繹史鶡冠子の言(鶡冠子之言)

  • 履歴: 鶡冠子は楚の隠者と伝えられる思想家(生没年不詳、戦国時代末期)。幽山に隠棲し、鶡(きじ科の鳥)の羽を冠に飾ったことからその名で呼ばれた。道家の書『鶡冠子』を著し、弟子の龐諼(龐煖)はのちに趙で活躍した人物として知られる。

博選篇

  • (鶡冠子より)人材登用の要諦を説く。天・地・人・命の四つの視点から人を見極めるべきとし、師と仰ぐべき人物を得れば覇者となり、単なる使役相手しか持たない者は国を滅ぼすとする。徳の大小によって人を「儁・豪・英」と分けて論じる。

著希篇

  • (鶡冠子より)道と徳は人主が体得すべきものであり、位にあるだけでは定まらないとする。乱世においては賢者も本心を隠して時流に逆らわずに生きるほかないとし、その処世の難しさを説く。

環流篇

  • (鶡冠子より)気・意・図・名・形・事・約・時が連鎖的に生じ、万物の吉凶・成敗はすべて「道」から派生するとする宇宙生成論を説く。北斗七星の運行が四季の推移を定めるように、聖人は道の運行に従って政を行うべきとする。

近迭篇

  • (鶡冠子より)弟子龐子との問答形式で、聖人の道は「人」を先んじ、人道は「兵」を先んじるとする。兵とは礼義忠信であるとし、無道な国が滅びるのは天の理ではなく人の過ちによるとする。強国が戦に敗れる要因を、驕り・不賢・無術による誤断に帰し、名君の条件を論じる。

王鈇篇

  • (鶡冠子より)伝説的な理想国家「成鳩氏」の統治術を説く。天の徳(日月星辰の運行の如き誠実・恒常性)に則った政治体系として、五家を伍、十伍を里、四里を扁、十扁を郷、五郷を県、十県を郡とする詳細な行政・連座・報告制度を描き、これによって上下の情が滞りなく通じ、天下四海が一つの家のように治まるとする理想的統治制度論。

天権篇

  • (鶡冠子より)道・時・宇宙の本質を論じる。「知宇故無不容、知宙故無不足」など、認識の広がりが徳の大小を決めるとする。兵法にも触れ、天の時・地の利・人の和の三要素を活かした用兵、五行・五音になぞらえた陣立てを説く。

能天篇

  • (鶡冠子より)聖人の境地を「道」と「聖」の関係から論じる。道は万物を貫通するものであり、聖人は天地に先立って生まれることも後れて生まれることもなく、その徳・功・智において万物・鬼神・金石にも勝るとする。言葉の性質(詖辞・淫辞・詐辞・遁辞・正辞)を分析し、聖人はそれぞれの本質を見抜くとする。

学問篇

  • (鶡冠子より)弟子龐子との問答形式で、学問には終わりがあるかを論じ、「道徳・陰陽・法令・天官・神徴・伎芸・人情・械器・処兵」の九道を学ぶべきとする。礼・楽・仁・義・忠・信の六徳を「不犯・無菑・同好・同悪・久愈親・無二響」と定義し、これらを備えずして天下の道は得られないと結ぶ。