繹史教えを垂れる(垂訓)

諸侯の朝聘・祭祀の礼

  • (禮記より)諸侯が天子や隣国に赴く際は必ず祖廟・禰廟に告げ、朝服で出向き、祝史に社稷・宗廟・山川への奉告を命じてから出発すること、五日を超えて告げないのは非礼であることなど、朝聘の礼が細かく説かれる。斎戒の日数(三日斉・一日用)、繹祭・祊祭・朝市の位置が当時誤って行われていたことへの批判、臧文仲の非礼な祭祀(逆祀を止めなかったこと・燔柴の誤り)への評なども述べられる。

郷飲酒・射・婚姻の礼

  • (禮記より)郷飲酒の礼を観察して「王道の易々たること」を悟ったとする有名な言葉が引かれ、賓主の礼譲・長幼の序・和楽して流れざる作法が王道の縮図として説かれる。射礼では的を射て失わぬのは賢者のみであるとし、婚礼では嫁ぐ家・娶る家それぞれの三日間の慎みや、三月後に廟見して「来婦」と称する儀礼が説かれる。

喪祭の礼

  • (禮記より)宗子の喪主の資格、賢大夫でも礼を過ぎたり不足させたりする例(管仲は器が過ぎ、晏嬰は倹に過ぎるとする)、朝服の使用基準、凶年の質素な祭祀、東夷の孝子少連・大連が模範的に喪に服した話、病による身の毀損を避けるべきこと、喪服の踊(哭泣の動作)の等差、稽顙と拝の順序に見る哀の至情、明器(副葬品)をあえて実用に堪えぬ形に作る理由、魯と衛での祔祭のやり方の違いなど、喪祭の細目にわたる教えが多数記される。

礼の効用

  • (大戴礼記より)礼は乱れの萌す前に防ぐ堤防のようなものであり、婚姻・郷飲酒・聘射・喪祭の礼が廃れれば、それぞれ夫婦・長幼・諸侯・臣子の秩序が乱れると説く。法は既遂の後にしか働かないが、礼は未然に禁じる点で優れるとする。

民を防ぐ礼(坊記)

  • (禮記・坊記より)礼は民の情に応じて過不足を防ぐ堤防であるとの比喩のもと、貧富・貴賤・親疎・男女・君臣・生死などあらゆる人間関係において礼がどのように逸脱を防ぐかを、詩書の引用を交えながら極めて多岐にわたり説く長大な問答が展開される。婚姻における媒酌の必要、同姓不婚の原則、男女の別、寡婦への配慮、君臣の分などが特に詳しく論じられる。

仁と義(表記)

  • (禮記・表記より)君子の隠れて顕れ驕らずして荘重なあり方、仁と義の関係(仁を右、義を左に喩える)、恩讐への報い方(徳を以て徳に報い、怨を以て怨に報いる)、夏殷周三代それぞれの政治風土の特色(夏は命を尊び、殷は神を尊び、周は礼を尊ぶ)、事君の道(諫言のあり方・進退の作法)、卜筮に頼る際の慎み、言葉と行いの一致の重要性など、仁義忠信にわたる長大な教えが記される。

言行の慎み(緇衣)

  • (禮記・緇衣より)上に立つ者の好悪が民の風俗を左右すること、王の言葉は糸から綸へと影響が拡大するように広まること、大臣・邇臣それぞれへの信頼のあり方、君主と民は心と体の関係にあり互いに存亡を共にすることなど、為政者の言動の重みを説く教えが多数記される。

音楽と誠

  • (説苑・楽動声儀より)形のない礼・喪・楽・信・威・仁があるとし、誠実な志は鐘鼓の音の変化にも自ずと表れると説く。舜の遺した簫韶の音楽は温潤で南風のように万物を動かすとし、雷が禽獣を、風雨が魚龍を動かすように、仁義は君子を、財色は小人を動かすとする。

明君の三つの懼れ

  • (韓詩外伝より)明王には三つの懼れ(尊位にあって過ちを聞けぬこと、志を得て驕ること、至道を聞いて行えぬこと)があるとし、越王勾践・晋文公・斉桓公の故事を引いてこれを例証する。また御者顔無父・顔淪・顔夷それぞれの御術の変化を通じ、法にかなった政治と民の和・不和の関係を説く。

存亡禍福は己にあり

  • (説苑より)文王・武王・周公の徳の由来を述べ、存亡禍福はすべて自らにあり天災地妖もこれを動かせないとする。殷の帝辛と武丁がそれぞれ瑞祥・怪異にどう向き合ったか(武丁は桑穀の怪異を恐れて善政に努め諸国の朝貢を得たが、帝辛は瑞祥に驕り滅んだ)の対比を通じて教訓とする。

賞罰・治国の要

  • (荀子・慎子・潜夫論・韓非子・孔叢子・塩鉄論より)大節・小節を分けて人物を評する基準、有虞・夏・殷それぞれの賞罰観の違い、湯武の興り・桀紂の滅びが一善一悪によるものではないこと、君主は器、民は水に喩える話、教化を先にせず刑罰のみ用いる政治への批判など、治国・人物評価に関する短い教えが多数まとめられる。

諫言のあり方

  • (家語・説苑より)忠臣の諫めには譎諫・戅諫・降諫・直諫・風諫の五種があり、孔子は風諫(遠まわしな諫め)を最善とした。良薬は口に苦く病に利あり、忠言は耳に逆らい行いに利あるとし、諤諤(率直な諫め)の臣・子・弟・婦・友を持つことの重要性を説く。

修身・向学の教え

  • (荀子・家語・韓詩外伝・尸子・申子・中論より)恥じるべきこと・思うべきこと(三恥・三思・三患・三恕)、行いの六つの根本(孝・哀・勇・農・嗣・力)、務本(本を務めれば道が生ず)、士の五つの資質が悪用される危険、学問と思索の均衡、賢友を得る幸い、言葉より行いを重んじる誠実さなど、修身に関わる短い箴言が数多く連ねられる。

処世の知恵

  • (説苑・淮南子・韓詩外伝・史記・荘子・呂氏春秋より)富貴を人に譲ることの効用、談説の術(誠実・堅強・比喩・分析を尽くして人を説得する)、人心は山川より険しく天より知り難いとして人物を見極める九つの徴(遠使して忠を観る等)、燕雀が禍の迫るのを知らぬ譬え、高塀・浅根の草木が崩れやすい譬えなど、慎重な処世の教訓が多数示される。

士としての道

  • (家語より)周の賎吏伯常騫や斉の高庭が孔子に処世の道を問い、正道を行っても世に容れられず、さりとて隠遁も忍びない場合の生き方を尋ねた。孔子は、聴く者・語る者双方の心構えや、剛折・軽率・倨傲・利に趨る者それぞれの弊害を説き、貞(正しさ)と敬をもって君に仕える道を示した。

編者按

  • (編者按)「坊記」「表記」「緇衣」の三篇について、沈約はいずれも子思の作とし、劉瓛は「緇衣」を公孫尼子の作とする説を伝える。
  • (編者按)『漢書』芸文志の記述により、『論語』は孔子が弟子・時人と応答した語を弟子たちが編纂したものであり、魯論語・古論語・斉論語(それぞれ二十一篇・二十二篇等)の異同、『孔子家語』二十七巻の書誌が付記されるが、顔師古はこれが現存の家語とは別物であると注す。