には及ばない、士を軽んじているのは君の方だ」と指摘する。
- (韓詩外伝・説苑より)同工異曲の話として、宋(燕)の宰相が家臣に去られ、同様に士への待遇の薄さを指摘される逸話を併載する。
老臣の眼力
- (新序より)18歳の子奇が阿の統治を命じられた際、齊君は後悔して呼び戻そうとするが、同行の白髪の老臣を見て「老人の知恵があれば阿は治まる」と考え直し、そのまま行かせる。
将軍への諫め
- (説苑より)張生が出征する田聵将軍に対し、許由・伯夷叔斉・於陵仲子ら名誉を辞退した先人の例を挙げ、士を驕らぬよう戒める。
些細な功名に殉じた兵
- (呂氏春秋より)斉晋の戦いで矛を失い戟を得た兵が、律義に「不足」を気に病み、進んで戦死する逸話。「小さな功に殉じて大功を知らぬ」ことを評す。
屠夫と美醜の推理
- (韓詩外伝より)斉王が屠牛吐に娘を嫁がせようとするが辞退される。友人に問われ「良い肉ほどよく売れるように、良い縁談ほど断られない」と、暗に王女の醜さを推理する話。
腹擊の大邸宅
- (戦国策より)家臣・腹擊が身分不相応な邸宅を建てた理由を「旅の身で信を得るため」と説明し、主君に納得される。
使者の心得
- (韓詩外伝より)趙王が使者に「琴の弦の調律は柱の位置では測れない」との喩えで、外交における臨機応変の重要性を説く。
賢者の登用に関する説話群
- (説苑より)鄒子が梁王に、伊尹・管仲・百里奚・寧戚・司馬喜・范雎・太公望など、卑賤の身から用いられて功をなした先人の例を列挙し、人材を外見で判断しないよう説く。
- (説苑より)陳子が梁王に、傅説・寧戚・百里奚の故事と孔子の不遇とを対比し、「善は道あれど、遇うも時あり」と説く。
遅参の理由
- (戦国策より)衛の使者が魏王に3年間面会を許されなかったが、梧下先生の助言で説得に成功する逸話。
白雁を助けた家臣
- (新序より)梁君が白雁を驚かせた通行人を殺そうとするのを、家臣・公孫襲が斉の景公の故事を引いて諫め、梁君は「禽獣より善言を得た」と喜ぶ。
隣国への恩返し(瓜を盗む話)
- (新書より)梁の宋就が、瓜畑を荒らされても仕返しせず逆に隣国の瓜を密かに世話したことで、楚との友好が生まれた逸話。
誇大な建言で王を諫止
- (新序より)許綰が魏王に「中天台」築造の非現実性を数字で示し、断念させる。
真の国宝
- (説苑より)経侯が魏の太子に宝物自慢をするが、太子は「良臣こそ国の宝」と答え、経侯は恥じて退く。
龍陽君の涙
- (戦国策より)魏王の寵臣・龍陽君が「より大きな魚を得ればより小さな魚を捨てる」自らの経験に例え、寵愛の移ろいやすさを訴え、魏王は美人を求める者を禁じる令を出す。
越人の歌と鄂君子晳
- (説苑より)襄成君が莊辛の求めを拒むが、莊辛は鄂君子晳が身分の低い越人の歌い手を厚遇した故事(「山有木兮木有枝」の歌)を引いて説得する。
貧しい装いの諫臣
- (呂氏春秋より)粗末な服の田贊が楚王に、鎧も同じ「悪い」ものであり、それは人を傷つける不吉なものだと説く。
占いと逃亡兵の顛末
- (呂氏春秋より)荊の柱国荘伯が占い(日の形、馬の年齢)で軍務を判断する滑稽な逸話。
献魚の教訓
- (新序より)漁師が売れ残りの魚を王に献上した話から、楚王が「余った物資が民の困窮を招く」ことを悟り、恤民の政を行う契機とする。
築城の督励と寛容
- (呂氏春秋より)韓の新城築城で工期に遅れた役人を、封人子高が執り成し、恐れさせて改めさせるが処刑はしない。
志を曲げぬ渡し守
- (説苑より)韓褐子が河神を軽んじる態度を貫き、危険な渡河でも志を変えなかった逸話。
過度の武力誇示への戒め
- (説苑より)宋の成公趙が、恥を知る士として、暗殺という卑劣な手段を取らず正々堂々の手段を貫くことを選び、志半ばで没する。
賞罰の使い方
- (説苑より)衛君が田譲に「賞を与えても士が集まらない理由」を問い、賞罰の道理を得ていないためだと諭される。
天下の英才論
- (呂氏春秋より)白圭と夏后啓(鄒公子)の問答。「なすべきと信じれば断行し、なすべからずと信じれば断念する」という信念の徹底が、利害の威嚇より重いと説く。
知音の故事(伯牙と鍾子期)
- (韓詩外伝より)伯牙が鍾子期の死後、琴を破り絃を絶って二度と弾かなかった「知音」の逸話。
- (琴苑要録より)伯牙が成連に琴を学んだ際、東海の孤絶の中で会得した境地についての異伝を付記する。
隠棲の歌
- (琴清英より)祝牧夫妻が隠棲し、「天下に道あれば佩び、道なければ背負う」と歌った琴歌を紹介する。
貞婦の歌(陶嬰)
- (列女伝より)若くして寡婦となった陶嬰が、求婚を断るため「黄鵠の早寡」の歌を作り、その意志の堅さゆえに求婚が絶えた逸話。
別鶴操
- (琴操より)子のない妻を離縁されようとした商陵牧子が、悲しみのうちに「別鶴操」を作った由来を記す。
越の風俗(挨拶の礼)
- (風土記より)越の風習として、初対面の礼を厚くし、再会を期する朴訥な言葉を交わす習わしを記す。
寓話三則(呂氏春秋より)
- 井戸を掘って「一人を得た」と語った丁氏の話が誤って伝わり「井戸から人が出た」との噂になった寓話(言葉の伝聞の誤り)。
- とんぼ好きの男が、父の助言で捕らえようとした途端にとんぼが寄りつかなくなった寓話(下心の露見)。
- 澄子が誤って人の服を奪おうとした寓話(欲得による理屈のすり替え)。