- 履歴: 人物伝ではなく、周代の成人式である冠礼の儀式次第を『儀礼』士冠礼を主軸に、関連する『礼記』諸篇・『大戴礼記』の条文を付して記した篇。
儀式の準備(儀礼・士冠礼より)
- 廟門で亀卜により吉日(冠礼を行う日)を占う。占いが不吉なら日を改めて占い直す。
- 主人(父)が賓(加冠の儀式を執り行う客)を招請する。使者を立てて礼を尽くして依頼し、賓は一旦辞退した上で承諾する作法を踏む。
- 儀式の三日前に賓を占って確定し、前日に改めて出向いて招請(宿賓)する。賛冠者(補助役)にも同様に依頼する。
- 前日の夕方、廟門外で当日の日程を確認し合う(為期)。
加冠の儀式本体(儀礼・士冠礼より)
- 当日早朝、洗(手洗いの器)と冠服一式(爵弁服・皮弁服・玄端など)を所定の位置に並べる。
- 主人・賓・将冠者(冠を受ける本人)がそれぞれ定められた位置につき、賓が三度にわたって冠を加える(三加)。
- 一加:緇布冠を加え「幼志を棄て成徳に従え」と祝う。
- 再加:皮弁を加え「威儀を慎み長寿を得よ」と祝う。
- 三加:爵弁を加え「兄弟がここに揃って汝の徳を成した、天の慶びを受けよ」と祝う。
- 冠を加えるごとに服も改め、最後は醴(甘酒)または酒で本人を労う儀礼(醴冠者・醮)を行う。
命名と挨拶(儀礼・士冠礼より)
- 冠礼を終えた者は母に脯(干し肉)を捧げて見え、賓から字(あざな)を授かる(字之)。
- 賓を醴でもてなし(醴賔)、束帛儷皮(絹布と毛皮)を贈って謝意を示す。
- 新たに成人した者は兄弟・姑姉に挨拶し、君主・郷大夫・郷先生にも挚(贈り物)を持って謁見する。
- 孤子(父を亡くした者)や庶子の場合は、儀礼の細部(主人の役割や場所)が一部異なる。
附録・関連条文(礼記より)
- 冠義:太古は緇布の冠を用いた。適子(嫡男)は阼階(東側の階段、主人の位置)で冠を受け跡継ぎであることを示す。三度冠を加えるごとに格式を高め、字を授けて成人として遇する。冠礼は「礼の始まり」であり、容体を正し顔色を整え言葉遣いを慎むことが礼義の根本であるとする。
- 曲禮・檀弓・玉藻・雑記:男女の名・字の使い分け、天子・諸侯・士でそれぞれ異なる冠の形式(緇布冠・玄冠等)、喪中の冠礼の可否などの細則を記す。
附録・公族の冠礼(大戴礼記・公符より)
- 諸侯の子(公符)が自ら主人となって冠礼を行う場合の作法。太子・庶子ともに士の礼に準じるが、饗礼は三献の礼を用い、より豊かな儀礼となる。