繹史諡と諱(付載)(謚諱(附))
『周書』諡法解、および『禮記』諱に関する諸篇を引く。死後に贈られる諡(おくりな)の定め方と、死者・尊者の実名を避ける「諱」の作法を記す。
諡法の由来
- (周書「諡法」より)周公旦と太公望が、武王が牧野の戦いに勝利して天下を平定したのち、諡の制度を定めたとする。「大行受大名、細行受小名(大きな行いには大きな名を、小さな行いには小さな名を受ける)」を基本理念とし、行いに応じて漢字一字(または数字)の諡号を贈るとする。
諡号一覧(褒め言葉系)
- (周書「諡法」より)徳や功績を称える諡が多数列挙される。例えば、天地の徳を象る者は「帝」、民を法で治める者は「皇」、仁義を行う者は「王」、経緯天地(世を治める道筋を立てる)は「文」、剛強で理を貫くのは「武」、恭敬・謙譲を尽くすのは「恭」、聡明叡智なのは「獻」、温柔で人望篤いのは「懿」、民を安んじたのは「孝」「康」「成」など、徳目ごとに一字が定められる。
- (周書「諡法」より)そのほか、義を貫いた「元」、剛毅果断な「剛」「威」、遠国を服させた「桓」、節を守った「貞」、法典に従った「敬」、功があった「烈」、正しく処断した「肅」なども挙げられ、同じ徳目でも複数の諡が対応することがある。
諡号一覧(中間・特殊な事情の諡)
- (周書「諡法」より)若くして亡くなった者には「殤」(未婚で早世は「殤」、成人前は「悼」)、憂いの中で世を去った者には「愍」「哀」、地位を失った君には「幽」「隠」など、境遇に応じた諡も定められる。
諡号一覧(悪諡系)
- (周書「諡法」より)行いを戒める諡もある。楽を好み政を怠った者は「荒」、道理なく愛憎に走った者は「刺」、天に逆らい民を虐げた者は「抗」、名と実が乖離した者は「繆」など、否定的な評価を示す諡が列挙される。
諡字の語義解説
- (周書「諡法」より)末尾に、諡に用いる個々の文字の語義(「和」は調和、「勤」は労苦、「秉」は従順、「考」は成就、など)がまとめて解説される。
『禮記』にみる諡・銘の作法
- (禮記「曲禮」より)君子は父の生前に既に貴い地位を得ていても、父のために諡を作ることはできないとする。
- (禮記「曾子問」「祭統」より)身分の低い者は貴い者に誄(哀悼の言葉)を贈らず、幼い者は年長者に誄を贈らないのが礼であり、天子だけが天に代わって誄を行えるとする。鼎の銘は先祖の徳を称えて後世に示すためのものであり、悪を記さず美点のみを称えるのが孝子の心であると説く。
諱(避け名)の作法
- (禮記「檀弓」より)卒哭の祭りが終わると、それまでの生時の呼び名を避け、新たに死者の実名を諱として避けるようになる(「舍故而諱新」)。
- (禮記「曲禮」「雑記」より)諱は嫌名(音の似た字)までは及ばず、二字の名は一字ずつなら避けなくてよい。父母に仕えた経験があれば祖父母の名も諱むが、経験がなければ諱まない。詩書を読む際や公文書を作成する際、廟中での言葉には諱を適用しない定めなど、諱の適用範囲に関する細かな例外規定が列挙される。